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そこは宗教の施設だった そしてそこには大司教と国王もいた けれども俺はそこにいなかった?

「お取込み中すいませんねー。ちょいとお聞きしたいことがですねー」


 カマロのやつ、丁寧語は使うが口調が軽い。

 相手は、お前から馬鹿にされてるとしか思われないぞ?


「えっと、すいません。えー、迷子になってしまいまして、自宅に戻りたいんですが、ここはどこでしょう?」


 これくらいの丁寧な言い方をしないと礼儀知らずとか思われるぞ?


「ようこそお出でいただきました。これで旗手の方々は全員揃ったというわけです」


 白い衣装の人達の中で、ちょっと華美な感じがする装飾品を身に着けた男がいた。

 恰幅がいいその男の言う歓迎の言葉が、これまたよく響く声。

 それはいいんだけど、こっちの質問に答えてほしいんだが?

 俺は帰りたいんだけど。


「あの……えーと……」


 どう切り出すか迷ってる間に、またその恰幅のいい男の朗々とした声が、堂内に響いた。


「ここは日本大王国の首都、第一の都にございます、慈勇教本部。私は慈勇教の代表である大司教の任を仰せつかっておりますユウオライと申します。我々、いや、この国の全国民は、皆さまが来られるのをお待ちしておりました。盾の旗手様は前に一度お会いしておりますね。あの時はありがとうございます。またご面倒をおかけして申し訳ありません」

「あ、いえいえ」


 左腕に盾をつけている男は、確かに何となく場慣れしてる感じがする。


「ジユウキョウ? タテノキシュ?」

「そう。慈しみと勇ましさを持つ神を信奉する教えを中心とする宗教、と言った方がわかりやすいでしょうか。皆様方はその神が遣わした勇者。我が国で起こっている、魔物達を討伐する勇気の旗印、すなわち旗手なのです」

「へえぇ。ほんとに勇者みたいなんだな。っていうか、日本大王国って何だよ。日本は帝国だろ?」


 いや、だから日本は民国だろうに。

 って、何か向こうでざわついてる。


「何言ってんだ? 日本連邦だろ」

「え? ちょっと待って。何それ。日本公国でしょうが」

「おい待て。お前ら自分の住む日本大国のこときちんと勉強したのか? 小学校出てんのか?」

「えっと、皆さん、ちょっと待ってください。あのですね……」


 話が妙に噛み合わない。

 日本って言葉は出てくるが、その後の国名が違うってのはどういうことだ。

 日本語を喋ってるし、言葉の意味は通じてるようだが……。


「あ、あのですね。今は国の名前のことよりも、帰り道のことをお聞きしたいんですが」

「この国……この場所には、我々にとっての異世界から来られるすべての方々に旗手の資質がある、と考えております。事実今まで何人もの旗手の方々に来ていただき、我々の望みを叶えていただき、そしてそれぞれの場所にお帰りいただきました」


 俺の質問はスルーかよ。

 いや、俺の言葉が聞こえないのか?

 っていうか、異世界?

 こいつら、っつーか、この教会? の人達も、日本語を普通に使ってるな。

 地名とかの固有名詞にはちょっと違いがみられるが。

 ってことは何か?

 みんな一見日本人だが……みんなそれぞれ別の世界の日本から来たってこと?

 何だこの展開。


「もちろんそれなりの報酬は用意してございます。それと、ここにいらっしゃる期間、皆様方の世界には不在なわけですが、そちらの方の時間の経過はございません。これは複数回こちらに来られた旗手の方々の証言によるものです」


 いや、話がどんどん進んでいって、なんかついていけないんだが?


「この人の言ってることは確かです。僕は二度目ですが、戻った時はここに来る直前と変わりませんでした」


 盾の若い男はすでに経験済みか。

 嘘じゃないってことは分かるが……。

 そういえば、カマロの持ってる剣の柄にある模様と、あの盾のど真ん中に描かれている模様がおんなじだな。

 旗手の証とかってやつかな。

 でも俺は何にも持ってない。

 俺はどうすりゃいいんだ?


「あの、すいません。俺はどうすれば……」

「詳しい話は、こちらにおられます日本大王国の象徴であらせられますゴナルト国王からご説明申し上げます」


 大司教とやらが、俺の言葉にかぶせてきた。

 なんか会社員時代の待遇と重なるのは気のせいか?


「ここで立ち話もなんですから、私の部屋にお出で下さい。食事も用意しましょう」


 食事があるのは有り難いが、とにかく帰る方法をだぶわっ!


 ついて行こうとしたら、大司教の部下ってことか? そいつらに体ごと割って入られて押しのけられた。


「な、なぁ、大司教様よ、あの人も一緒」

「さあ、こちらです。部外者は入ることは許されない区域ですので、どんなことでも……」


 国王が立っていた横の隅にある扉を開けて、ここの人間の数人を残して奥に入っていった。

 てことは何か?


 俺、置き去り?


 残った人はまるで門番のように仁王立ち。

 目線はこの大部屋の出入り口の方に向けられている。


 俺、無視されてる?


 なんだよ、この扱い。


 ──────


「何よ、それ!」


 ヨウミがテーブルを力の限り両手で叩く。

 その音は店内に響くが、酔っぱらいばかりの酒場じゃ誰も気に留めない。

 その酔っ払い達は冒険者。

 そんな音程度で動じるわけがないってことだな。


 ……ビビってるの、俺だけだった。

 人が話をしてる途中でいきなりそんな音を出されたら、誰だってびっくりするよな?


「だって、旗手の召喚魔法を使ったんでしょー?! だったら招き入れた慈勇教の連中に責任があるってことじゃないの!」


 責任?

 いや、召喚魔法?

 何を言ってる?


「待て待て。お前、ちょっと頭に血が上りすぎてないか?」

「何言ってるの、アラタ! あなたも少しは怒りなさいよ! 怒っても許される立場よ、それ!」


 えーと。

 怒っていいポイントがよく分からんのだが?


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ジャンル別年間1位になりました。
俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる~


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