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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第3章 魔法使いの聖地に来ましたが、大大大事件の予感です!
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尋問受けるとか聞いてないんですけど!!

 宿でエリシアさんと合流し、全員の無事と安全を確保したところで、夜が明けるのを待ちました。


 そして翌朝。街中、いえ国中は大混乱に陥ってしました。

 主犯が犯行声明を出し、犯行による死者と負傷者は合わせて500人超。

 国の(おさ)であるアルキオネ・エクリプス・ダイムラーは声明を発表し、直ちに潜伏場所を突き止め、生死を問わず壊滅へ導くとコメントしました。

 コルタヌ六芒星主導で調査団と機動部隊が編制され、報復に向けて始動。現在コルテに滞在している人は、国民か否かを問わず出国禁止の処置が取られました。



「私達も当面は出られないってことか……まぁそれもそうだよね。あんだけ大規模な花火を打ち上げたのだから、血眼になって探すのは当然か」

「順番で聞き取り調査があるそうですね……ついでで比奈姉の無事も分かればいいのですが、もし死んでいたら……っ、私は……ッ」

「大丈夫だって。お姉さんも魔法使いなんでしょ? リラの言うように、魔法に夢を抱いていた人ならば、私のように都合良く切り抜けているはずさ」

「うぅ…………そんな慰め方はズルいですってぇ…………抱いて……」

「太ももに顔を埋めるのはまだいいけど母性を求めるな! 私の胸を揶揄したいの!?」

「私だって小さいですもおぉぉん……! どっかのアイドルグループに、まな板にしようぜ! とかって遊ばれるんですぅぅぅ!」



 フーリエちゃんは小さい方が好きですけど、私のはこうなんか悔しいんですよ! 大きくなりたいって強い願望はないけど、やっぱりなんか悔しいんです!

 それに比べてエリシアさんは、たまたま見た着替えシーンで脱いだら凄いタイプなのが判明しましたし、なんですかねこの典型的な胸囲の格差は……



「そろそろ私たちの番じゃないですか、ってなんでこっちガン見してるんですか……?」

「別に」

「何でもないです」



 公安庁に出向くと、入り口で身体検査を受けて取り調べ室に誘導されました。

 本来は1人ずつなのですが、私があまりのコミュ障ぶりを見かねて、特別にフーリエちゃんと一緒に調査をしてもらうことができました。まさかこんな場面でコミュ障が役立つとは。捨てる神あれば拾う神ありってやつですね。多分違うけど。


 部屋に入ると軍服の女性が待ち構えていました。

 視線が合うだけで相手を威圧し、萎縮させてしまうほどの鋭い目つき。短く切りそろえられた髪は、力強さと共に威圧感をさらに引き立てています。

 そして背広の胸には六芒星のブローチ……今日も厄日ですね!!!



「ほう、魔女様がおふたりか。面白い」



 開口一番、低い声が部屋に響きました。もう逃げたい、怖い、でも逃げられない。

 フーリエちゃんは一瞬の動揺すら感じさせず、眉ひとつ動かさずに軍服のコルタヌ六芒星と向かい合っています。さすが貴族出身……!



「オレはコルタヌ六芒星、軍事担当タイゲタ・マレンゴ・ツェッペリンだ」

「私はフーリエ・マセラティ。こっちはモトヤマ・リラ」

「ほう、マセラティだと?」

「マセラティなんて、珍しい苗字ではないと思うけど?」



 初っ端の名乗りから疑いを掛けられたにも関わらず、普段通りの飄々とした態度で受け答えをするフーリエちゃん。しかも相手は格上のコルタヌ六芒星です。フーリエちゃんの肝はどうなっているんですか。



「ハッ、観光客がオレに向かってタメ口とは面白いヤツだな。まあいい、そのワケもマセラティの家だからだろ? 蒼の目もアイツにそっくりだ」

「見ず知らずの人に面影を重ねられて、しかも証拠とするのが片方の目の色だけ?Sgua'r Poezzka」

「貴様! 軍導の魔女様に向かって失礼な口を!」



 ちょっとフーリエちゃん心臓に物理的な意味でも悪いですって! 兵士がキレて矛を突き付けてきたじゃないですか! 軍導の魔女が、「黙れ」と目と声で威圧して鎮めてくれたからよかったですけど!



「オレが見間違えるワケがねェ。目の色も同じ、魔力の味も同じだ。容姿は似ても似つかねェがな」

「軍導の魔女様も随分と強引なんだね」

「当たり前だろ? テロリスト相手にヘナヘナと出てどうする」



 軍導の魔女がフーリエちゃんに重ねてる人物って誰なんですか。フーリエちゃんと同等以上の凄い魔法使いがいるんですか? 事件の動乱と重なって頭がパニクりそうなんですが。

 というか威圧が怖すぎて無理帰りたい……泣きたい……



「とにかく、だ。お前らは事件の時、どこで何をしていた?」

「会場の立見席で神話演舞を見てた」

「え、えと、隣に同じく、です」

「もっとハッキリ話せ聞こえねェぞ」

「…………っ!!!」



 ああもう本当に嫌、帰りたい、フーリエちゃん助けて怖い…………もう泣きそうてか視界が歪んでるから泣いてる…………せめてフーリエちゃんの袖だけでも掴ませて…………



「そう威圧されたら、ビビって話ができないでしょ」

「軍人が威圧しないでどーすんだ。おい、リラと言ったか。名前からして東洋人だな? どこ出身だ」

「あ、あ、えっと、その……」

「自分の出身地も忘れたか? それともテロ集団の仁義に反するのか?」

「ひっ………………!」



 そんな、強く言わなくても、どうして……っ、怖い、怖い、目も、声も、威圧されて……自白させようと、怖い、助けて…………誰か……



「なーんで君は人を畏怖させないと気が済まないンネ。君の恐怖調査のお陰で後ろが詰まってる自覚はあるのかンネ」



 恐怖で頭がおかしくなりそうな空間に、呑気な緩い声が入ってきました。

 入口に立っていた兵士は敬礼し、軍導の魔女は予想外の来客に戸惑いを隠せない様子です。



「お、長、どうしてここに!?」

「ようやく一寸の手が空いたから状況を視察しに来たンネ」



 え、お、長? この私の方をチラ見した赤いローブの魔女が?? 語尾が独特なこの人がコルテを治めている長なんですか???



「後は我が引き受ける。このフーリエという魔女とも会いたかったンネから。それとタイゲタ君には機動部隊の件で出席して頂きたい話がある」

「しょ、承知しました」

「改めて、我がアルキオネ・エクリプス・ダイムラー。先程の部下の無礼について深く謝罪すると共に、どうかお許し願いたい。彼女も悪意で脅している訳ではない」



 帰りたい……



「さて、改めて確認したいンネ。そちらの金色の髪がフーリエ・マセラティで一方がモトヤマ・リラ。特にフーリエ氏については、事件の会場で爆発の瞬間に月属性の魔法で壁を展開していたと複数の証言があったンネ」

「爆発の予兆は感じていましたが、感じた瞬間に爆発して範囲を広げられなかった。あ、広げられませんでした。その後は、隣にいた旅仲間のエリシア・ラーダを先に逃がしてから別の席に行ってたリラを助けに行った。あ、です」

「そこまで無理する必要はないンネ。苦手なら自然体で話してくれたほうが効率が良いンネ」

「あ~もう本当にこの喋り方ダメ。疲れるし、なんでまた貴族的な上下関係に囚われなきゃいけないんだってなる……」



 あぁ伸びてるフーリエちゃんかわいい……畏まった話し方のフーリエちゃんも良きですが、やっぱり普段のお気楽な態度のほうが何倍も落ち着きます。

 しかし気楽すぎて、長の目つきが変わったことに気付いてないようです。



「マセラティ、その瞳、なるほど。Vgus xioq mauk Fqubuka・Luraquse・Cukkuqu?」

「…………!」

「え、なん、ですか……?」

「古代コルテ語。私に向けた発言だね」



 古代コルテ語は、始祖の時代に使われていた言語で、現在は魔法の詠唱くらいしか使われる場面がない言語だとフーリエちゃんから教わりました。

 そんな言語でわざわざ話してきたということは、特にフーリエちゃんに対して何らかの企みがあるに違いありません。

 軍導の魔女の発言といい、フーリエちゃんは一体何物なんですか。貴族出身なのは知ってますげど、まさか一国の王女とか……!?



「Vgus uzios」

「Akcars cuofgsaq id sga coja id Cukkuqu.Umc rersaq id Nqembarr Caqkemassu――」

「Amiofg. Ri Vgus ci xio laum?」



 完全に私、置いてきぼりです。

 こういうときってどうすればいいんでしたっけ。あ、そうか虚無になるんだ。小学生で身に着けたスキルが異世界でも役立つとは、人生分かりませんね。


 虚無になって数分後、フーリエちゃんと長が普通の言語で会話を再開しました。聞きなじみの言語ってだけで、こんなに安心できるんですね。ほっと胸をなで下ろせます。



「はぁ。リラ、簡潔に言うとテロリスト集団の壊滅に協力することになった」

「ブッフォッ!」



 私のなで下ろした胸を返して!!!

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