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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第3章 魔法使いの聖地に来ましたが、大大大事件の予感です!
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繁忙期の宿探しが大変なのは、異世界でも同じようです

 分厚い門を潜り抜けると、広場を介して大通りに繋がっていました。大国とだけあって道幅が広く、車なら片側3車線で通行できそうです。

 そして魔法の聖地らしく、街中は警備の自立人形が歩き回り、街灯の代わりに光弾が一定間隔で宙に浮いています。


 立ち並ぶ店も魔法関連ばかり。杖や箒の専門店はもちろん、占星術や降霊術や仙術に至るまで、あらゆる魔法の類の専門店があります。

 どれもこれも興味をそそられますが、眺めるだけで日が暮れてしまいます。



「でも、空を飛んでる人は少ないですね。魔法使いの国だから、てっきり箒で移動する人ばかりかと思っていましたが」

「多分だけど、観光地化して非魔法使い相手の商売のために店を一階に移動させた結果じゃないかな」

「観光地化の弊害ってやつですか?」

「非魔法使いの国民にとっては歓迎すべき変化だろうよ。魔法使いにとっても、観光客で賑わって商売が繁盛するなら、そのくらいの犠牲は払う価値があるでしょ」

「さっすがフーリエちゃんです! 分かりやすい解説のおかげで知見が深まって、世界がより一層輝いて見えます!」

「わたしもそう思います!」

「それはどうも」



 素っ気なく言いながら照れが見え隠れするフーリエちゃんかわいい!!! 好きと大声で叫びたいですが我慢です! なので心の中で叫びます好き!!!!!!




 それにしても人が多いです。夏と冬に開催される即売会ほどではないですが、街の大きなお祭りくらいの密集具合はあります。

 ふと目についたポスターには『年に一度の祭典、始祖セレーネ・ゴドルフィン・ダイムラー生誕祭の前夜祭開催!』と書いてありました。本当にお祭りムードだったようです。

 しかし前夜祭といいつつ期間は7日間もあります。前夜って何だっけ。



「キツイ~わたし押しつぶされちゃいますぅ~……」

「そんな銃を背負ってたらそうなるでしょうよ。てか、それで入国審査通ったのが驚きだよ」

「銃は銃でも見たことない形だから、疑わしきは罰せずとして通してもらえました」

「それは裁判の段階で使う格言……まずは宿を確保しよう。部屋が埋まる前に」



 しかし残念なことに、大きな宿屋はどこも満室。空いているとしても相部屋だったり、風呂トイレ共同のフロアだったりで快適とは程遠いものばかり。空を飛んで探そうにも、大通りを埋め尽くす人混みの中では箒も取り出せません。なによりエリシアさんが置いてきぼりになってしまいます。

 数十件は回った挙句、行き着いたのは小さな宿屋でした。素泊まりですが、四人部屋で風呂トイレが個室で、最低限の要件は満たしてあります。

 ……が、いざ鍵を回して扉を開けると



「何なんですかこれは!! ベッドもテーブルも無い!!」



 なんとビックリ。お客自らが寝具を用意して寝泊まりする斬新なコンセプトの部屋でした。探しても薄いマットレスが四枚あるのみで、布団すらありません。これでは山小屋と変わりないです!



「どどどどうしますかフーリエちゃん………?」

「これは参ったな……エリシア、こういう時こそ錬金術で家具をポンっと作れないの?」

「錬金術はそんな便利道具ではありません! それこそ魔法で家具を出せないんですか?」

「大きすぎるから無理」

「肝心なところで都合が悪いですね……」



 寝袋はありますが、せっかくの宿で野宿と同じなのは頂けない。

 最悪、支払った宿泊費を犠牲にして別の宿にするのも考えましたが、歩き回ってクタクタです。フーリエちゃんもあくびをしながら腕組みして思案している始末。頭がバッテリー切れ寸前な証拠です。



「仕方ない。最低限、掛布団を用意してマットレスを床に敷いて寝よう。もし掛布団を買う最中で、状態の良い処分品のベッド見つかったら、それを拾ってくる。リラよろしく」

「え!? ひとりでですか!? 無理無理無理無理無理無理無理無理」

「えー行ってよお願い~」

「くっ、上目遣いかわいい……!! そうお願いされたら行くしかありませんね……」



 フーリエちゃんのあざとさに負けて、初めてのおつかい異世界編突入です。

 モトヤマ・リラちゃん17歳、きちんとお願いされた物を買って来れるかな?

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