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勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い  作者: 網野ホウ
店の日常編

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緩衝材なんて真っ平ご免 その6

 イールさんは食事会が終わった後、村を去り、自分の住まいに戻った。

 毎日来たいような話をしてたな。

 ま、仕事、商売の邪魔にならなきゃこっちは構わないんだが……。

 それよりもな。

 イールさんが考えさせられることをいい残していったのが問題でな。

 おかげで、午後の営業時間は仕事に集中できなかった。

 まぁ、これは彼女が意図して俺の仕事を邪魔したわけじゃねぇからな。


「浮かない顔ね。どうしたの?」

「何か、考え事みたいですよ?」

「馬鹿な考え休むに似たり、っていう言い回し、あるらしいけどね」


 マッキーに気遣われた。

 イールさんの話を聞いてなかったんだろうな。

 聞いてたクリマーとコーティは普段通り。

 あまり深く考えてないのかもしれねぇが。


「あれ? 誰かの通話機鳴ってるね。誰の? あたし……じゃないな」


 気付かなかった。

 余程集中力が欠けてるな。

 ヨウミのじゃないなら……。


「アラタのが鳴ってますね」

「お? 俺か……どっから……って、ンーゴ?」

「ンーゴからぁ? って、みんな持ってるの?」


 コーティが加入する前にもらったからコーティは持ってないんだな。

 特に何とも思ってないようだが……シアンにせびるのもちょっと筋違いだよなあ。

 それはともかくだ。


「はい、どうした? ンーゴ……。え? ……おい……マジか。で、大丈夫だったのか? ……いや、そいつのことじゃなくて、お前は大丈夫なのかってことだよ! それとミアーノも……うん。あー……おう、分かった」


 電話を切った。

 またややこしいのが現れたようだ。


「二人に何かあったの?」

「あぁ。えっと……サミーはライムと遊んでんのか」


 何か和むな。

 サミーがハサミと鼻で、ライムをポムポムとつついてる。


「あとは……テンちゃんはバイトに行って、モーナーはダンジョンか。ヨウミにマッキー、クリマー、コーティ、んで俺か」

「どうしたの?」

「あー……」


 どう話せばいいのやら。

 とりあえず、だ。


「ミアーノとンーゴが不審人物を捕まえた」

「え?」

「また盗賊とかー? 何なのよあたし達。何かの不気味な組織に狙われてるの?」


 コーティが俺以外の存在にぶつくさ言うの、初めて聞いた気がする。


「二人は無事なんですか?!」


 心底心配してるクリマーは、やっぱり俺達の良心だな。

 初対面の時はアレだったが。


「無事。無傷。不審人物も無傷。蔦か何かで拘束してるんだと」

「拘束……しなきゃ……逃げるか暴れるか……ですよね」

「だな。そんな危ない輩も現れるようになったってことだ」

「で?」

「ん?」


 またもつっけんどんな口調で絡んでくる。

 コーティの性格を何とか矯正できないものか。


「そいつ、何しに来たっての? 何にもする気がないなら拘束なんてしないわよね?」


 あぁ、そういうことか。


「何か、ンーゴを狙ってきたんだと」

「ンーゴを狙う?」

「狙った結果、拘束されたってことは失敗したってことでいいのよね? てことは……」

「まさか……命狙ったとか? ……あり得ないよね。あたし達の中で一番生命力高そうだし」


 マッキーの言う通りだと思う。

 切りつけても、すぐに自然に怪我が治りそうな体だもんな。

 半分に切ったら、ンーゴが二体。

 誰だってそんなこと思いつきそうな体してるし。

 プラナリアみたいに小さくて可愛いもんじゃない。

 でかくて、あいつの領域内なら間違いなく無敵だよな。

 でも雌って話だったような。


「……なんかそうらしい。刃物持って襲い掛かられたとか言ってた」

「その人……人間なのかな」

「らしいって。詳しい話は聞いてないが」


 けど夜盗騒ぎの時と違って、そんなに危機感は感じてない。

 村や村人達と違って、こいつらみんなタフだからなぁ。


「ライムー、サミー、フィールドに行くわよー」


 店をがら空きにしたらまずくねぇか?


「誰か残らねぇか? 客は来ないだろうが、テンちゃん達が戻ってきた時に誰もいなかったら困るんじゃねぇか?」

「通話機あるでしょ?」


 あ、忘れてた。

 って、今使い終わったばかりなのにな。


「あたしがいない時にみんなどっかに行ったら、連絡とれないからそこんとこは気を付けてよねっ」


 はいはい分かった分かった。


 ※※※※※ ※※※※※


「何や、アラタのあんちゃん、来てくれたんかい」

「何やって、ご挨拶だなオイ」


 あんな連絡が来て、心配することはないにせよ気にはするだろ。


「すまんすまん。みんなも来てくれたんかい。仕事中にすまんなや」

「あたし達はアラタからの話しか分かんなかったから心配したけど……」

「大丈夫みたいですね」

「ウン、モンダイナイガ……」


 みんながいつも集まるフィールドの広場で、蔦系の植物で雁字搦めにされてる人物が、ゴロンと転がされている。

 というか、芋虫みたいにもそもそ動いてはいるが、蔦の塊にしか見えない。

 辛うじて、鼻だけは露出してる。


「ンーゴを真っ先に狙ったって言ってたよな? ミアーノ、お前は大丈夫か?」

「おりゃあンーゴほど丈夫じゃねぇけどさ。地下なら逃げ場はたくさんあるし」

「ケドココデツカマエナカッタラ、アラタタチニイクトオモッタカラ」

「気ぃ遣ってもらってありがとな、二人とも。……さて……」


 気配を感じ取ってみたら……力技で反撃したがってる。

 ということは……魔法とかは使えないのか。


「多分女性だな。顔くらいは出していいんじゃないか?」

「俺ら、こいつが何しでかすか分かんねぇかったからよぉ。とにかくぐるぐる巻きにしてみた。音も聞こえさせねぇようにもしてみた」

「ニゲダサレタラ、ヨルモオチオチネテラレナイダロ?」


 いや、寝ることはできなくはないが。

 でも話をして解決できることならば、早いうちに解決できた方がいいしな。


「顔出す前に、アラタさんとヨウミさんをしっかり守らなきゃ」

「そうね。アラタ、弱っちいから」


 だから一言余計なんだよ、コーティは!


「ンジャ、オレ、ナカカラデル」

「え?」


 ンーゴは飯を食う時ですら、体の一部しか地表に出なかった。

 中から出るってことは……お? おぉ、おおお?

 長ぇ長ぇ。

 直径……っていうのか? は一メートルあるかないか。

 けど長さは……五、六十メートル?


「え?」

「わ、私達もですか?」


 俺とヨウミばかりじゃなく、ミアーノやマッキー達全員も囲うように自分の体で輪を作ってくれた。


「コレデヨシ。ミアーノ、カオハダシテイイトオモウゾ」

「おー。んじゃちょいちょいちょいっと」


 蔦を刃物で切り落とすと、中から出てきた頭部。

 見た目……三十代くらいの、やっぱり女性だった。


「……昨日今日のあの人と言い、この人と言い……アラタってば女難の相でもあるんじゃないの?」


 だから一言余計なんだよ。

 どこで覚えたその言葉っ。


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ジャンル別年間1位になりました。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる~


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