拠点へ突撃ぃぃぃぃ!!!!!
昼食も食べ終わり、いよいよ国際犯罪組織【黄金の共鳴】そのカローラ支部の拠点へ殴り込みです。
作戦は極めてシンプル。まず門番をエリシアさんとハズウェルさんで対処し、私とフーリエちゃんは箒に乗って一気に突入。後から入ってくる2人を護衛とし、盗難品を奪還します。
拠点まで数メートルの場所まで来ました。先にあるカーブを曲がれば拠点は目の前です。するとハズウェルさんは懐から小さい何かを取り出しました。
「これは何ですか」
「こういった見えない先を見るための探知装置です。魔力の変化を検知して人間がいるか判別してくれるのです」
装置はスマホくらいのサイズで車輪がついていて、そこからコードが伸びて平たい板に繋がっています。指で板をなぞるとその軌跡に沿って装置が動き、人間を検知すると光って知らせる仕組みになっています。
スパイの道具なだけあって非常に現代的。フーリエちゃんもエリシアさんも興味津々です。
「でも大丈夫なんですか? いくら協力関係だとしても、関係者でもない私達にそんな極秘の物を見せて」
「今更ですね。問題ないからお見せしているのです。事が終わったら…………おっと、こっちに来ます」
ハズウェルさんの一声で全員が戦闘態勢に入りました。
「ここはお任せを」
するとハズウェルさんは内側の壁に体を寄せ、死角から腕が現れたのと同時にその腕を引っ張り、勢いを利用して素早く首を絞めて気絶させました。
その瞬速ぶりで、相手はハズウェルさんの姿を覚えることなく倒れたことでしょう。意識が戻っても逃げられないように魔法でしっかり縛り上げておきました。
「これで誰にも邪魔されず入口まで行けます」
「んじゃ作戦通りに」
「了解です」
「突撃ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
軍人のような中腰姿勢で銃を構え、先陣をきっていきます。
それに続いてフーリエちゃんがパチンと指を鳴らし、箒を呼び出しました。初めて会ったあの時のように手を繋いで……くれませんでしたが軽くジャンプして箒に乗りました。
…………って予想以上に早い!?!?
「こんなに速度出せるんですか!?!? めっちゃ前髪がオールバックしてるんですが!?」
「ちゃんと捕まってないと死ぬよ」
「マジで死にます!」
強烈な加速度で胸が圧迫され、箒の柄を持つ腕が今にも引き離されそうです。潰れる胸も無いだろって言うな!!
周りの景色は残像となって流れて、エリシアさんの白い髪が一瞬見えたと思えばもう拠点の中。トロッコ1台ちょっと程度の幅しかないのに、ほとんど速度を緩めないフーリエちゃん凄いけど、ちょっと怖い。
「リラ! 攻撃お願い! 気絶する程度に留めてよ!」
「りょ、了解ですぅ!」
フーリエちゃんが小さいので箒に後ろに乗っていても前が把握しやすいです。視点はさながら一人称シューティングゲーム。
次々と出てくる敵をバンバン魔力弾で狙い撃ちです。幅が狭いゆえに多くても2人しか前に出られないのが災いして、こちらとしては大変狙いやすいです。
しかし快進撃は道の分岐点で止まってしまいました。魔力弾を肉体で受け止めた筋肉モリモリマッチョマンの男が行く手を阻んだからです。少年漫画でよくいる、これでもかと誇張された筋肉と巨体が現実として目の前にいます。
「とんでもねぇ速さで突撃してくる奴がいると聞いたが、まさかこんな女だとはな」
「意外でしょ? さっさとどいて」
「言われて従う奴がいるかよ。退くのはオマエらのほうだ。元軍人の俺に勝てるもんか」
「試してみる? 私だって国立魔法学校出身だよ、一応」
「わ、私も! 私は……何も……ない…………っ!」
いつになくフーリエちゃんが闘志剥き出しですが、私は予想外のところで変なダメージを喰らって半ば意気消沈です。
「覚悟しろこのクソガキがあ!」
「Rnuja!」
「ほい」
「ぐあっ!?」
フーリエちゃんが杖を横に一振りすると、敷かれたトロッコのレールが捻じれるほどの強風を発生させ、その風圧で男は壁に頭を強く打ち付けて気絶しました。
煙幕張る必要なかったじゃん……
「Zemc!」
すかさず落ちていたロープで縛り、右の通路へ進みます。次の分岐を左に進んだら4つに別れた分岐を右から2番目の通路へ。
かなり飛ばして魔力消費が激しいのか、フーリエちゃんの息が少し荒いです。髪の毛も、先端の色が少し変わっているような……?
「大丈夫ですかフーリエちゃん?」
「まだ大丈夫……よし着いた」
目の前に檻が立ちふさがりました。ハズウェルさんの説明通り両側にハンドルが付いていて、檻の奥に盗んだ物品が無造作に投げ置きされています。
フーリエちゃんが魔力補給剤のカプセルを口に入れ、「準備はできたよ」と目で合図。それを受けてハンドルを回すと、金属の軋む音を鳴り響かせながら檻の扉が開きました。
と、同時にエリシアさんとハズウェルさんも追いついてきました。
「わたしのペンダントは……あった!」
「こんな雑に投げ置くなんて、ありえないよね」
それぞれの盗難品を取り返して私達の目的は達成されました。残りの物も持ち帰りたいですが、どちらにせよペンダントと杖が証拠となってこの拠点は取り押さえられるでしょうから、ここは一旦引き上げることにします。
が、そう事は簡単に終わらないのがオチ。出口に向かおうとした瞬間に檻が再び閉じてしまったのです。そして真後ろの壁が崩れて【黄金の共鳴】のメンバーがまた現れたのです。
「ヘッヘッヘッ、残念だったなぁ? お布団でおねんねできると思ったか? そうはさせられないんだなぁ?」
「喋り方キモイ」
モヒカンにサングラス、これまた悪党のテンプレみたいな風貌の人が、隠し部屋から仲間を引き連れて私達を袋小路の状態にしました。
こちらが4人に対して向こうは7人。実力差を考慮すれば勝機はありありのアリですが、ここで1人が戦闘が面倒だと戦線離脱を宣言しました。フーリエちゃんではなくエリシアさんが。
「あぁもう! わたし銃弾も無いし戦えませんよ! だいたいこんなロクでもない気分をいつまで味わっていればいいんですか!」
「エ、エリシアさん!? 気持ちは分かりますがエリシアさんがいないと戦力が」
「なんですか。わたしは戦えないってだけで、アイツらを痛めつけられないとは言ってないですよ」
「へ?」
そうして懐から取り出したのは、こぶし大の卵の形をした物体を数個。頂点にはピンが付いていますが、これってもしや……
問いかける前にエリシアさんはピンを引き抜いて、その物体を全て地面に放り投げました。
「ドカーンと爆破ですよっ!」
「リラ防御壁!」
ドオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!
間一髪で防御壁の展開に成功。破壊された天井や柱が雪崩のように降り注ぎます。魔力で守られていると分かっているのに、思わず身をかがめてしまいます。
やがて土砂崩れが収まると、地下のような空気感と圧迫感と明るさだった場所は、空が見えて太陽の光が降り注ぐ開放的な場所へと変貌しました。
7人の男達も防御壁に救われて無事でしたが、全員すっかり腰を抜かして動けていません。
「損害賠償されたら、エリシアの持ち金から出して貰うからね」
「ヒィン…………」
爆発オチなんて、サイテー!!!




