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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第4章 ドラゴンとのいざこざで、村が大ピンチです!
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フーリエちゃんの魔法陣教室~これがヒントになればいいのですが~

少し歩いて村の外れ。ヘルムさんが魔法陣を設置した場所に再び来ました。最初から何も無かったかのように魔法陣は跡を残さず綺麗に消滅しています。



「さてと。リラできる?」

「できません」

「ペペッと書いてフワァ~ってやればいけるよ」



 かなり雑に私に仕事を投げてきました。そして説明も雑。天才特有の感覚全振りな説明はどこでも共通なんですね。

 確かに少し魔法陣のことは勉強しました。しかし高度な内容すぎて書き方は全く理解していません。こうなればフーリエちゃんをその気にさせなければいけません。



「天才フーリエちゃんによる魔法陣の書き方講座受けてみたいな~? 」

「受講料2万ね」

「安い! 受けます!」



 推しに貢は惜しまない、これがオタク。

 金貨2枚の投げ銭をするとフーリエちゃんは満足そうに袋に入れます。その表情を見るために私は今日も生きてるんだなって、思うんです。はい。



「ヘルムはコボル式を使ってたけど、私はあんまり知らないから最近流行りのモンティ式でやるね」

「魔法陣にも流行なんてあるんですか」

「最適化されたり、何かしらに特化させたりで書式は色々あるよ。ヘルムの使ってたコボル式はかなり初期の書式。東洋で開発されたベリドットっていうのもある」



 説明しながら杖を使って中心から書いていきます。使っている杖は魔法陣を書くためだけに開発された杖らしく、これにより作業が大幅に簡略化されたのだとか。よく分かりませんが深い世界なのは間違いないようです。

 魔法陣は中心を第1項とし、外側に向かって第2項、第3項……と続いていきます。大規模な効果を得ようとすればするほど項は多くなり魔法陣は大きくなります。これをいかにコンパクトにまとめるかが腕の問われる部分だとはフーリエちゃんの言葉。



「モンティ式なら第1項からメインコードを書いていい。ベル・リッチー式みたいにhmbkoca rscei.gを書かなくていいし」

「まずベル・リッチー式ってなんですか」

「一番汎用性が高いって言われてる書式。派生書式が多くて、学校なら最初に学ぶ魔法陣の書き方だね」

「やっぱり私には魔法陣は無理そうです」

「魔法への憧れはどこ行った……」



 分からないことが分かっただけ収穫とさせてください。ほらエリシアさんも首を45度近く曲げてるんですし。



「基本は実行させたい処理を、その書式のルールに乗っ取って書いていくだけ。モンティ式はそこらへん分かりやすいからベル・リッチーより学びやすいはずさ」

「魔法と魔法陣って全然違いますね……」

「魔法陣の方が近代になって発明されてるから複雑なのは確か。とはいえ原初の魔法から数百年しか離れてないけど。原理的には魔力さえあれば誰でも魔法が使えるんだけど、学ぶべき知識が多くて難解だから、まだまだ一般にまでは普及しないだろうね」



 やはり魔法の世界には魔法の世界なりの、上手くいかない部分があるのですね。この世界の不条理も受け入れていく必要があるかもしれません。

 そんなことを考えている間に魔法陣が完成しました。模様は複雑で文字列は単語は読めるけど何を示しているか分からない、そんな感じ。

 例えば『kiin(繰り返す) 12 dia (から)45b/lil 』という文字列は繰り返す処理をしているのが何となく想像できると思います。そんなのがずっと続いているんです。

 というかこれプログラミングみたいですね。比奈姉に参考書を見せてもらった時とほぼ一緒の感想を抱いて気づきました。これもワープホールによってもたらされた物なのでしょうか。考えられないこともないのが厄介です。



「書き終わったら魔力を通して最終確認……大丈夫みたい。そしたら石を置いてテスト」



 魔法陣は青い光を発して石をどこかへ転送しました。成功のようです。



「では行きましょう! フーリエさんお手製の魔法陣、ワクワクします!」

「なんだか手作りクッキーを頂いてる感じがします!」

「2人は魔法陣ごときに何を見出してるの」

「フーリエちゃんが書いたということに価値があるんですよ!」

「わかりみが深い」



 えぇ……と困惑の声と表情を漏らされましたが事実なので仕方ありません。

 さて、フーリエちゃん制作の素晴らしき魔法陣で龍民族の村へもう一度訪問です。

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