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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第6章 蒸気都市で、便利屋として走り回ります!
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頭を銃弾で打ち抜くか如し真相

 フーリエちゃんのセリフに情報屋がぽかんと口を開けて固まりました。私もエリシアさんも同じように信じられないという気持ちで固まりました。


「死神について何も知らないというのは嘘。知らないフリをして接触して、私達にも死神とクラウンロイツ姉妹は無関係と印象操作している」

「それってつまり……」

「あの姉妹はルーテシアと共犯だよ。彼女が静寂従順な死神の正体であり、クラウンロイツ姉妹は彼女の正体を隠している。その証拠に、隠し部屋と地下通路へと続く扉も見つけた」

「そういえば不思議でした。孤児だったのを引き取ったのなら一緒の家で住んでいるはずなのに、全然見かけないので」

「彼女の部屋はメフィの部屋のクローゼットの奥だった。衣類は畳んであるか壁掛けフックに掛っている、分かりやすい違和感で突き止められたよ」



 どうやらフーリエちゃんは私達がいない間に物色していたようです。フーリエちゃんはちゃっかりしているというか、洞察力が並外れているというか、ホント凄いです。凄いとしか言葉が出ません。好き。

 情報屋が厨房から身を乗り出しながらフーリエちゃんに詰め寄ります。



「だげんども、騙されてるっちゃより、何もしゃべっちゃくれねがっだんだよ。ただ引き取ったとだげで、他なんもいわっちぇね」

「情報の絶対数は少ない方が有利に決まってるからね。そして唯一の情報源であり提供者がそう言うなら嘘でも信じるしかない。真実を得る為には本拠地に乗り込むしかないけど、それはもうスパイの仕事になっちゃう」

「おまげにあね様らは貴族で、それを嘘こがね(つかない)でやってるべ。隠し事したら糾弾されるのが分がってんだがら、そだことねと思い込んでたんだない」

「そうだね。あまりに大きすぎるリスクを背負うはずが無いと、無意識に先入観を利用された。元貴族で、しかも今も家名をそのまま名乗ってる姉妹が、連続殺人犯を匿っているなんて誰が想像できる?」



 意表を突かれた、とは正にこのことでしょう。想像のつきにくい推理だけど、目撃情報の少なさと一緒に住んでいるはずなのに帰ってきている気配が無いことと辻褄が合ってしまいます。

 おまけに私とエリシアさんで最初に目撃した時、ルーテシアさんは建物の屋上から飛び降りて現れ、屋上へ飛び登って去りました。それほどの身体能力があるなら、誰にも目を付けられずに移動するのは容易でしょう。

 情報屋はカウンターに出てきて腰を降ろし、がっくりと肩も落として溜め息をつきました。



「はぁ~なんだべ参ったなぁ。情報屋としてかっこわり(恥ずかしい)な。こんでは詐欺に引っ掛かる年寄りみてだべ」



 話し方は老人ぽいのですが、言わないでおきましょう。



「ねっからルーテシアは尻尾も出さねから手を焼いてたんだ。でしがし、隠し部屋の他にも何かあんでねのかい。決定的な証拠」

「あるよ。フィルトネから遠回しにルーテシアがやってることについて言われたんだ」

「「直接!?」」



 衝撃的な発言に私とエリシアさんの声が重なりました。知らぬ間に機密情報を入手しているフーリエちゃんが少し恐ろしく感じます……



「フィルトネが自分らの立場について話してくれた。私は、『それは君が決めたことだから口出しはしない』と返した。そうしたら、『それが人を殺めることだとしても、ですか?』って。そうして出された紅茶が黄色の百合とルドベキアが飾られたパセリのハーブティー。それぞれの花言葉は偽り、正義、死の前兆。それらから想像できることは、もう分かるよね?」



 つまり店主姉妹も自殺を望む人への自殺ほう助は正義であると認識しているということ。一方でそれは偽りでもあり、ルーテシアさんを守るための偽りでもある……死の前兆?



「フーリエちゃん、それを聞いたのはどのタイミングでしたか」

「確かリラが落ち込んでるような気がして七草粥を勧めた時」

「そんな落ち込んでるように見えたんですか……? というより、そのタイミングって!?」



 エリシアさんの方を見やると、彼女もこくりとうなづいて私の言葉を継ぎました。



「遺体を見つけたタイミングです。つまり殺害予告だった……?」

「かもしれないね。ただフィルトネの言い草から察するに、私達への挑戦状や警告の類では無いと思う。爆弾級の秘密を打ち明けて、答えのある問を投げかけてきたのだから。仮に敵対心があったとして、スキャンダルを天敵とする貴族が自分から敵にネタを提供すると思う? 」



 その場にいた誰もが静かに首を横に振りました。

 数秒の沈黙が流れ、情報屋が重々しく口を開きました。



「だげんども、わが(あなた)らはどうすんだ」

「店の鍵を返してこの件から手を引きたいけど、2人の居場所が分からないからこっちもルーテシアを追うつもり。そっちも知らないの?」



 情報屋は再び首を横に振ります。



「信憑性に欠けるのなら、なんぼかあっぺけど。あの姉妹も今までみてに自由にはしてくんねくなったんだっぺな。捜査局には、2人の名前出してもダメか?」

「ダメだから来たの。情報が無いならお暇するよ」

「なら作り置きもってけ。体きいつけて。あんがとない」



 情報屋が渡してくれたまかないを片手に店を出ました。

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