またコルタヌ六芒星と再会してしまいました! 今日は厄日ですね!
「――それ以降、路地裏に隠れて比奈姉と2人きりで屋台で買ったのを食べるようになりました。別に隠れる必要はないんですけど、ほら光が強いほど影が濃くなるみたいな……? 人が多いからこそ誰もいない場所で二人きりは特別に感じたんです。……比奈姉が大好きなので」
「あら~~」
「う、その反応は、されると恥ずかしい、です……」
ううぅぅ恥ずかしい〜………でもここまで比奈姉、比奈姉言ったらそう思われてしまうのも仕方ないですよね……
あぁ顔が赤くなってるのが自分でも分かります。コミュ障由来じゃないから良い方なのかな……? んっ、フランクフルトおいしい…………
照れを誤魔化すように食べ歩いていたら大聖堂の前まで来ていました。
アルシオーネさんが言っていたセレーネ・ベルタ大聖堂です。結果的に比奈姉が向かっていたという場所に来てしまいました。
アルシオーネさんによれば、既に場所を離れているそうですが。
「ここは比較的人が少なくていいですね。ここにヒナさんがいるんでしたっけ」
「いや、もういないとアルシオーネさんは言ってました」
「アルシオーネがどうしたって?」
「ピャッ!?」
あぁもうホントに今日は厄日です! 心臓が飛び出るどころか止まってしまいそうですよ!
そして案の定、六芒星のブローチ! 今日で3人目……と思いきや六芒星は六芒星でも、さっき会ったアトラスさんでした。ほんの少しだけほっとしましたよ……
「あ、さっきのコルタヌ六芒星」
「どうも、また会ったね。アルシオーネの名前が耳に入って、つい反応してしちゃった。あの人に会ったの?」
「そうです。リラさんのお姉さんを探している最中に遭遇して、神話演武まで待ったほうが良いと助言を貰ったんです」
「へぇ人探しに星詠みを使うなんてね。彼女らしいけど、何でもかんでも星詠みで解決しようとするのも疑問だね」
「えっと、アトラスさんとアルシオーネさんは仲が悪いんですか?」
「別に悪くはないんじゃないかな。向こうがどう思ってるかは知らないけど、普通に仕事してるし。まあ六芒星内にアルシオーネと対立してる人物もいるけどさ」
やれやれ、といった感じでアトラスさんは両手を外側に曲げました。
どうやら同じコルタヌ六芒星でも仲の良い悪いがあるようです。当然といえば当然かもしれませんが、フーリエちゃんが言っていたように長を含めた七人は血縁関係にあります。血の濃い薄いもあるでしょうが、仲の悪い血縁関係が私には想像できません。
てか、そんなことより早くこの場を離れたいんですけど! 緊張が絶頂を迎えて脱腸しそうなんですが!
落ち着け、フーリエちゃんの声を脳内再生して平静を保つんだ………………ああっ、セルフASMR! 脳がとけりゅ…………やっぱりフーリエちゃんと一緒がいい……
「色々とあるんですね」
「そりゃそうだよ。政策の違いでぶつかりあって、とことん話し合うのも一種の仕事さ。ちなみにボクは“誰もが輝き、コルテが輝く社会”を理念としる。その為にコルタヌ六芒星の解散の提案もした」
「解散とはなかなか攻めた姿勢じゃないですか……なぜそれを提案したのですか」
「非魔法使いと魔法使いの垣根は取り払われるのが良いと考えているのが一番の理由。もうコルテは十分に魔法の聖地というアイデンティティを確立している。全てを魔法に合わせなくても上手くやっていける、そう思ってるからさ…………おっと、思わず話し込んでじゃったね。ボクはそろそろ戻って別の仕事をしないと。では良い観光を!」
私の脳内がお花畑になっている間に、アトラスさんは颯爽と立ち去っていきました。それに手を振って見送るコミュ強エリシアさん。きっとエリシアさんも別の世界の人間なのでしょうそうでしょう。
ともかく緊張の原因が去ってほっと一息つけます。カラカラの喉にコーヒーが染みわたって多幸感に溢れます。値段の割に安っぽい味、でもこれが良いんですよ。よく意識高い系カフェ愛好家が言う“雰囲気を買ってる”というやつです。
「大丈夫ですかリラさん。ずっとガチガチでしたが」
「あんな目上どころか天上の人と気さくに会話できるエリシアさんが恐ろしいですよ……」
「曲りなりにも商売で食っていくつもりでしたからね。営業スキルは大事です」
「私には絶対無理…………」
そんなこんなで大道芸を見たり、魔法道具の値段の高さに仰天しながら会場を一周しました。
時は黄昏、そろそろ神話演武が始まる時間です。急いでメイン会場に向かうとフーリエちゃんが浮かせた箒に座りながら待っていてくれました。ドロワーズがチラリしててかわいい。
いつもの眠たげな表情で「おかえり」と迎えてくれるフーリエちゃん。ああもう天使かよ天使だったわ! 天使どころか母性まで感じちゃいそうになって危ない! フーリエちゃんはフーリエちゃん、ママじゃない!
「うぉああああああ…………」
「リラさん、ついにフーリエさんに母性感じるところまでいっちゃったんですか?」
「その発想が出てくるエリシアが怖いよ」
ふぅ、なんとか限界化を抑えられました。奇行の自覚はあるので、牢屋にブチ込まれないようコントロールしないとです。
さて問題の比奈姉はいるでしょうか。軽く見渡す限りでは何人か、茶髪セミロングの魔法使いらしき人が見受けられます。しかし私の比奈姉センサーには引っかかりません。比奈姉が持つ、近しい人にしか分からない独特な雰囲気を感じないのです。
まさに神出鬼没。自由人な比奈姉らしいといえばらしいですが。
「フーリエちゃんとエリシアさんは神話演武見ててください。私は比奈姉探しに集中しますので」
「見ながらでも探せるんじゃない? ここの立見席からだと観客席が見下ろせるし、公演中は人の出入りが少なくなるだろうから」
「そうですよ。神話演武は見ないと損です魔法使いならなおさら!」
「そんな…………なんか気を遣わせちゃってすいません」
「気なんて遣ってないよ。提案をしただけ」
うぅ、なんと優しいのでしょう……こんな私にここまで気を許してくれるなんて、本当にありがたい話です。
さあ、宵を告げる鐘の音を合図に、神話演武いよいよ開演です。




