表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い  作者: 網野ホウ
店の日常編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/492

緩衝材なんて真っ平ご免 王子が依頼を持ってやってきた

 あの女……イールが店に来るのは数日おき。

 間が二日から四日くらい空いたりする。

 その間を縫って、というか、偶然か。

 偶然じゃなくても対面しないことはあるか。

 できれば会いたくない男がやってきた。


「やあ、みんな。変わらず元気そうだな」


 煌びやかな防具をつけた爽やかそうなその青年を見ると、その晴れやかそうな横っ面をハリセンで叩きたくなる。

 まぁ客を捌ききった後に来た分だけ、こちらに気を遣ったか立場を弁えたか。

 それに免じてハリセンは勘弁してやる。


「……何の用だよ、シアン」


 親衛隊とかの気配はまったくない。

 自分の立場も考えず、またも一人で来たのか。やれやれ。

 馬鹿王子、と言いたくなったが、テンちゃんほど馬鹿な言動をしないから、少々不適切だろうな。

 悪態ばかりついて、自分の心が歪むのもくだらない。

 俺の言葉に、ヨウミ達が気付く。


「あら、いらっしゃい、シアンさん」

「買い物? 飲み物のセットは……あ、品切れ寸前ね……」


 買い物するほど暇じゃねぇだろ、こいつ。

 なのにわざわざここに来る。

 来る必要は、いまんとこないだろ。

 夜盗騒ぎも一件落着したことだし。


「うむ、実は……うわっ!」


 シアンの後ろから何かが飛びついてきた。


「っとと……。サミーか。元気だったか?」


 見慣れないはずなのにその姿に驚きもせず、随分と親し気じゃねぇか。


「サミーの遊び相手に来てくれたのか? そいつは有り難い。じゃあここは任せたぜ? 俺は米を」

「いやいや、アラタに用事があってきたんだ。ま、アラタに話した方が筋は通るって言った方が正しいか?」


 とことん拒否して逃げ回るより、話を聞いて用件をすばやく終わらせる方が、こいつはすぐに帰宅するだろ。


「えーと、コーティ、だったか? 彼女にも通話機を差し上げようと思ってな」

「え? あたしに? ふーん……。アラタからあんたのこと聞いたけど、アラタが言うほど悪くはないじゃない」

「ほう? どんなことを言ってたか大いに興味があるな」


 余計な話題を振るんじゃねぇよ。

 こいつに長居させちまうだろ。


「何でもねぇよ。まぁ……正直俺も、サミー以外は必要かもしれんと思ってたから、ここは感謝しとくか」

「あたしが感謝すべきとこでしょ? アラタは別にどうでもいいんじゃない?」


 おぅ、どうでもよかったか。

 んじゃ感謝取り消すか。


「でも感謝されて悪い気はしない。が……逆にこっちが恐縮……どころじゃないか」

「恐縮もいらねぇよ。こっちは仕事が立て込んでんだ。用事があるなら要点絞って短く頼むわ」


 なんかこう……言いたいが言えない感が強い。

 言い淀んでる?


「なぁ、シアン。俺はお前の親父にさんざんな目に遭わされた。思い返せば、個人的にはその度ごとにぶん殴りてぇ気持ちもあったりする。が、できればほっといてもらいたい。この世界で暮らすことに決めたんでな。つまりだ。お前は親父さん以上に、俺の気を悪くすることなんざできゃしねぇよ。言いたいことがあるならとっとと言いやがれ」

「その物言い。ツンデレにしちゃややこしい言い回しするわね」


 ツンデレじゃねーよ。

 ややこしくもねぇだろ?


「うむ……じつは泉現象の事なんだが」


 泉現象について?

 言葉自体はしょっちゅう聞いたり言ったりするが、その情報なら、何か久々に聞いたような気がする。


「手伝いに来てくれ、とかは却下」

「いや、そうじゃない。……実は、沈静化に成功しそうなんだ」

「はい?」


 寝耳に水。

 いなきり。

 まさかの。

 だが落ち着け。

 シアンは、沈静化に成功しそうだ、と言ってた。

 沈静化に成功した、じゃない。


「あー……どういうことだ?」


 シアンの話は、まだ言葉足らずだ。

 も少し詳しく聞かないと。


「うむ。旗手たちが、泉現象で現れる魔物殲滅の要領を掴めてきたようでな。このペースで行けば、泉現象が起きるペースも遅くなり、一年間だけだが泉現象が全く起きなくなる」


 ということはつまり……。


「そうなると、旗手達は各々自分の世界に強制的に戻ることになるんだが……。アラタ。君は……ここで、この世界に骨を埋める気なのか?」


 みんなが俺を注目している。

 考えるまでもない。


「あぁ。俺は、この『おにぎりの店』の主だからな。……うわっ!」


 背中を急に押された。

 よろめいたあと後ろを見ると、テンちゃんだった。


「うわあいっ! 一緒っ! ずっと一緒っ!」


 ……喜びのあまりの突進らしかった。

 痛くはなかったが、びっくりさせんな!

 本来なら、自分の世界に戻らなきゃならないだろう。

 でも、戻ったところで家族とは疎遠。

 職も決まってない。

 だがここでは……。

 逃げの姿勢と思われるかもしれない。

 だが……居場所を作ってもらった。

 俺のことを歓迎してくれる人たちがいる。

 俺の能力や、その能力を生かした仕事を喜んでくれる人たちがいる。

 そして、必要としてくれる奴らがいる。


「本当に……いいんだな?」

「くどい。旗手の奴らは戻るんだよな? ……芦名とも完全にお別れか。再度呼ばれることがない限り。まぁ呼んでほしくない……っつか、来るな」

「あぁ。このまま……あと二か月ほどか。出現するや、すぐに殲滅し続けられればな。今の旗手達には、これまでにないペースだから、その見込みは十分にある」


 ふーん……。

 ま、あいつらとは無関係になりたい話で、どうでもいい話だ。


「ならもう少し話を進めたいのだが」

「進める? 何だそりゃ?」

「うむ。つまりアラタがこの世界に居続けるということは、おそらくこの店も続けるってことなんだろう?」

「まぁ、そういうことだな」

「なら、私の親衛隊の鍛錬所として利用したいのだが」


 ……場所の運営までは考えてねぇよ。

 そんな俺が言える答えは一つだけ。


「好きにしたら? 俺はここで店を続けるだけだし。ダンジョンはモーナーがより深く掘り進めてるみたいだし、フィールドはンーゴとミアーノがその安全を守ってるってとこか」

「……加えてもう一つお願いがある」


 うん、嫌な予感がする。

 できれば聞きたくない。

 が、聞かなきゃこいつはここからいなくならないよなぁ。


「何だよ」

「その鍛錬の相手をしてもらいたい」

「俺は、能力以外は一般人並みの」

「いや、アラタじゃなく」


 俺じゃない?

 じゃあ……。


「アラタの仲間達に。私の同志たちに、な」


 おい。

 何で言い直した?


「あたし達と……戦闘の特訓とかしたいわけ?」

「ああ。クリット達から話を聞いてな」


 サミーが坊主頭にしてやったあいつか。

 でもあいつらはダンジョンを鍛錬所にしてたんじゃなかったか?


「夜盗を返り討ちにしたことに感嘆してな。みんなも反対意見がなければ受け入れてほしい用件なんだが」

「あのなぁ……」


 いや、待てよ?

 仇討ちだ何だと押し掛けてきた奴がいた。

 今後もそんなことを喚いてやってくる奴も、いないとは言い切れん。

 かと言って、これ見よがしに交流企画を考える気にもなれない。

 これがきっかけで、面倒な誤解が減るようであればそれに越したことはない。

 権力にすり寄るような感じなのは気に食わないんだが……。


「なにそれ。面白そう!」

「ウン、チョットキョウミアル。マッキーモヤルトイウナラ」

「そうね。こっちの鍛錬にも役立つかもねー」

「私も、隠密行動とかをプロ相手に試せるかもしれませんね」


 シアンは、仲間達の歓迎ムードに満足そうな顔をしてる。

 だが、一応一言言っとくか。


「あくまでも鍛錬とかの特訓の話だよな?」

「うん? あぁ。そのつもりだよ?」

「こっちにゃ店の仕事がある。その相手をするのは、その合間を見ながら、だぞ?」

「うむ。もちろん。アラタの仕事も尊重せねばならんからな」

「なし崩しに、遊び相手とか、親衛隊以外の訓練とか、対象や活動範囲を広げるようなこと、すんじゃねぇぞ?」

「……も、もちろんだ」


 言葉がすぐに出なかった。

 眉がひくついてる。

 考えてたな、間違いない。

 まったく。

 ま、こいつらの居場所も守ってやる必要もあるし、そのためには俺みたいに、いてもらって助かった、と思ってくれる人も増やしてやらねぇとな。


 けど、断じて、人と魔物が仲良く手を取り合う世界を作る、みたいな大それたことは、全くする気はないからな?


今回のエピも一区切り。

で、これからまた新たなエピを始めようか、それとも新展開にしようか、と思案しているところです。

今日まで毎日更新してきましたが、考えがまとまり次第投稿するつもりです。

が、それまで間が空くか、それともこれまで同様毎日投稿となるか、どうなるか……。

いずれ、次回をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

よろしければ、ブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

cont_access.php?citi_cont_id=229284041&s

ジャンル別年間1位になりました。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる~


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ