第1章 風音鳥《かざねどり》
あるところに空色の木があったー。
ある時はたくさんの雲で覆われ、
またある時は青い澄み渡った雲ひとつない空が映し出される
天候が変わり、時を刻むごとに星もあらわれ、
夜空となり、雲の位置も、空の色も季節すらも移り変わるー。
茂みのような移りゆく空に触れると、触れた先から振動が伝わり、ちょうど、
水たまりに雨の雫が落ちる時のように円を描き、空がゆがむ
僕はそこに沈み込むように入っていき、沈んだはずなのに、
急に浮かび上がるようにして羽ばたく。
中はなぜか自分をよけるように空洞で、
周りには沈み込む前に見た、空の色が直射日光を受けたガラス越しのような、
飴色を上に乗せて、緩やかに動いている。
今でこそ翼のようなものがはえてはいるが、先ほどまで僕はただの光の球体だった。
そして空色の木の周りを浮遊していた。僕は自分が何者か分からなかった。
でもなぜか、そこにいなければならないような気がした。
光である僕は聞いたー
『どうして?どうしてどうして・・・僕は僕なの?』
空色の木は答えたー
『それはね・・君が・・君だからだよ』
意味深な答えに自分の結論を見出せずに、僕はまた聞く
『じゃあどうして?どうしてどうして僕は人間じゃないの?』
空色の木の、自分にはないはずの目を凝らしてよく見ると、
奥の世界に見える様々な発明であふれた世界で暮らす人間たちの世界を見るのが、
僕は好きだったー
空色の木は、その質問に対して、ふふっと軽く笑って答えるー
『君こそどうして?どうしてどうして人間のかたちをしているんだい?』
いつの間にか、ただの丸い光だった僕は空色の木の奥の世界に見える人間の形をしていた。
僕は不思議で仕方がない
『どうして?どうしてどうして・・僕は人間の形をしているの?』
空色の木は答えたー
『それはね、君が人間だからだよー。
自分が何者か知りたがる、別の何かになりたいと願う・・・
そんな生物は人間だけだからね・・・』
空色の木が言っていることは、いつも何処か空を切るような答えだが、
なぜか核心をついてるような・・・そんな気がした。
『だが・・・君が人間になるには、まず学んでくるといいー』
その言葉を最後に、
僕は自ら吸い込まれるようにして、
空色の木の奥へと、深く・・・深く沈んでいったのであったー。




