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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第4章 ドラゴンとのいざこざで、村が大ピンチです!
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比奈姉を探すためとはいえ、標高15000mの山に登るとか想像できるわけないじゃないですか

 体力を消耗し、息も絶え絶えになりながら火口へ到着。フーリエちゃんはこんな山の上でも箒移動だし、ヘルムさんとエリシアさんは体力お化けだし、ヴェロさんは機械だから平気だしで息切れしてるの私だけ。異世界って色んな意味で過酷…………

 東京ドーム何個分かは知りませんが、隕石が落下したかのように開いた巨大な穴からゴポゴポと不気味な音が、地面を伝って脚に響いてきます。

 火口の下の様子は寝ているドラゴンで見えませんが、マグマの熱は巨大なドラゴンの体躯を超えて感じます。日本語では“あつい”を漢字で使い分けますが、これは完全に“熱い”です。純粋な熱による熱さです。ドラゴンがいなければ服が発火していたことでしょう。



「あそこがユージェズドラゴンの住処だよ。今は寝てるね」

「圧倒されちゃいますね」



 岩陰に隠れながらドラゴンの様子を観察しました。数は5匹おり、火口をぐるりと囲うように眠っています。

 以外にも寝息は穏やか。ひと呼吸する度に炎を吹き出すような暴虐な寝息を想像していましたが、普通の動物と変わらない寝姿でした。それで調査とは何をすればいいのでしょうか。



「まずは鉱物のサンプルを採取しよう。それから溶岩も採取したいけど、この様子では難しいか」

「箒で越えて上から取れば?」

「いや、火口の下に母ドラゴンがいるんだよ。最近卵を産んで子守りしてる。子守り中の母ドラゴンは周囲の環境の変化にとても敏感で、ほんの少し頂くだけでも勘付かれてしまうだろうね」

「子供が産まれるからピリピリしてるんじゃなく?」

「過去の傾向から違うみたい。別の原因があるように思うよ」

「ふあぁ〜あ……めんどくさい……」



 フーリエちゃんは腰を下ろして岩に背中を預けて寝てしまいました。こんな環境でも眠れてしまう図太い神経にヘルムさんが若干引き気味。ひとまず鉱物のサンプル採集です。環境の変動が原因なのか、人的な原因なのかを鉱石に含まれる成分や魔力を解析して切り分けるそうです。

 龍民族というくらいなので、ドラゴンと会話するのかと思いました。もっとも会話できていれば手こずらないのでしょうけと。


 渡された袋を手に、ドラゴンを刺激しないようにコソコソと岩陰に隠れながら採集します。いつも人目から隠れて行動するぼっち陰キャには余裕の仕事ですね……人外にすら反応されないことを喜んでいいんでしょうか。

 良いのか悪いのか、ドラゴン達に気配を悟られることなくちゃちゃっと採集できました。しかし問題は溶岩の採取です。

 変化に敏感になっている今、溶岩1グラム分でもエネルギーに変化があれば気が立ってしまうとのこと。要は今のドラゴン達は感度1000倍になっているということ。



「エネルギーの変化を0にすれば感付かれないってことでしょ? なら減った分を増やせばいいじゃん」

「でもこの火口にしか溶岩はないよ?」

「無ければ作ればいい。魔法の得意分野でしょ」



 そう言ってフーリエちゃんは杖を構えました。すると握り拳、もしくは缶バッチ2個分ほどの大きさの溶岩が同時に落ちて浮かび上がってきました。

 その光景にヘルムさんが目を丸くして驚嘆の声をあげました。



「2つの魔法を同時に操ったの……? 凄いね、キミ……!」

「そ、そうなんです、よ! フーリエちゃんは、天才なんです!」

「どうしてリラが自慢気なんだ」

「自慢の仲間だからです!」

「つ、都合が良いね相変わらず……」



 あ! フーリエちゃんが笑った! ちょっと照れてた! かわいい! 意外と押しに弱いフーリエちゃん概念いい! いい!! 最っ高にグレートってやつですよこれはァ!!! 理性がフーリエちゃんにより跳ね飛ばされちゃいますぅ!!



「ッウ! アッ、ハァハァハァハァハァ、ッゼッホゲッホ!!」

「だ、大丈夫かい!?」

「マグマの熱で喉が焼けたのかもしれません。治療薬ならこちらに」

「あぁ大丈夫大丈夫、理性がトんでるだけだから」

「フ、フーリエちゃんが、悪いんですよ…………」

「責任転嫁しないで。エリシアも“わかる”みたいな顔して腕組まないで」



 エリシアさんの同意も得られたので私の勝訴です。

 無事に採取が終わり登ったときと同じように魔法陣でワープ。ただいま森林限界の下。

 解析には朝まで掛かるとのことで、今日は切り上げて解散になりました。移動に加えて休む間もなく1万5000メートルの山に登ったのでヘトヘトです。空き家を使っていいとのことで、ウキウキでログハウスに入ったはいいのですが問題がひとつ。



「ベッドが2脚しかない。エリシアは床だね」

「ちょっと即答しないでもらえますか!? いくらなんでも堅い床の上で寝たら腰とか首が死にます!」

「だっていつも床に落ちてるじゃん」

「それ言ったらリラさんだってフーリエさんにくっついてばかりじゃないですか!」



 急にこっちにボールが来た!? しかもデットボール級の球が!



「そんなことないです! 確かに抱き枕にしちゃいたいけど、必死にこらえてるんですから!」

「本当ですかぁ~? 寝ている間に夜這いは定番じゃないですか」



 邪悪な笑みを浮かべるエリシアさん。放つ雰囲気は完全に私を敵対視しています。一方で目線は主にフーリエちゃんに向けられている。

 ……なるほど、意図を理解しました。フーリエちゃんの隣を狙っているに違いありません。普段はフーリエちゃん真ん中の川の字だから平等なものの、今回はそうもいきません。逆に言えばフーリエちゃんを独占できるチャンス。

 推しを独占、それはオタクなら一度は夢見る権利。独占にキリトリ線はありません、得るのは10割のみ。よって日替わりで交代などハナから存在しないのです。



「…………今日は敵同士のようですねリラさん」

「フーリエちゃんは、渡しません」

「わたしのためにたたかわないでー」



 闘志が燃え上がり、ぶつかり合う目線が火花を散らします。彼女も同じ気持ちなのでしょう。

 絶対に渡さない、離さない!



「やはり、こうするしかないですか」



 エリシアさんが背負ったマシンガンを引き抜き、構えます。



「臆病な私でも、絶対に譲れないものがあるんです」



 杖を召喚し、真正面に構えました。



「「決着を」」

「外でやれ」

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