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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第6章 蒸気都市で、便利屋として走り回ります!
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逃げるんだよォ!

「動くな!! 大人しく降伏しろ!!」



 突然、防具を着込んだ兵士が部屋の中に入ってきました。憲兵に比べ派手な装飾と目立つ紋章。一目で近衛兵だと判断できました。彼らが突入してきた理由は既に理解できています。

 脳内が高速で逡巡します。強行突破するか、逃げるか、交渉するか、それぞれの選択肢の欠点は? その先は? 様々な選択肢が浮かんでは消えていきました。



「その獣人を渡して貰おう。そうすれば他の事は見逃してやる」



 その言葉から推し量るに当然ながら私達のことも敵と見なしているようで、しかし近衛兵の向ける視線は全員が全員、彼らの言う獣人へと集まっていました。

 フーリエちゃんとエリシアさんは臆することなく進み出ます。エリシアさん銃を構え、真っ向からの対立姿勢を見せながらフーリエちゃんが近衛兵らに問いました。



「どっから聞いてたの?」

「質問する権利は無い」



 分隊長は食い気味に質問を返し、諦めたように目を伏せて首を横に振りました。



「安全なカードを選んでる場合じゃなさそうだね。窓から一斉に逃げるよ。それしかない」

「聞こえているぞ」

「瞬発力はこっちが上だよ?」



 フーリエちゃんが手から何かを投げた瞬間に辺りは真っ白な煙に覆われました。近衛兵の怒声がつんざくほどに響く中、「こっち!」との指示に従い一目散に逃げ出しました。



「クソ! 窓だ! 窓から出た!! 追え!!!」

「簡単に引っかかるな。1階に人が出られる窓はないって。裏口から出るよ」



 裏口から出ると中庭のように囲まれた3メートル四方程度のスペースが現れました。

 地面に不格好にはめ込まれた扉もあり、まさかそこから逃げるのでしょうか。



「これは建設途中の地下水道に繋がる扉。ルーテシアが街の行き来に使ってた通路でもある」

「こだとこあったのかい。どおりでルーテシアおったて聞かね訳だない」

「早く入ろう」



 蓋を開けて梯子を伝って降ります。深さは3メートルほどあるでしょうか。狭さも相まって高所恐怖症だと数字以上に怖く感じるかもしれません。

 降りた先では川のように水が流れ、その両脇を通路が走っていました。点検用の明かりも灯されていて、これならスタンレーの各地へ容易にアクセスできるのも腑に落ちます。

 水の音も足音も声も反響して耳に届きます。



「この水道は建設途中。地中にパイプを埋めて川から水を引いて流しているだけ」

「茶色に濁ってて落ち葉とか草もある。飲んだら死にそうな水質ですね」

「じゅる、ペェェェッ!!!!」

「言ってる傍から何をしてるんですか……」



 何をどう見ても飲めるワケ無い水をエリシアさんは口にして、そして吐き出していました。見ているこっちが気分悪くなりそうなんですが。



「いやぁつい興味本位でオエーー!!!!」

「うわぁ…………」



 その場にいる全員がドン引き。まるで白目で嘔吐する鳥のアスキーアートのよう。いくら容姿端麗でも限界ってあるんですね。

 エリシアさんを最後尾においで別の離れた区域まで移動します。



「どこへ向かう」

「20番地には繋がってる?」

「ある。こっちだ」

「フーリエちゃん。移動するのはいいですが、この先はどうするんですか。もう店には戻れないでしょうし」

「心配することはないよ。私の見立てでは近い間にセンチュリー家はクラウンロイツ家に取って代わられる」



 どうこと? と首を傾げると、箒に乗ったフーリエちゃんは2本指を立てて説明します。



「件の盗聴器で最初からルーテシア、つまり静寂従順な死神の存在を使って主権を取る計画だったのが判明した。そして両家当主による直接交渉。ここまで来れば主権交代秒読み。クラウンロイツ家としては計画通りと、今頃ゲス顔をしているはず」

「では私達は、最初から操られていたってことですか」

「店主姉妹が本家に戻った段階で私達はクラウンロイツ家に協力せざるを得ない状況にはなったね。ただ盗聴器が仕込まれていたということは、互いに互いの状況を見極めながら動いていたという意味でもある。単なる操り人形とは向こうも思ってないだろうね。まぁ途中からセンチュリー家の方へ線が繋がれてたけど」



 フーリエちゃんは立てた2本指を1本指にして再び言葉を繋げます。



「そしてもうひとつは……これからその最後のひと押しに行く」

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