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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第2章 お金がすっからかんになったので、資金調達します!
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幕間 異世界のワープホール

 眼下には限りなく続く平原。

 見上げればよく晴れた空と、柔らかな春の日差し。

 後ろには、我が最推し金髪ぐうたら系天才合法ロリ魔法使いのフーリエちゃんa.k.a.(またの名を)オタク殺しの魔女。

 ……と、空飛ぶ箒を必死の形相で追いかける、白髪モノクルで背中にはマシンガンを背負った、見た目は清楚系ドンパチ錬金術師のエリシアさん。


 私達は比奈姉(ひなねえ)の唯一の目撃情報があった場所であり、そしてエリシアさん用の箒を手に入れるために魔法の聖地【コルテ】を目指している道中なのです。



「ま、待ってください~…………はぁ、はぁ、はぁ……」

「遅いよエリシア。この程度で付いてこれないんじゃ、この先が思いやられるよ」

「ズルいですって! そっちは箒で優雅な感じで上品に飛んでいらっしゃいますが、こっちは駆け足なんですよ!?」

「だからエリシア用の箒を入手するために、コルテに向かっているんじゃん」

「そーですけど、速度落してもらえませんか…………はぁはぁ……」

「ま、私も座り疲れてきたし、ここで休憩にしよ」



 箒を降りて、ピクニックのようにシートを敷いて休憩です。ちょうどお腹も空いてきた頃ですし、腹ごしらえをしてしまいましょう。

 私は以前のフーリエちゃんの手料理で、未知の領域を文字通り味わってSAN値が削られたので、今回は私が作ることにします。



「リラさんは料理が得意で?」

「え、えと、調理実習でやった程度、ですが」

「調理実習! 東洋の学校には、そんな授業があるんですね!」



 とは言っても小中学校までですが。高校生の頃は、週に2日とテストの日しか登校してませんでしたから、本格的な調理実習なんてやったことありません。

 第一、コミュ障にグループで料理作れとかキツいジョークです。小中は先生と一緒にやってたほどですし……


 ともかく、広い草原でピクニック気分とあらばサンドイッチ以外にないでしょう! 作るのも簡単ですし。

 まずは魔法特有の便利異空間からまな板とパンを取り出して、パンの耳を護身用に買っておいたナイフでカット。用途が違う? 細かいことは気にすんなです。


 耳は別で使うのでとっておくとして、次にチーズとレタスとハムを取り出してカット。パンに挟んで対角線に切ったら一つ目のサンドイッチ完成です!

 同じように、今度は具材をベーコン、レタス、トマトに変えたらBLTサンドの出来上がり。具材を変えるだけで豊富なバリエーションが作れるサンドイッチ、便利。



「パンの耳ちょうだい」

「フーリエちゃん待ってください。これもお菓子にしますから。っと、油って持ってたりしますか?」

「あったような気がする……ほら出てこい出てこい、あっ出た」



 フーリエちゃんが棚の奥を漁るように杖を振ると、ポンっと瓶詰めの油が出てきました。動作の何もかもがかわいいなぁ……!!!

 油を鍋に注いだら火にかけて、温まったらパンの耳をイン。適当に揚がったら油を切って、砂糖をまぶしてパンの耳ラスク完成です!



「へえこんな使い方もあるんだ。うん、サクサクでおいしい」

「ありがとうございます! えへへ、フーリエちゃんに褒められちゃった…………」

「サンドイッチもおいしいです! こういう簡単な料理ほど、腕が試されたりするんですよねえ」

「そ、そこまで褒められるほどでは……」



 と、フーリエちゃんが「これかけたらおいしいかな」と例のソースを出してかけました。相変わらずの淀んだ色で食用が衰退します。



「フーリエさんそれは一体? 中身はなんですか」

「知らないほうがいいです」



 興味津々なエリシアさんを留めることができました。ちゃんと止められた私、えらいぞ。

 どんな料理も無味に変えるSAN値直葬ソース、アレの被害者は私だけでいいんです……


 そんな風にワイワイしたり、話の輪に入ったり入れなかったりしてランチタイムは終わりました。

 片づけて出発しようとした時、ドン! という大きな音と共に地面が揺れました。見れば少し遠くに、巨大な何かが落ちています。砂煙も上がっていて、その巨大さが見て取れます。

 フーリエちゃんが困惑と驚愕が入り混じった声を漏らしました。



「あれは、噂のワープホール? 実際に見たのは初めてかも」

「わたしが拾った銃も、こんな平原でした」



 確かグノーシのダンジョンでエリシアさんに出会ったときに聞きました。別の時代と繋がっていて、過去の文明の遺物や、遠い未来の産物が落ちてくる場所があると。

 非常にワクワクする話でしたが、こんなに早く目にすることができるとは! これは行くっきゃない!



 近づくと、落ちてきた物の大きさは想像を遥かに超えていました。

 引っ越し業者のトラック3台分は超える全長と高さ。台形で長い筒が2本生えています。見た目は大砲のようですが、車輪が無くて固定して使う物のようです。

 ここまで大きいサイズの大砲、一体どんな場面で使うのでしょう? ドラゴン用とか?

 さらに大砲の陰には、ボールペンが巨大化したような形の筒が転がっていました。あれ、どこかで見た覚えがあるような…………?



「デカイ……何なんですか、これ」

「分からない……大砲に見えるけど、過去にこんな物は無かったはず。固定砲台にしては、可動域と思わしき部分の範囲が狭い」

「もしかして船に載せたり?」

「まさか。艦載するには大きすぎる」



 その言葉で思い出しました。確かテレビや教科書で見た戦艦の大砲は、こんな形をしていました。

 そして筒は恐らく魚雷。それならば巨大さにも説明がつきます。

 でもどうして? なぜここに? 更に厄介なのが、これもまた確証を得られない物であるということです。


 グノーシのダンジョンで見つけた、アラビア語らしき文字で書かれた本。そして目の前にある砲台と魚雷。

 これらが私の元いた世界の物だとしたら、ワープホールによってこの世界と元の世界が繋がっているという仮説を立てられるのです。

 しかし私にはアラビア語についても、砲台も魚雷についても、本当に元の世界の物と断言できるほどの知識がありません。テレビや車だったら分かりやすいのに…………



「噂通りの謎だね。何処からともかく落ちてくる割には、時空の揺らぎを感じない。たまたま隙間から落ちてきたかのような、その隙間の先が別の時間軸の世界か、はたまた別世界なのか」

「わたしの銃のように、既存の技術が発達した物も落ちてますからね。悪用する人も必ず出てくるでしょう。拾われたのがわたしで良かったですね、スカルチノフ」

「それそんな名前だったの」

「今付けました」



 ……もし本当に、この世界と元の世界が繋がっているのならば。比奈姉はこの世界に“落ちて”しまったのでは?

 それは完全なる異世界転移であり、私の異世界転生とは違う形でこの世界に誘われたということ。もしこの仮説が正しいのならば、比奈姉が一切の証拠も残さずに消えた理由も、筋が通る気がします。

 加えて、比奈姉は本気で異世界に行く方法を考えていたのですから、このワープホールを発見して自ら飛び込んだ可能性もある。さらに、ワープホールが比奈姉の開けたものの可能性だって…………



「……絶対に、絶対に見つけ出さないと。この世界の基盤に関わる謎を、比奈姉は知っているに違いない」

「ずっと考え込んでどうしたんですか」

「あ、と、いえその、比奈姉について、考えてて……」

「ワープホールから情報を得られたんですか?」

「えっと、確証は、ないですが」



 はあ、まだエリシアさんとの会話に慣れません。目線も泳ぎまくりなのが自分でも分かります。仲間なのに、なんと情けない話。

 実のところ、自分のコミュ障については半ば仕方ないと諦めているんですよね……でもさすがに、仲間なのにフーリエちゃんとしかマトモに会話できないのはいかがなものか。

 エリシアさんと普通に話せるようになる、これが早急な課題でしょうね。



「ま、ともかくコルテに行かないと。今はそっちが優先だよ」

「そうですね。比奈姉がコルテから出てしまう前に行かないと」



 謎は深く広がるばかりですが、それもこれも比奈姉を見つけなければ解明されません。

 比奈姉と再会できたら失われた三年間を取り戻せる。そして世界の謎が解明される。


 比奈姉とコルテで再開できることを強く願いながら、箒を再び飛ばすのでした。

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