入国審査とか無理! Help me,フーリエちゃん!
あ、どうも、リラです。かわいい魔女っ娘フーリエちゃんと、見た目だけ清楚系ドンパチ賑やかな変人エリシアさんと3人で、私の姉を探す旅をしています。
さて私達は最初の目的地である、魔法の聖地【コルテ】を目指していました。そこは、私の姉である本山比奈が最後に目撃された場所であります。次の手掛かりに繋がる情報が得られなければ、早くも詰んでしまいます。絶対に探し出さねば。
それはそれとして、フーリエちゃんが喜々としてコルテについて語ってきます。魔法のことになれば目が輝いて早口になって、笑みが自然とこぼれる。
オタク特有の語りと言われれば否定しづらいですが、好きを全力で語るのって素敵なことじゃないですか。それに訪れた国の歴史や文化を学ぶのも、旅の醍醐味なんですよ!
「コルテは魔法使いの聖地と呼ばれている。そして頂点に立って国を統治する長と、それぞれの分野で国の運営を行う、官僚的な立場の“コルタヌ六芒星”がいる。長とコルタヌ六芒星は魔法の始祖、セレーネ・ゴドルフィン・ダイムラーの血族でなければならない決まりがある。特に長の場合は直系である必要があって、今の長であるアルキオネ・エクリプス・ダイムラーも直系だけあって世界一の魔法の腕を持つ」
「スケールが大きすぎて想像がつかないです……」
「魔法が生まれた地なだけあって魔法の進歩も凄い。月火水木土の五属性だった魔法に、風と氷の属性を発明して7属性としたのもコルタヌの魔法使い。これが発端となって魔法革命が起きたのは歴史の教科書に掲載されている通り」
「ほ、ほへ……」
あぁ目をキラキラさせたフーリエちゃんかわいい。テンション上がって早口になってるフーリエちゃんかわいい、ときよりピョンっと跳ねる仕草かわいい跳ねるたびにふわっと髪の毛が浮き上がってかわいい直視できないっっ!
「こんなかわいさ反則でしょズルいっ……!」
「わかります……」
「あっ、え、聞こえてました……? 」
「ふふ、大丈夫ですよ。わたしとリラさんはフーリエさんの担当仲間じゃないですか」
うっ、心の声が漏れていたとは……同担とはいえ少し恥ずかしい……
のんびり箒を滑らせ、しばらくすると見えてきましたコルテの城壁が。遠目からみても威圧感が半端ない。通常攻撃が2回攻撃のモンスターが群れで現れた気分です。先制の猫だましで確定でひるむやつ。
いよいよ入国、なのですが地味に入国手続きをするのは初めてで心臓バックバクです。今までは訪れたのは大きな都市であり、国ではありませんでしたからね。
空港の審査場と同じでひとりずつ各レーンに入って、兵士から色々聞かれて不審人物でないと証明できれば入国という形のようです。
…………ああああああああ無理!!! 兵士怖い!!! 質問攻めされる!!! 最初にこの世界に来た時のトラウマ蘇る!!! 上手く喋れなくて怪しまれて牢屋にぶち込まれる!!! 誰かあらかじめ示談金の10万マイカぽんっとください……
「リラどうしたの。ちゃっちゃと済ませよう」
「後ろの人がつっかえますよ。さぁ」
「ピエッ……」
人の流れに押され、無理やりゲートに収められる競走馬のごとくレーンへ入ってしまいました。なんて事だ、もう助からないぞ……
「まずお名前を」
「モト、モ、モトヤマ・リラです……」
「職業は魔法使いですか?」
「そ、そです」
「では証明の為に、この魔導板に魔力を注いで頂けますか」
差し出されたのは、魔法陣が描かれている以外は変哲もない板でした。青に変化すれば証明完了と、無駄に大きく目立つ色でメモ書きがあります。こんな異世界でもクレーム対策があるとは……
「う、あ、あっ……」
「緊張しなくて大丈夫ですよ。リラックスして普段通りに魔力を出してください」
「は、はいぃ」
兵士さんは意外と優しい人でした。怪しまれたら強い口調で脅してくるイメージだったので、ほっとしました。
緊張もほんの少しほぐれ、普段通りに魔力を出すことができ、結果はもちろん青色。
「はい、ありがとうございます。では次に、入国の目的は?」
「あ、姉を探すためです……行方不明の」
「行方不明ですか。心中お察しします。そのような情報は冒険者ギルドに多く集まるようなので、立ち寄ってみてください」
「あ、ありがとう、ございます」
その後もいくつかの質問と持ち物検査を経て、最後にサインした入国証を貰って入国審査終了です。
担当の人が優しい人で良かったですが、それでも緊張しっぱなしでした。これからも国々を巡るのだから、ちゃんと慣れておくべきなんですが、いかんせん根がコミュ障なので慣れる気がしません……




