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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第4章 ドラゴンとのいざこざで、村が大ピンチです!
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真相を探りに、のはずでしたが……

 ヘルムさんが先に出発して数十分後。朝食まで終えた私と眠気が覚めないフーリエちゃん、ギリギリ酔いが覚めてないエリシアさんの3人はヴェロさんの案内でヘルムさんの設置した魔法陣まで移動です。

 ヴェロさんは終始無表情で、変わるとしても眉と目が少し動くだけ。猫背にひん曲がった私と違って背筋は垂直で顎もしっかり引いています。

 手は体の前で重ね、視線は時々後ろを振り返りつつ前に集中。脚のラインも真っすぐで、このままランウェイを歩いても問題ないでしょう。誰もがイメージするメイドの姿、それがヴェロさんでした。



「到着しました。こちらが転移の魔法陣になります」

「へぇ、常に使えるように魔鉱石置いてるんだ。ちゃんと認証と保護機能も付けてる。リシア暗号って最近の論文で発表されてたやつじゃん。それも組み込むなんて相当研究熱心なんだね?」

「仰る通りで御座います。とりわけ転移の魔法陣に関しては国際魔法陣学会の書籍に論文が掲載されるほどです」

「もしかして【仮想転移通路における保護認証技術】? でも名前違うよね」

「ヘルム様はイオモエという名義で論文を発表されているのです」

「へぇあの人だったんだ。先進的で他とは一線を画す研究内容だと思ってた」



 相変わらず何を言っているのかサッパリ分かりません。理系ならぬ魔系の話でしょうか。ようやくサッパリしてきた脳に再びモヤがかかりそうです。エリシアさんも目が虚ろですし。



「とすればヘルムさんも腕の利く魔法使いなんですか?」

「いいえ、ヘルム様は魔法使いではありません。知識によって魔法陣の運用はできますが、魔法そのものを扱う能力はありません」



 要は知識でゴリ押しして難しいことをやってのけてる感じなのでしょうか。たまにいますよね、そういう人って。



「早く行きましょうよ……オロロロロッ」

「あ、ごめん、そうだったね。行こうか」

「では魔法陣の中心にお集まり下さい」



 もはや擦り合わせたかのようにフーリエちゃんを挟んで真ん中に寄ります。どさくさに紛れて手を繋ごうとしましたが払われてしまいました。悲しい。

 ヴェロさんが手をかざすと魔法陣が発光して光量を増していきます。やがて眩い光に視界が真っ白になると――次の瞬間には全く違う場所へ移動していました。


 丸太で組みあがった家が何軒か立ち並び、中央には祭壇のような台があります。石の階段に合わせてドラゴンを模した灯篭が設置されていて、小さな村には変わりませんがシムクィソ村よりは発展しています。

 そして問題は、周囲から向けられる奇異の目。ヴェロさんの言い方的に話は通っていると思っていたのですが……歓迎よりも物珍しさが勝っているようです。フーリエちゃん壁にして視線切ろ……



「ここが龍民族の村ですか~。他の村と雰囲気が全然違いますね」

「ヘルム様は族長様とのお話が終わり次第、皆様と顔を合わせるとのことです。その間はヘルム様のご実家でお休みになられて下さい。後ほどお茶を淹れますので、どうぞごゆっくり」

「お邪魔します……」



 ヴェロさんの言動から察していましたが、中には誰もいないようです。

 埃や汚れがなく綺麗かつ静寂で空気の動きが感じられず、生活感がありません。まるで時が止まったかのような空間。ホコリひとつないリビングはテーブルと椅子、タンスに写真立てがあって横にキッチンスペースのシンプルな空間。

 ひとまず椅子に座ると、ヴェロさんがキッチンで湯を沸かしてティーカップを準備しました。



「ヴェロさんは何度もこっちに来ているのですか?」

「いいえ、今日が初めてでございます」

「初めてなのにこなれてる感がありますね」

「ヘルム様から伺っておりましたので。そのお陰か、一目見ただけで場所を把握できました」

「信頼関係が厚いんですね」

「はい。まるで昔から顔を合わせていたように親しく、敬意を持って接して下さるお方です」



 ヴェロさんはティーカップをテーブルに置いてから口を開きました。カップからはベールのような湯気が昇っています。そんな湯気も途切れた頃にヘルムさんは戻ってきました。


「ただいま」

「おかえりなさいませ。ただいまヘルム様のお茶をお淹れ致します」

「ありがとう。相変わらず気が利くね…………昔から僕を知っていたかのように」

「勿体ないお言葉です」

「じゃあ族長と話してどうなったのか教えて」



 フーリエちゃんがテーブルを指で弾きながら話題を催促しました。いつでもどこでも自身のスタンスを崩さない神経が羨ましいです。



「あ、ああそうだね。その件、というかもう今回の騒動全体に掛かってる事なんだけど……」

「そんなもったいぶる事なの?」

「まぁそう、かな」



 なんだか様子のおかしいヘルムさん。沈んだ顔で目を泳がせながら、しばしの間を置いて出した言葉は予想外も予想外のものでした。



「真相は分かった。でもそれはまだ言えない」

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