緩衝材なんて真っ平ご免 その3
「……とまぁ、日中こんなことがあってな」
その日の晩飯時。
いつものようにフィールドで全員で飯を食いながら、イールという女性冒険者の話をしていたのだが。
「モムモム」
「突きすぎだなあ。おにぎりがぁ、転がるぞお?」
サミーは一心不乱に、おにぎりを顔で突っつくように食べている。
食べる様子は、脱皮する前とあまり変わらない。
ただ、力強さも高くなったのか、おにぎりをコロコロと転がしてしまう。
モーナーがそれをサミーの元に戻してる。
「しょーがないですねぇ、サミーは。鼻先にご飯粒ついてますよ」
再びおにぎりに食いつく前に、クリマーがそのご飯粒を取ってサミーに食べさせている。
「あたしの干し草食べてみない? 日に日に味が良くなってんのよー」
「だぁれが干し草なんて食べるかっての! 食べ物以外口にできるの、テンしかいないでしょっ!」
「テンじゃなくてテンちゃんだってばっ! 大体干し草だって食べ物よ? 食べ物粗末に扱わないのっ!」
コーティが珍しくテンちゃんに絡んでる。
まぁ隣に座ってるから自ずとそうなるんだろうが。
「何? あたしの興味ある? って、焼き魚だから食材は食べ慣れてるのかな?」
「ヤイタノハ、ナイナ」
「試してみる? つっても、そんな大きい体にこんなちっさい一切れじゃ食べ応えないだろうけど」
「アジ、ワカル」
「マジ? ンーゴもいろいろ食べるようになったねぇ。ねぇ、ミアーノ」
「ん? いや、俺らは元々雑食よ? 何でも食うで? まぁゆーてもライムほどやないやがの」
「ン? ナンカイッタ?」
和気あいあいでにぎやか。
気が休まる時間だ。
けど、みんなに話しかけても反応が全く返ってこないのは、何と言うか……。
「タイミング、悪かっただけよ」
「……それもそうだな」
車座になってるから、対面との距離はけっこうある。
俺の声が届かないこともあるだろうしな。
それに、俺とヨウミ、あるいはライムとテンちゃんの四人の頃の昔話をしたところで、何かが変わるわけでなし。
まぁ喋らなくてもいいか。
「なぁなぁ、アラタのあんちゃん」
晩飯をあらかた食い終わったミアーノが俺のところに近づいて話しかけてきた。
その場で呼びかけてもいいだろうにな。
だがわざわざ俺のところに来るってことは……。
「何か起きたか?」
「相変わらず察しがいいよな、あんちゃん。実はな、こないだ夜中の捕物あったろ?」
「あぁ。あん時ゃお疲れ」
「おぅ。いや、それはいいんやが……。あの夜よっか……何日か前からか、森の中に潜んでる奴がいてな」
「え?」
何で今頃そんなことを。
つか、夜盗は全員捕まえたんじゃなかったっけ?
「ま、夜盗の一味なら、そいつもひっくるめてとっ捕まえりゃええやと思うてたんやけんどな」
「……今も潜んでるな。同一人物ってことでいいのか?」
そういえば、村人達からの謝罪云々の時もいたっけな。
そんときと今の気配は同一だ。
だが、ミアーノが感じ取った気配と同じとは……。
「おんなじや。一人がずっとこっちを気にしとるっちゅー感じするんやが……あんちゃんはどないよ?」
「俺もだ。ただ夜盗みたいな攻撃性がない感じだったから、そのことは特にみんなに注意を呼び掛けるほどじゃねぇかなって」
「アラタのあんちゃんらがいなくなったあとも、ずっとその辺りうろついとる。店を狙ってるっちゅうことじゃなさそうやけんど」
「偵察して、どこかに情報を伝えるってことも」
「ないな。何も喋っとる様子ないし。俺もンーゴも地中にいりゃ、範囲内なら地面にいる奴らは大体把握できる。そいつも範囲内におるけど、何にも言わんと、ずっとこっち見とる感じがするんでの」
ここにずっといて、俺らを見てるってことは……。
飯を食った後ねぐらに帰る俺達を見てるわけじゃないんだよな。
ってことは……。
ミアーノとンーゴを気にしてるってことか?
何のために?
まぁあれだ。
最近は、変な客が多くなってきたから、その一人、ということでいいんじゃないだろうか……。
害意ないし……なぁ。




