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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第2章 お金がすっからかんになったので、資金調達します!
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コミュ障にとっては気が合いそうな人でも、会話するのって難しいんです

 外は日が沈み、街が夕焼け色に染まっていました。そんな街の中で宿を探しながら歩いていると、後ろからフーリエちゃんを呼ぶ声が追いかけてきました。振り返れば、こちらも夕焼けに染まったエリシアさんが、手をブンブン振りながら向かってきます。



「フーリエさんフーリエさん!」

「げ、錬金術師!?」

「そんな怯えないでくださいよ~これから一緒に夕食どうですかというお誘いだったのに」

「え、嫌。リラもそう思うよね?」

「わ、私でよければ、ぜひっ!」

「ウソでしょ……」



 実は同じフーリエちゃん好きとして、少しお話してみたいと思っていたんです。変人ですが。

 しかし、じっくりと話すタイミングを逃してしまって心残りがありました。こうしてエリシアさんから誘ってくれたのなら断る理由はありません。 


 早速フーリエちゃんも引き連れて、エリシアさんオススメのレストランに入りました。

 椅子が酒樽になっていて、ジョッキがカウンターに大量に並んでいるので居酒屋のようですが、メニューはおつまみ以外も豊富でソフトドリンクもあります。ちょっと居酒屋色が強いですが、普通のレストランのようで安心しました。


 テーブル席につくと、エリシアさんは開口一番「どうしてそんなにフーリエさんは可愛いのですか?」などと投げかけ、「いや知らない」とフーリエちゃんに返されました。言葉のドッジボールですね。



 エリシアさんが尋ねました。



「フーリエさんは魔法使いなのですか?」



 フーリエちゃんがメニューを眺めながら返答しました。



「逆に魔法使い以外の何に見えるの」



 エリシアさんがフーリエちゃんからメニューを受け取って尋ねました。



「フーリエさんはどこの出身なのですか?」



 フーリエちゃんがテーブルに指で円を描きながら返答しました。



「この世界」



 エリシアさんが私にメニューを渡しながら尋ねました。



「フーリエさんは何歳なのですか? あ、リラさんには牛肩肉のスパイスステーキおすすめです」

「あ、じゃあそれで」



 フーリエちゃんが定まらない視線で返答しました。



「17。あと贅沢ソースのキノコサラダも。一人は多すぎるからリラにも半分あげる」

「は、はへ、ありがとござますっ!」



 ……あれ、途中からボールが増えてませんか? てかフーリエちゃん17歳なの地味に初耳です。同い年とは親近感もっと感じちゃう……

 店員さんを呼んで注文が終わると、急に沈黙が流れました。このパターンは会話のデッキを使い果たした状態ですね、コミュ障なので分かります。会話とはターン制バトルなのです。どちらかが話題のデッキを使い果たした瞬間、沈黙は発生するッ!

 こうなれば私もカードを切るしかない! そもそも最初からエリシアさんと話すつもりだったし!



「え、エリシアさんは錬金術師とのことですが、釜とか、持ってないんですか?」

「わたしは旅する錬金術師なので、釜は借りて錬金してます。専用釜も使う人もいますが、わたしは汎用性を重視して、特殊な錬金液を使えばどんな釜でも錬金ができるようにしています」

「じゃあ、ポーションとかも作れるのですか?」

「ポーション用の錬金液に変えれば可能です。ただ、わたしは普通の鉱石を金に変える研究が主なので、よく想像される錬金術師の姿とはちょっと違うかもしれません」

「なるほど! 原義の錬金術ですね!」

「その通りです! ご存じの方がいて嬉しいです。本来は普通の鉱石を金に変えようとする試みが錬金術なんです。ポーションだったり食品まで作るのは研究課程での副産物であって、それが錬金術のメインではないんです! 錬金術師は不思議な釜を混ぜて何でも作る職業と思われがちですが、全くの別物なんです!」



 モノクルの奥にある紅の瞳が輝いています……! 魔法を語る時のフーリエちゃんと一緒です……! やはり好きなものを語ると人間はキラキラ輝くのですね! オタク特有の早口、私は嫌いじゃありませんよ!

 と、話を聞いていたら料理が運ばれてきました。フーリエちゃんは赤ワイン煮込みのビーフシチュー。私はオススメされた牛肩肉のスパイスステーキとフーリエちゃんと分けて食べる贅沢ソースのキノコサラダ。エリシアさんはチーズステーキサンドイッチが三つにビール五杯。



「いただきます」



 一口サイズに切って口に入れると、その瞬間に強烈なスパイスのパンチが炸裂します。しかし牛肉の旨味をしっかり引き立てていて、主張しながらも調和が取れています。誰とでも仲が良い陽キャみたいな味です。

 贅沢ソースのキノコサラダも、名前の通り濃厚なソースがたっぷりで、野菜とキノコと相まってサラダなのに謎のパンチ感があります。要は全体的に味が濃く、お酒と合いそうな味です。



「そういえばエリシアは錬金術師なのに、なんで旅をしてるの?」



 今度はフーリエちゃんがエリシアさんに尋ねました。きちんとスプーンを置いてから口を開く仕草は、フーリエちゃんが貴族出身というのを思い出させます。「かわいい……」と、私とエリシアさんの声が重なりました。



「最初は店を経営するつもりで家を出たんです。ポーションとか食品を作り、店で売って研究費用を稼ぐ計画だったのですが、途中であの銃と出会ってしまいましてね。使い方が分かって無双できると知ったら、もうクエストだけで生活できると気付いたんです。だから今は店舗経営は後回しにして、自由にやってます」



 エリシアさんはぐびぐびとビールを飲み干して、続けざまに3本目に突入。アニメでしか見たことない速度です。エリシアさんとは気が会いますが、人間としては反面教師としましょう……私はエリシアさんみたく酒には溺れたくないです。お酒は17から飲めるんですから~とか言ってますが無視。鋼の意思。



「フーリエさんリラさん! わたしを旅のお供にしてください!」

「ゲッホゲホゲホ!!!」



 エリシアさんの唐突すぎるお願いにフーリエちゃんがむせました。話が90度直角ズドンです。まぁ酔っぱらった勢いだとは思いますが……



「ま、まあいいよ」

「え!? いいんですか!?」

「どうせ酔った勢いで言ってるだけ。明日には忘れてるよ」

「むう、そうですか……」



 フーリエちゃんが小声で言うにはそういうことらしいですが、私には違う予感がするのです。それはそれとして、フーリエちゃんの小声が凄まじくかわいかった。なんですかその美少女ボイスは、耳が幸せになりすぎてフーリエちゃんボイスにガチ恋しちゃいますよ私の耳が。


 そんなこんなで、食べ終わるころには泥酔しきったエリシアさんは置いて宿に泊まりました。さてはて明日はどうなることやら……

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