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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第2章 お金がすっからかんになったので、資金調達します!
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コミュ障に友人の友人を会わせるのは非常に気まずいので、お止めください

「聞き慣れた声だなぁと思ったらサンバーか。リラ行くよ、こいつと関わるとロクなことない。厄介だ」

「厄介とは失礼な。私は誠実な記者ですよ。しかしフーリエさんがこんなところにいたとは。お父様はプッツンでしたよ。早く帰ったらどうです?」

「あのね事情は話したはずだよ。私は絶対帰らない」

「分かってます冗談です。ですがフーリエさんがお仲間を連れているとは予想外です。もしかして彼女さん?」



 サンバーという人から目線を向けられ、思わず後退りしてしまいました。フーリエちゃんの彼女と見られているのも相まって非常に恥ずかしいです。でもフーリエちゃんの彼女…………悪くない、むしろそんな関係にも………………



「んなわけない。リラは私が齧る脛だよ」

「犬が噛む骨みたいな言い草ですね」



 フーリエちゃんその言い方はちょっとひどい……でも嫌いじゃない!



「ああごめん紹介するね。これはサンバー・レスター。私と同じ魔法学校の同級生でサンバーは短期生だった。確か、親が事業として手掛けてる新聞社で働いてるんだよね?」

「その通りです。企画会議で都市伝説特集を組むことになりまして。新しい挑戦に是非とも参加させて下さいと手を挙げたんです」

「本音は?」

「都市伝説なら真相もクソも無いので、適当に書いても文句言われんので楽だろうなって」

「ほらねロクでもない」



 私は愛想笑いしかできませんでした。サンバーさんは言うなれば友達の友達。コミュ障のトラウマもいいところです。「以後お見知りおきを」と挨拶を受けましたが、気まずすぎて逃げたい。



「そういう訳なので、この依頼で派遣される人材こそ、このサンバー・レスターなのです。実力はフーリエさんなら知ってますよね」

「リラの護衛なら充分勤まる。実力は信用できるよ」

「え〜フーリエさん行かないのですか? 久々の再会でもありますからフーリエさんも行きましょうよ」

「嫌」



 完全に私は蚊帳の外です。この二人に割って入る隙がありません。“一緒に過ごした時間より中身の濃さ” とも言いますが、こんな場面では長い付き合いの方が有利に決まってます。私はまだフーリエちゃんに、後方ナントカ(つら)できるほどの関係性を築けていませんし。

 

 てか依頼を受けるのが確定事項になってませんか!? 正式に受けるなんて一言も言ってないし、友達の友達と仕事とか気まずい空気で窒息死します! 全くの他人の方がまだマシです!

 やっぱり止めです! 別の方法を考えましょう。他の場所に行って依頼を探しましょう、そうしましょう。



「なら報酬を1.5倍でどうでしょう? もちろん成果による追加報酬も有りで。ぱぱぱっと上に直談判すればやってくれます」

「1.5倍って相変らず攻めるね。追加報酬もアリと考えると、後ろをついて行くくらいの価値はあるのかな……でも冒険者ギルドの登録必須はどうするの。ギルド側で定めた縛りでしょ、これ」



 そうですそうです! この依頼は冒険者ギルドへの登録が必須! 私とフーリエちゃんは旅人であり、ギルド加入はしません! ほら、やっぱり受けるのは無理なんです!



「すいません受付の方。自分は冒険者ギルド所属なんですが、それで通して貰えますかね? これ会員証です。サンバー・レスターの名前ありますよね」

「本来は受注する側に必要なので、サンバーさんのように依頼側では適応されないのですが、今回は例外として許可しましょう」



 あ、許可されちゃうんですね。あは、あはははははは…………。えっと、フーリエちゃんを取られないように睨みを効かせておくべきですか? それとも途中からこっそりフェードアウトします?

 というか、しれっとフーリエちゃんも乗り気になってませんか!? 働かない宣言してましたよね!?



「元の10万マイカが15万マイカ、加えて成果報酬で更なる稼ぎが期待できる。リラ、任せたよ。私はのんびり後ろをついて行くから護衛頼んだよ」

「は、はひ…………」

「リラさん、改めてよろしくお願い致します。全力でサポートさせて頂きます」

「任務ヲ完遂デキルヨウ全力デ参ル所存デゴザイマス???」



 もう無理。帰りたい。自分で自分が何を言っているかすら分からなくなってきました。ガチガチの社会人相手に会話とかできっこないです。社会が怖いっ!

 しかし残酷にも頼みの綱はことごとく切れてしまい、諦めて依頼をこなすしかなくなりました。腹を括りましょう。括りすぎて腹が無くなりそうです。


 「誓約書に署名を」 と受付の人から言われ、フーリエちゃんとサンバーさんに連なって私の名前を書きます。

 危うく漢字で書きそうになりましたが、逆にこの世界の文字もスラスラと違和感無く書けました。例えるならローマ字で名前を書く感覚と一緒です。この言語で書くと決めてしまえば無意識でも書けてしまいます。


 ペンを置いて書面を眺めてみると、フーリエちゃんの字は達筆で、まるでニュースで見た女王陛下のサインのようです。上品で美しく、サインそのものが芸術品のよう。確かフーリエちゃんは貴族の出身と言っていたので納得です。

 サンバーさんは丁寧でお手本のような字体。ボールペン字講座の教科書に掲載できそうです。一方で私のは……なんだ、このガックガクした文字は……左手で書いた覚えはないですよ……



「さあ獲物は急げです。案内しますので早速向かいましょう」

「その前にお腹すいた。ご飯」

「そ、そういえば街に着いてから何も食べてないですね。どど、どこかで食事してから向かいましょうか」

「賛成です」



 やった。ようやく話に切り込めました。

 コミュ障でも、フーリエちゃんとの会話の主導権を握られっぱなしは悔しいです。フーリエちゃんはこの世界でまともに会話できる、唯一の存在なんですからね!

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