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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第3章 魔法使いの聖地に来ましたが、大大大事件の予感です!
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まどろみの中で

「フーリエ・マセラティ。今はそう名乗っているのね」



 心地よい春風が吹く中で昼寝しようとした矢先、コルタヌ六芒星が一人、アルシオーネが問うてきた。

 人の快眠を阻むなんて、コルタヌ六芒星様も気遣いがないなぁ。



「ほとんど逃げるような形で家出したんだから、名前を変えるのは当然」

「……私はあなたの正体を知っているし、タメ口も気にしないからいいけど、他は礼儀を重んじる者もいるから気をつけなさい」



 星を見ただけで分かるなんて、流石はコルタヌ六芒星様。ならばキッチリ釘を刺しておかないと。



「ちゃんと人は選んでる。無駄に十数年も貴族社会にいたから、見極めるのは得意。私のこと、口外しないでよ」

「分かってるわよ。そうするだけの理由に私は同情しているのだから。けれどマセラティなんて苗字を名乗ったら、この国では特定されかねないわよ?」

「マセラティなんて苗字が世界中に何人いると思ってるのさ? 魔力も顔立ちも似てる人は世界中に三人はいると言うよ?」

「友好的な魔女ばかりじゃないのよ」



 片目を開いて見ると、星詠みの魔女は角を立てた目をこちらに向けていた。

 そんなことは百も承知だ。それを踏まえた上で、自分はその苗字を使うと決めたのだ。他人にどうこう言われる筋合いは無い。



「私はそれでも、この苗字を背負いたいんだよ。そうするだけの理由があることも、星詠みの魔女様なら知ってるのではなくて?」

「好きになさい。意見する権利は私にないわ。でも、折角だから占ってあげるわ。貴女が今後どう動くのが最善か」

「……何でそこまでするさ。六芒星にとって私はめんどくさい存在だと思うんだけど」

「魔法を愛する人に悪い人はいない」

「……理想論じゃないか」

「理想を追い求めるのが魔法でしょ。つべこべ言わずに、人の良心は素直に受け取っておきなさい」

「分かったよ」



 人心掌握が上手な御方だ。

 “魔法を愛する人に悪い人はいない”その言葉もまた、魔法を愛する者にしか伝えられなかった言葉だった。

 私も彼女も同じ人種らしい。


 アルシオーネは再び望遠鏡を覗き、ダイヤルを回しながら向きを合わせ始めた。

 私も占星術を齧ってはいるが、昼間の空で観測して占えるほどではない。時間や天気に左右されずに正確な星の動きを観測し、占えるのは世界中で彼女だけだろう。同時に、それが彼女が六芒星たりえる理由であるのだ。

 そして数分後に、彼女はある位置で望遠鏡を止めた。無表情は表情は険しい表情に変わり、事の深刻さが伺える。

 名前の通り星を詠み、国の動きを占う。そんな役割の彼女がそんな表情をされてはなぁ。



「…………今夜は警戒すべきね。怪しい予兆が出てる」

「私も嫌な予感はしてたんだけど、星詠みの魔女様までそう仰るとは」

「それにおかしいのよ。魔力が誰のものでもない魔力にされている。個人が特定できない」

「怪しいで済む話じゃなくない?」

「もっと悪い事を言うと、貴女()はその星と無条件で接触することになるわ。これは避けられない運命よ」



 私は顔をしかめた。祭りの時期に事件なんて禄でもないに決まっている。

 とはいえ星詠みの魔女様の占い結果がそうである以上、諦めて受け入れるしかなさそうだ。私の勘も鈍っていなかったらしいのが、なんとも皮肉な話。

 彼女の占星術に国民は期待し、不安し、歓喜し、恐れ戦く。それ程までに正確無比なのだ。



「”軍導の魔女”様に助言するんでしょ?」

「彼女は私を嫌っているから、長を通しても動いてくれるかどうか……。エレクトラも同じだし。ま、どう対処するかは私の知ったことではないわ。星詠みの魔女は助言をするのみよ」

「随分とドライだね。声のトーンも常に一定だし」

「クール気取りのつもりはないわ。そう思うならそれでいいけど、はぁ。厄介なことになったわね全く」

「それにしても六芒星内で不仲か。不安が余計に掻き立てられるよ」



 最近聞いたコルテ国民の六芒星への不信感、六芒星内での意見割れの噂は本当だったらしい。

 コルテ国内の政治は六芒星が全てを担っている。それ故にプライベートな不仲はまだしも、行政に影響を及ぼす程の不仲はよろしくない。

 お陰で最近は魔法使いと、そうでない人間との溝まで生まれてしまっていると聞く。そんな中で事件が発生して、果たして適切な対処が成されるのか。


 正直この国に留まるのは私にとっては宜しくないだろう。だけど生誕祭の目玉である神話演武に興味が無いと言えば嘘になる。

 第一、リラのお姉さん探しもある。コルテで似たような人を見て、更に協力すると言った手前、面倒だから次に行かせてとは自分勝手すぎる。


 それにリラは、魔法が大好きな人だから尚更だ。

 あの日、リラが初めて魔法を目にした時の瞳と表情。心から魔法に憧れて好きでないと見せられない顔。素敵だな、と正直に思った。彼女もまた()()()()()()()なはずだ。

 それに、リラをあそこまで夢中にさせたお姉さんがどんな魔法使いなのかも純粋に気になる。


 まぁ、今は頭の片隅に置いて昼寝に徹しよう………………

短いので今週は2回更新!

次回は3/31更新です!


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