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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第3章 魔法使いの聖地に来ましたが、大大大事件の予感です!
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3人揃って箒で空を滑空です!

 店を出て早速エリシアさんは箒に跨ります。

 姿勢は普通の箒の跨り方ですが、足を曲げた先に箒を進ませるスロットルとブレーキのレバーがあるせいで、バイクの搭乗姿勢にも見えます。



「風が気持ちよくて、意外と安定感があって、最高の乗り物ですね!」

「でもそれ、派手な動きは苦手だと思うよ。あくまで機械だから重力の影響で故障したりするかも」

「むう、あくまで移動専用ですか。でもこれで、いつでもフーリエさんに抱きつける……!」



 近づいてくるエリシアさんの箒を、私の後ろで横乗りしているフーリエちゃんが両足で払い退けました。



「空飛ぶ錬金術師から、墜落する変態に肩書きを変えてやってもいいんだよ?」

「リラさんには許してるのに理不尽!」

「箒乗ってる時だけだよ。リラは直接危害を加えてこないし」

「フーリエちゃんは雰囲気だけで幸せになれますからあ……うぇへへ」



 3人での空の帰路は優雅にのんびり進んでいきます。


 技術で魔法と同じ力を得て、同じ景色と風を感じる。魔法が存在する世界がゆえのエモさ、大変尊いです。比奈姉が追い求めていたロマンは、こういうことなのでしょうか。


 ファンタジーって最高、魔法って素晴らしい。ついでにフーリエちゃんかわいい。ですが当の本人は浮かない様子です。



「…………でもさ、正直この発明は手放しで賞賛できないんだよね」

「えっとそれは、どうしてですか」

「私にとって、魔法は憧れであって夢であってほしいんだ。確かに全員が魔法を使える世界は素晴らしいよ。でも簡単に手に入れられないからこそ、憧れや夢になると思う。本人達の前では言えないけど」

「だからフーリエちゃんの反応が薄かったんですね」

「それもあるし、何となく嫌な予感もするんだ」



 フーリエちゃんが怪訝な顔を浮かべて不安を口にしました。



「世界で誰もが魔法を扱えるようになったら、今までの魔法使いの立場はどうなる? そこに亀裂が生じて、やがて大きな争いとなるかもしれない」



 その言葉に私はハッとしました。アトラスさんの“良くも悪くも魔法使いの国”という言葉。

 魔法によって生まれ、魔法が存在意義であるこの国にとって魔法使いは欠かせない存在です。一方で非魔法使いも増え、今だ魔法使いばかりが優遇されがちな社会に改革が必要だと。


 フーリエちゃんの、魔法は憧れであって夢であってほしいという意見には賛成です。私も、手を伸ばしても手に入らなかった魔法に焦がれた一人でしたから。けれども、誰もが魔法と同じ力を使える世界もまた素晴らしいと思います。


 アトラスさんの言うように魔法使いと、そうでない人の格差が取り払われるなら、それが最善だと私は思うのです。……平和ボケしすぎでしょうか?



「……少し心配しすぎではありませんか? そんなすぐに革命が起きるとは思えません。魔鉱石発動機(エンジン)だって利用している人は全然少ないですし」

「ふふっ、そうかもしれないね。ただ私は、いつ革命が起きるか分からないような社会の中で暮らしていた。そのせいで敏感になりがちなんだよね」



 フーリエちゃんは少し冗談めかして言いましたが、その発言に私も“なんとなく”不安が沸き上がってくるのでした。

 フーリエちゃんは貴族出身。この世界の裏事情も知っているのでしょう。一方で私は全くの無知。それゆえにフーリエちゃんの言葉は、私にとって重要な意味を持つのです。もしフーリエちゃんの予感が当たったら、どう動くべきなのでしょうか……


 と、そんなことを考えていたら、横から興奮しているエリシアさんに話しかけられました。

 興奮しすぎて私とフーリエちゃんの会話は聞こえてなかったようです。



「で、で! 今夜のレース見に行きませんか!?」

「私は寝てるよ。明日が本番だから体力を回復したい」

「うぅ~ならせめてリラさんどうですか!」

「うぇ、え、私でいいんです……?」

「もちろん! ひとりで観戦は寂しいですから、一緒に来ていただけるだけでもありがたいです」

「ううぅ~…………どうしましょうか……」



 エリシアさんからの悩ましい提案です。フーリエちゃんを介さずに他人と話すのは、エリシアさんでさえまだ緊張するのです。いつも明るく元気で、私とは対照的な人間ですし……

 しかしエリシアさんは仲間。仲間内ですら一対一で会話できないとか自分でも呆れます。

 逆に考えれば、これはコミュ障を軽くできるチャンスなのです。ここで断ってしまえば、エリシアさんの私に対する信用度も下がってしまうかもしれません。


 魔法という武器を手に入れたのですから、せめて前向きに検討するくらいはしなければ。



「……分かりました。一緒に行きます。フーリエちゃんは大丈夫ですか」

「何でもかんでも私に意見を求めないで……私は私で好きにしてるからさ」

「では決まりですね!」



 今宵開幕する激しく熱いレース。それは同時に、私自身への挑戦の場でもあるのです。

 今の私は、以前の私じゃない。比奈姉が与えてくれた夢を現(うつつ)にした私なのだから、きっと、大丈夫。

アクセス数解析として、1週間ごとに日をずらして投稿してみることにしました。

次回は来週火曜日に投稿予定です。

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