1-7 すいません、貴女は誰ですか?
「う、ううん・・・」
ここは何処だろう?学校でフルボッコにあって、それから全く記憶がないんだ。
とにかく誰かに話を聞かないとなぁって起き上がろうとしたら、身体がキシキシ痛くて動かせないんだ。
じいちゃんじゃないけどね、うんしょこらしょ!なんて言いながらようやく起き上がろうとしたらね、目の前から知らない女性が駆け寄ってきたんだ。
恰好もトンガリ帽子にビキニアーマー?って奴なのかな?
全体的に黒と紫色なんだけど、水着のビキニに似た衣装にミニスカート。
ロングブーツに黒くて長いローブを羽織って、手には先端に大きな宝石がつけてある長い杖を持ってるから、どこからどう見ても”魔女”って感じなんだよね。
学校の先生でもない、同級生でもない。お医者様もああいう恰好はしないだろうなって思ったらね、僕の顔を見て、ボロボロ涙を流しながら抱き着いてきたんだ。
抱き着かれた時に僕の目の前に迫ってきたおっぱいが苦しくて、ごめんなさい苦しいって言った時に離れた時にほんのり優しい花の香りがして、一瞬くらっと来たんだけど、ふと我に返って
「すいません、貴女は誰ですか?」
って聞いたらね・・・
ばあちゃんだって。
・・・・
・・・・・・
ハイっ?
思わず変な声が出ちゃったよ!
だって、僕が知ってるばあちゃんは、背は僕と同じくらいで小っちゃくて可愛らしい田舎のおばあちゃん。モンペ姿で庭いじりが好きで、良く小さな畑でジャガイモとかキュウリなんかを収穫してて楽しんでた、笑顔が可愛らしいただのばあちゃん。
目の前のいるのは背は170センチくらいで銀色のウエーブがかかった長い髪と、切れ長な目がとっても印象に残る20代くらいの美人さん。そんな、ばあちゃんって言う目の前の美人さんがね、
「今からあんたの敵討ちしに行くから」
なんて言ったもんだから、僕本当にびっくりしちゃって、正直思考が止まっちゃったんだ。
「僕の事は僕自身で解決します。知らないあなたにご迷惑はかけられません」
「いやいや、私は貴方のばあちゃん!貴方の事が本当に大事だから、今からケリつけにいくのよ!」
やっとこさ出た言葉も無意味だったみたいだったけど、これはやばい奴だ!知らない人に敵討ちなんてされちゃったら目の前の美人さんも傷ついてしまうし、ばあちゃんにも迷惑かけちゃう。学校の先生や友達にも合わす顔がなくなっちゃうよ・・・って思って、ずーーーーーっと「駄目です!」「僕の問題ですからやめてください!」って繰り返しながら言ってるんだけど、目の前の美人さん全然聞いてくれないの。
美人さんなのにこめかみに血管浮かせて「絶対に許さない!」って言いながら、行ってくる!なんていうもんだから、僕本当に慌てちゃったね、「せめて僕も行きます!着替えますから待っててください!!」って、急いで制服に着替えようとしたんだけど、知らない女性の前で着替えるのはどうにも恥ずかしくて・・・
でも、どうしても止めたかったし、どうしても体が動かなくて、どうしようどうしよう!!って慌ててたらね、ばあちゃん?がふふふって笑って僕の着替えを手伝ってくれたんだ。
目の前の若い美人さんにそんな事をされたら緊張して動けなくなるって思ったんだけど、とっても自然に着替えさせてくれて、ネクタイを縛ってくれた時のしぐさがばあちゃんにそっくりだったからついつい甘えちゃったんだ。
「知らない美人さんに着替えさせてもらって僕は恥ずかしいです」
「だから、私はあなたのおばあちゃん、ばあちゃんですよ!」
そんな事言われても、全くの別人だからって思ってたら、いつの間にか僕の着替えを終わらせ、とっとと駆け出そうとするばあちゃん?を落ち着かせて話を聞こうとしたんだけど、一向に足を止めてくれないの。約束の時間に遅れちゃう!血の契約に間に合わなくなるってさ・・・
血の契約って・・・
なんだかとっても恐ろしい話してるんだけど、目の前にいる人ってやっぱりばあちゃんじゃないんじゃないかな?って思いながらも、必死に止めようとしてるんだけど、全く聞いてくれないの。もう頭に血が登っちゃってるのか?ものすごい早口で何かを言ってたんだけど、チーミセタロカ とか フルボッコカクゴシテオケヨ とか オージョーシーヤ・・・とか、血がたぎるとか、もう僕の知ってるばあちゃんの台詞とは思えないおどろおどろしい言葉のオンパレードに僕の頭の回線も止まっちゃって・・・
気が付いたら学園前に到着したんだ。
・・・ボクドウシタライインダロウ・・・