仲間達の新たな活動 1
ドラゴン討伐完了してしばらくしてから、店に来る客の顔触れがかなり変わった。
再来した客の来店数の頻度がかなり高くなってる。
余り来ることがなかった冒険者達の顔はめっきり減った。
新規の客は増えた。
ただし、常連に連れられてくる者ばかり。
何かあったんかな?
「そりゃアラタ、あのならず者に切った啖呵のせいだろうよ。……いや、おかげっつった方が正しいよな」
「啖呵のおかげ?」
なんじゃそりゃ。
つか、また思ったこと口から洩れてたか?
「まぁ……そりゃ俺らは、ドラゴンをぶっ倒した後の……素材とかアイテムとかな? ありゃ一攫千金ものだわな。どれもこれも非常に価値がある。価値が高い」
「それで?」
「それ目当てに参加……それを手に入れる以外考えられずに参加した連中はかなりいた。けど、そうでないみんなへもそんな奴らへも、感謝の言葉が入ってた」
おいやめろ。
首がむず痒くなるような回想やめてくれ。
「アラタの事をよく知らねぇ奴らは、情け容赦なくためらいもなく奴らの股間を蹴り上げたアレが強烈に印象に残ったようでな」
残念ながら、あの時の足の感触も残ってない。
「ドン引きした奴らは、あいつにヘタに触れちゃなんねぇ、って敬遠してな。触らぬ神に祟りなしってやつだ」
「ふむ。俺が神様か。敬え」
「お前な……」
冗談のつもりだったが。
「……けどお前のことをよく知る奴らは、やっぱり当てになる、俺達のことをそこまで思ってくれてる、っつってよ」
「それでしょっちゅうこんな辺鄙な村に来るようになったってことか」
「……辺鄙っつーか……国の主要都市からかなり離れたとこだがな。それにダンジョンじゃいろんなアイテムを手に入れられるメリットもあるし、何より滅多にない初級冒険者にもベテランにもその活動に適したダンジョンだからな」
そりゃモーナーの功績だ。
俺じゃねぇ。
ま、いいけどさ。
でも、そういうことか。
「それで、初顔の連中をベテランが連れてくるってわけか」
「そういうこと」
奇妙なことはたくさん起こる。
けど、原因や理由があってそんな現象が引き起こされる。
まさか自分にその理由があるたぁ思わなかった。
が、更に原因を突き詰めれば、ファンクラブだのおにぎりの店を紹介しただのの記事を掲載した雑誌だろう。
取材記者から贈呈されたあの雑誌は、あれ以来一度も目を通してない。
読んでも特にうれしいとか思わないしな。
「ところでアラタ」
「ん?」
いきなり口調が変わったその冒険者は、ちょっと思いつめたような表情で口を開いた。
大概、悩みごとか何かなんだろうが、俺に相談されてもな。
そんな気配は感じ取れるが、悩みごとに助言をするアドバイザーやカウンセラーじゃねぇんだ。
「物は相談なんだが」
ほらきた。
「アラタの仲間ってさ、魔物がほとんどだろ?」
「人間なのは俺とヨウミだけだからな」
「俺もさ、初級冒険者達の面倒見てんだよ。そいつらをここに連れて来てさ」
連れてくるなら引率者の勝手だろうよ。
責任者もそっち。
俺は知らん。
「一緒にフィールドやらダンジョンやらに行きたいと思ってんだが」
「だから、俺はそこの管理者じゃねぇよ。来るも去るも来た者の自由だっての」
「いや、その、集団戦を体験させたい、と思ってな」
「集団戦?」
アイテム拾いじゃねぇのか?
「金の不安なら、アラタがずーっと言い続けてきたように、勝手にダンジョンに潜って、金目になりそうな物を持ってって、まぁ人並みに生活できてるようなんだが、より濃い経験を積みたいっつってな。冒険者同士の集団戦の練習なら積めるんだが、魔物相手となるとなかなか条件が揃った相手がいない」
「条件て……」
「魔物だから、人間外れな行動をとれる者。ある程度に手加減してくれる者。そんな魔物がいつも集まってるとこ。そんな訓練を積める場所。そんな環境がほとんどなくてな」
確かに……人間外れな行動をとることができる連中だし、話を理解できるからこっちの狙いを分かってもらえて手加減できる連中だし、いつも集まってるし、フィールドも広いしダンジョンも階層によっては広いとこあるっつってたし……。
「俺の独断で即答は無理だな。みんなに話は通さにゃ」
「いつなら話を通してくれる?」
俺が仲介役すんのか?
誰がするかよ、そんな面倒くさいこと。
「晩飯時ならみんな揃って飯食うから、あんたもそいつらを連れて一緒に飯を食うってのはどうよ」
……何そのハトが散弾銃食らったような顔は。
そんな場面も、そんな表情も見たことねぇけど。
「い……いいのか?」
「話だけならタダだしな。あ、飯代は個々で払えよ?」
「い、いや、聞いてもらえるだけでも有り難い……。お礼にそっちの飯代も……」
「食う量ハンパねぇぞ? 払ってくれるんか?」
それなら問答無用でこいつのリクエストに応えてやるが。
「……すまん、やっぱ個々で」
おい。




