1-4 私、正式に抗議しますわよ。
私の名はエンゲリス。
今年で80才になる、何処にでもいるようなただのおばあちゃんだよ。
今日も庭になっている野菜たちを収穫してたらね、孫が行っている魔法学園の生徒さんと若い先生が慌てて尋ねてらしたの。
どうやら孫が大けがをしたらしく、今来てくれた皆さんが手分けして孫の面倒を見てくれたという事で、お礼を言いましたら、皆さん涙を流して私に謝ってきたの。
「本当はすぐにでもおばあさんのところに来たかったのですが、本当にすいません」
「僕らが病院に運んでる最中も、アイツ『ばあちゃんには言わないで、言わないでおくれよ』なんて寝言のように言ってて、俺、本当に情けなくて情けなくて、こんな事しか出来ないのかって・・・」
「生徒が汚した責任は教師である私の責任であります。大変申し訳ありません。ただ・・・恥ずかしい話、今の学園長が学園の責任を認めるかわからず、私は自分が情けなくて・・・」
「「「「「本当にすいませんでした」」」」」
そんな言葉を涙をこらえて言ってくれた生徒さんや先生さんを見ていましたが、とりあえず孫がどうなってるのか知りたいし、それ次第で学園に対して何か言わないといけないと思ったので、私は村長さんに馬車を借り、来てくれた生徒さん達に案内してもらいながら村を出ました。
学園は、城塞都市と呼ばれる高い塀で取り囲まれた場所の一角にあり、そこから少し離れた場所に大きな病院があるのですが、どうやら孫はそこにいるらしく、馬車から降りる私を多くの生徒さんが引っ張り孫のところに連れてきてくれました。
孫が寝ている部屋に着くと、ベットの脇で体を拭いてくれている30代後半くらいの女性がいましたので、頭を下げると、
「噂のおばあ様ですね、私は八百屋の店主、アルバイトとしてお孫さんをお預かりしているものです。お孫さんにはいつも頑張ってもらっています。今回勝手ながらお孫さんのお世話をさせてもらっています。大変でしたね」
と言い、孫の今の状況を教えてくれました。
状況的に、複数の人間により暴行を受けた孫は、ぐったりした状態のまま他の生徒に発見され病院に担ぎ込まれ、半日ほど意識が無いような状況。体には多くのあざがあるものの、骨などには異常がないため、おそらく精神的に大きな傷を負った為、目が覚めないのではないか?という事をお医者様に言われたという事でした。
ふと、孫の治療費や来ているパジャマなどが気になり聞くと、八百屋の店主さんや、こちらに来てくれた先生がお金を出し、生徒さん達と手分けして揃えてくれたらしく、こんなに多くの友達が出来て本当に良かったね、と言いながら、孫のあまたをなで、改めて皆様にお礼を言いました。
ただ、この状況を本来伝えなければならない学園の責任者は、この事に全く触れないらしく、あくまで連絡にきてくれたのは、孫の友達や親身に対応してくれた先生のみ。
ただでさえ、孫がこんなに傷つき弱っているのに、生徒を預かっている学園が責任もって対応しないのはどうなのか?と、久しぶりに怒りを覚え、私はその足で学園に行くことにしました。
私、正式に抗議しますわよ。