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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第3章 魔法使いの聖地に来ましたが、大大大事件の予感です!
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じゃあ私、刑事の後ろでメモ取ってる役になりますね

 調査局の前庭にて、銃口で『の』の字を書いてるエリシアさんと星詠みの魔女ことアルシオーネ・アドマイヤさん、さらに後からエレクトラさんも合流しました。



「アドマイヤよ。星は見えたか?」

「……星屑にもならない浮遊物が消えてくれれば、もっと良く見えるのだけれど。こういう時だけ都合良く呼ばれるのは不愉快でならないわ」



 アルシオーネさんは望遠鏡から目を離すことなく、開口一番に不満を口にしました。不穏な風が彼女の青みがかった紺色のインナーカラーを露わにします。初めて会ったときは見えませんでしたね。



「生憎だけど見えないわ。一昨日はハッキリと見えていたし、その他はほとんど変わりないのに」

「そもそもどうして危険な星を報告しなかった」

「私が報告しなかったんじゃなくて、そっちが聞き入れなかったの間違いでしょ。私は長に伝えたわ。長を通じても私の意見を聞き入れなかった結果がこの惨状ではなくて?」

「ほう、随分と無責任な言い草だなアドマイヤ」

「責任を全うしなかったのは何方(どちら)かしら? それに私は“助言役”よ。貴女や軍導の魔女みたいな人らが、無根拠だ信憑性が無いと無責任に御託を並べて下さったお陰で“助言役”という副称が付いて事実上の格下げになったのだけど?」



 お互いに言葉尻を捕らえては食い気味に嫌味の応酬です。どんどんヒートアップして、さすがにそろそろ止めないとマズイんじゃ…………!?



「あのさ、私達はコルタヌ六芒星の私怨を聞きに来たわけじゃないんだけど? とっとと情報共有してほしいな」

「そうね。フーリエの言う通り、早くこの場を終わらせましょう」



 フーリエちゃんが場の流れを変えようとし、アルシオーネさんも空気に乗りますがエレクトラさんは不満げに睨みを効かせてきました。その表情に、かすかに軍導の魔女が重なって心臓が飛び跳ねました……



「気に食わないな。アドマイヤの擁護か?」

「はぁ面倒くさいね。いいから早く情報共有をしてと言ってるの。私達もとっとと終わらせたいし、六芒星にとってもそうでしょ? 民衆はテロリストの声明に同情を抱いている。それが意味すること、それに対処すべき行動は理解できてるよね?」

「くっ……!」



 フーリエちゃんの扇動が効いたみたいです。煽るように言葉を繋ぐので心底ヒヤヒヤします……でも貴族出身なだけあって、どんな相手にも堂々とできるのは凄いです。

 フーリエちゃんの雄弁にアルシオーネさんが鼻を鳴らして嘲笑します。エレクトラさんは何か言いたげに口を開きかけましたが、諦めて本題へ入りまた。



「……アドマイヤ。星が見えない原因には、関連するであろう心当たりがある。魔力を偽装された痕跡があった」

「偽装ならば星がふたつ重なるはずなのだけど、そんな星は無いわ」

「最後まで聞け。魔力は自然界には存在しない魔力に偽装された。我々のやり方の急所を突いてきた形になる」

「そういうことね……ならウインマリン地区に“星の輪郭”があるわ。輪郭だけで中身が無く、何の星か分からない。私から言えるのは以上よ」



 アルシオーネさんは言い終わると、望遠鏡を片付けてさっさと帰ってしまいました。よほど仲が悪いみたいですね……

 残された私達に対してエレクトラさんが口を開きました。



「後は自由にやってくれ。報告は簡素で正確に、数をまとめて挙げるようにな。我々も忙しい」



 それだけ言い残して彼女は場から立ち去りました。

 口調も荒々しく、急に突き放すような態度。最初は公平な人かと思っていましたが、裏表が激しいのかもしれません。

 フーリエちゃんはふぁぁあ、とあくびしてウインマリン地区の方を指さします。



「話の流れだとウインマリン地区に行くのが最初になるね」



 推理ではなく話の流れなのがフーリエちゃんらしいです。実際、火薬を仕入れたタトラ商会もウインマリン地区にあるようなので、フーリエちゃんの言う通り港に向かうことにしました。



 ※※※




 埠頭のすぐそばにある大きな倉庫がタトラ商会の建物でした。看板が無ければ見落としていたに違いありません。



「お邪魔します! 」



 エリシアさんの明るい声が吹き抜けの倉庫内に響き渡り、返ってくる残響と共に白髪のおじいさんが歩いてきました。



「はいはいどなたでしょう」

「私たち、長からの任命で先日の爆破事件を調査してましてね。爆発元がタトラ商会が仕入れた火薬の箱からだったのですよ。そして本来はそこにあるはずのない、ニトロの爆液が混入していたんです。誰がどこで仕込んだのか、調査させてもらいますッ!」



 自分がリーダーだと言わんばかりに、ビシッと人差し指を倉庫の奥を突き指して宣言。ワァカッコイイ。

 けれどもエリシアさんが流れを作ってくれたのは確かです。もしも犯人あるいは協力者がいるなら、勢いでビビらせてボロを吐き出させる作戦ができるのですから!

 しかし、おじいさんには響いてない様子。服装からしてただの事務員ぽいですし、調査しに来ましたと言われたら、はいそうですかと担当者に引き継ぐのがお仕事でしょうから。



「ああ、あの火薬ですね。当時の担当を呼ぶので、少々お待ちを」



 5分ほどして別室に案内され、当時の担当者だという人と話ができました。丸眼鏡のひょろひょろした若い男性です。



「初めまして。早速ですが本題に入ります。タトラ商会のほうでは、ニトロの爆液の混入は無かったですね?」

「ほ、本当に早速ですね……ええ勿論です。あの火薬はウチに入ってきた時点で木箱に収まっていました。一度開封して、商品に相違が無いことを互いに確認したうえで確認印を押して釘を打ち直して出荷します。これがその時の納品書です」

「輸入元はカマズ商会。確かブガッディ王国にある、王室にも出入りしているという商会ですよね」



 フーリエちゃんの肩が小さく震えました。寒いのでしょうか? 確かにここは断熱性皆無の倉庫内ですが。


 納品書にはタトラとカマズ両方の確認印が押されていて、わざわざ輸入したことを考えると、両者がグルの可能性は極めて低くなります。

 となれば運送中に混入された可能性が大です。



「では運送中に混入された可能性はどうでしょう。運送時の担当者もあなたですね?」

「え、ええそうです。本祭当日の朝に出勤して、真っ先に火薬の発送作業に取り掛かりました。開封された跡が無いか確認して運び出しました」

「到着してから開封して確認は?」

「しません。だってあそこは神話演武の舞台。神聖な始祖の前に偽りは通用しませんし」



 急に胡散臭くなってきました。今まで確固たる証拠を提示されたのに、急に宗教が出てくるのは不自然極まりないです。

 フーリエちゃんも顔をしかめます。当然です。



「なるほど、分かりました。では次の場所に向かいましょう。目星は付いてるはずですよね?」



 エリシアさんの言葉にこくりとうなづきます。フーリエちゃんはすでに出口に向かって歩いています。気が早い。

予約投稿忘れすんませんでしたぁ!

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