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詩集「七夜詩篇」

奇跡へ

作者: 詩月 七夜

窓の外から誰かの笑い声が聞こえる


とても楽しそうだ


きっと何か良いことがあったのだろう



私はといえば


今は固いベッドの上


身を蝕む理不尽な運命と


来るべき終わりの日に


うち震えるだけの日々


かつては空を舞う鳥のように


どこまでも飛んでいけると


そう信じていたのだが




思うに神様は残酷だ


きっと何回も繰り返してきた日課のように


ある日突然 人間わたしへ試練を与えた


それはとても大きな壁


見上げるだけで何も言えなくなる


越えて行くには


このつばさは頼りなさ過ぎた




ふと自分の手を見た


三十年もの間


毎日を共にしてきた手


そして


たくさんの出会いの奇跡を受け止めた手だった


仲の良い友人と握手をした


愛する人と手を繋ぎ歩んだ


授かった新しい命を抱き締めた


何の変哲もないけど大切なつばさ




その手を握ってみる


掌に伝わるあたたかさと


なけなしだけど残った力


そう


私の手にはまだ命があったのだ


たくさんの奇跡に支えられた力が


この手をまだ動かしていた




窓の外に広がる青空


伸ばしてももう届かないと思った蒼穹せかい


だけど


届かないとそう思っただけ


本当はこのつばさ


今も高みを目指して飛ぼうと


羽ばたいているのだ


そうしてまだたくさんの


出会っていない奇跡へ


その全てを受け止めようと飛翔し続けているのだ




終わりの日は見えている


だけど


まだそこには至っていない


いくつもの奇跡を


この手で受け止めたのだ


ならば…!


あと一つくらいの奇跡を


このつばさは受け止めてくれるだろう




窓の外の笑い声はまだ続けている


本当に楽しそうだ


私はそこへ心を飛ばす


そして目を閉じて思う


いつかきっと


その笑い声の誰かと共に


青空の下で笑い合ってみよう


誇り高い命を宿した


このつばさ


新しい奇跡へ繋がるために

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつかは誰もがお別れとなる世界。それが長いか短いかはそれぞれですが、やはり短いとなると切なくなります。 だからこその、最後のきらめきに心動かされるのかもしれませんが。 無為に自堕落に過ごす…
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