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勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い  作者: 網野ホウ
エピソードゼロ:三波新、放浪編

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リクエストに応えてみよう と思ったんですが その1

 さて、この世界で腰を据えることに決めたわけだが。

 となると、客からの要望にも本腰を入れて取り組んでみよう、と考えてもいる。

 今後の方針を新たに決めた時間帯が、気持ちよく起床してすぐってのは、今日一日何かワクワクしそうなことがありそうって気がする。

 けど、まるで子供じゃねぇか、と思わず自分のことを鼻で笑っちまった。

 身支度を整えていつでも出発できるようにしてから朝ご飯。


「……で、ライムが防具になってくれるなら、多少危険なところでも足を踏み入れることはできる、と考えたわけだ」

「誰が?」

「俺が」

「その間、あたしはどうしよう?」


 考えてなかった。

 ヨウミは、どの方面から危険が迫ってくる、だなんて分かりはしない一般人だ。

 まぁ俺も、それが分かる程度の一般人だが。

 つまり、俺がいない間、ギルドや王族の接近を許してしまう可能性がある。

 それでも連中なら、話せばわかる可能性がわずかでもある分ましな相手だ。

 魔物が近寄って来て、ヨウミがそれに気付かなかったら?

 いや、接近してくる者が毒蛇程度でも危ない。


「どうしよう?」

「いや、あたしがアラタに聞いてるんだけど? それにその目的にも問題があると思うんだけど」

「問題?」


 俺の作るおにぎりやそのセットを冒険者達が求めている。

 それに応じることのどこに問題があるのか。


「ダンジョンとかに行くんでしょ? 荷車どうするの? 引っ張っていくの?」

「そりゃもちろん」

「アラタがこの世界に来たときの、建物のようなダンジョンばかりじゃないんだよ? 自然の中で生まれた洞窟の中なんかは、足場はでこぼこで狭い道もあったりして。入ったはいいけど出られないダンジョンだってあるかもよ?」


 考えてなかった。


「ライムに道を広げてもらったりはできるよなぁ……?」

「できるでしょうね。その後、壁や天井が崩れたりしなきゃ」


 生き埋めまっしぐら。

 それは勘弁。

 魔物の泉ごと押し潰せるならそれに越したことはないだろうが、我が身の安全確保が優先。


「ライムに運ばせたらどうかな?」

「他の魔物に捕らえられて永遠のお別れになることはあるだろうな」


 人相手なら無敵だろう。

 持ち上げられないほど重くなったり、掴みどころがないほどツルツルになったりできるし。

 だが、未知の存在が相手になると分からない。

 ライムも溶けてしまうような術を持つ魔物がいたら一たまりもない。

 ヨウミに護衛をつけてもいいが、旗手相手にまともにやり合えるとも思えないし。


「冒険者の仕事の最中に差し入れ、ってのは諦めるか」

「普通の行商人だってそこまではしないわよ。でもそんなにしたいなら、もう少し現場に近寄るくらいならいいんじゃない? 良くも悪くもアラタって慎重すぎるきらいがあるし」


 そりゃ俺の世界に帰る段になって、俺が重体になってしまったら、俺の世界じゃ生活できなくなっちまうからな。

 五体満足で帰ることが前提だったし。

 でもそれを考える必要はなくなったなら、確かにヨウミの言う通りだ。

 冒険者達だって、一旦入り口まで戻って俺の店で体力回復して再度突入っていう行動をとれるようになるかもしれない。

 旗手の連中に出くわす可能性はでかくなるけどな。


「でも、旗手の人達が来ない魔物の群れもあるでしょ? その区別はつかないの?」


 なるほど。

 考えてみれば、魔物の気配の密度が一定量を越えてる場所にあいつらは来ていた。


「そうだな……。やれなくはないな。それにいきなり難易度が高いダンジョン潜入ってのも敷居高そうだし」

「うんうん。それに現場に近くなればなるほど、行商人達も近寄らなくなるしね」


 命が惜しいのは俺たちに限ったことじゃない。

 たとえライムがいなかったとしても、魔物の気配が分かるってことだけでも、他の商人達と比べて難を逃れやすいはず。


「じゃあ今日の行商の目的はそれに決めようか」

「うん。じゃ、早速チェックアウトしてくるね」


 けど、空模様がちょっと不安だな。

 まぁ降っても土砂降りにはならんと思うがな。


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ジャンル別年間1位になりました。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる~


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