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勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い  作者: 網野ホウ
エピソードゼロ:三波新、放浪編

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ここも日本大王国(仮) その7

「……救出についてだが、剣士と弓使いの少年。魔法担当の少女二人の四人。そしてダークエルフ一人の五名」


 旗手がどう動こうと、こっちには関係ない。

 協力の申し出はあったが、知ったこっちゃない。

 いくら魔物に有効打を出せる力があろうとも、信頼に足る相手じゃない。

 それよりも、俺に無償で協力してくれる並みの冒険者達の方がはるかに頼りになり、心強い存在だ。

 そんな二十人は、モーナーが掘った地下のダンジョンの内部のことは全く知らない。

 かく言う俺もそうだ。

 とりあえず、要救助者の五人の特徴を伝えた。


「分かった。あとは地下のダンジョンがどうなっているかだが……」


 その説明はモーナーが適任なんだろうが、体の痛みと格闘中のこいつにはそれは難しい。


「え、えっと、それについては……こっちと向こうの入り口がつながってて、通り道はその道から枝分かれしてて、全部行き止まりです」

「枝分かれした道は行き止まりまで一本道です」

「下に行く階段も二つあって、上に行く二つの階段を繋ぐ通路を単純に説明すると、十文字の形になってます」

「でもうねっていたり、交差点が広場になってたりしてて、階層によってその形状は違ってました」

「エージさん達が足止めしているのは地下二階です」


 新人で未熟な五人の冒険者からの証言は、大雑把だったが要領は得られた。

 あとはどうやって進むかだが。


「俺もたまに何度か入ったことがある。分かれ道の間隔は覚えてる。こいつぁノロマだが間抜けなことはしねぇ。下へ下へと掘り進めてるようだが、その上の階層を後で広げたりするようなことはしちゃいなかった。灯りさえありゃ案内できるぜ。ましてや地下二階程度なら安心してくれていい。そこの、片手骨折してそうなおにぎり作りよりは役に立つ」

「な……あ、あんた……」


 新たに一人、俺の洞窟にやってきた人物は……。


「ドーセンさん! 何その格好!」

「昔取った杵柄さ。ちょいとばっかり冒険者やってたことがあってな。防具のサイズが合わねえかもしれねぇって思ってたが……こいつだきゃ現役と変わらねぇな。つけてる俺はさびれちまったかもしれねぇがよ。ははは」


 普段のみっともない恰好よりは……意外と様になってる。


「なら作戦立案と実行は私達に任せて、アラタも……モーナーさん? も休んでなさい。ヨウミちゃんもね。そこの新人五人」

「「「「「はいっ!」」」」」

「アイテムとか術とかで、三人の回復に専念しなさい。分かったわね?」

「「「「「はいっ!」」」」」


 連れて来た二十人の一人が指示を出す。

 百戦錬磨の経験者達に任せても問題ないか?

 だが、俺だってゆっくり体を休めるわけにはいかねぇだろ。

 モーナーもマッキーも体張ってんだ。


「こら、アラタ」

「あ?」

「あんたが現場に出たって何の役にも立たないよ」


 ……どこの誰かは知らねぇが、役立たず呼ばわりは聞き捨てならねぇぞ?


「そうそう。アラタは俺達や中にいる連中に食わせて回復させてくれるおにぎりを作ってくれりゃいいんだ。それさえあれば、何の文句も言わねえよ」


 ……こいつら……。

 まぁそれもそうか。

 あの職場ではミスはたくさんしたが、足を引っ張られたこともたくさんあった。

 あの時はごめんなさいですませられたが、こいつらは自分の命もかかってるんだ。 だったら俺が


「ということだからヨウミちゃん、この人におにぎりたくさん作らせといてね? それだけは右に出る者はいないんだから」


 それだけはって……。

 余計な一言付け加えんな。


「そんなこという奴には、次に買いに来た時には三倍の値段で売ってやる」

「アラタ! こんな時にそんなくだらないこと言って、無駄な時間取らせないの!」


 癖って怖いな。


 ※


 救出作戦は、隣のラーマス村から連れて来た冒険者達とドーセンに任せた。

 彼らが出発して三十分は過ぎたか。


「現場に必要な人間って確かにいるよ? でも現場にいなくても、待ってる人がいるだけで頑張れるってこともあるのよ」

「作戦本部長とか、な。動かずにじっとしてもらうだけで役目を果たしてる奴もいるのさ。いいからここで吉報待っとけ」


 こんなことを言われたが、実に落ち着かない。

 泉現象の現場を初めて目の当たりにしているせいか。

 あいつらの生命保険とかあるんだろうか?


「なるべく早めに帰ってきてほしいな。具体的な依頼料の話させてくれなかったしな」

「え? 決めてなかったの? どうすんの? 荷車新調してからそんなに蓄えはないわよ? 国からは報酬貰える話は聞いたことはあるけど」

「お、俺も手伝うよお。頑張って働いてえ」


 回復魔法をかけてもらっているモーナーの骨折は、全く回復の気配は見えない。

 けれど、痛みは和らいできているようだ。

 でもそれ、まずくないか?

 完全に痛みは消えても、骨は折れたままだろ。

 それに……。


「仲間ってお前、お前はここに来る初級冒険者達のガイダンスの仕事があるんだろ? 俺達の仲間なんてやってる暇ねぇだろうが」

「でもアラタぁ、俺のことお、仲間って言ってくれたぞお」


 ……はい?

 言ったか?

 いつ言った?


「覚えてないんですか?」

「感情的になると、冷めるとその時になると忘れること、あるよね」

「アラタさんも例外じゃなかったんですね」


子供な冒険者からも言われた。

なんなんだ。


「覚えてないの? ……まぁ、いいけど。思い出したり教わったりしたら身もだえするんじゃない? アラタ」


何か遠巻きに見られる腫れ物になった気分だ。

いや、そんなことよりも。


「……まだ誰も戻ってこないのな」

「うん……。テンちゃんとライム」

「やめろ。あいつらがそうとは限らんし、そうだとしても俺達の願いを聞く義理すらない」

「そんな……」


意外な戦力のドーセンが加わって、明るい兆しが見えたような気がした。

が、目に見えて明るい状況が見える気はしない。

せめてモーナーが無傷だったら。

……いや、そんな他力本願は止めよう。

そもそも俺に、戦力になる能力があったなら。

こんなことを考えたって、現実には何の意味もない事なんだが。


「で、でも、アラタいてくれて助かったよお」


まるで俺の考えてることを言い当ててるみたいだな。

一瞬変な汗をかいた。


「だって、アラタがいなかったらあ、味方をたくさん連れて来れる人いなかったぞお」

「あ……それもそう、ね……。すっかり忘れてた」


おいこら、ヨウミ。

だが、能力以外でも、考えりゃできる事も見つけられるってことだよな。


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ジャンル別年間1位になりました。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる~


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