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13 回ル!聖女様!

 「であるからして、以上の事からアンジェリーク嬢がレン君に好意を抱いているのは火を見るよりも明らかと言えるでしょう」


 銀縁の眼鏡をクイッとしながら自信満々に語るのは社畜人@18連勤さんだ。

 フジサワレン心の会議にて分析や考察などは彼が主に行う事が多い。

 議題はそう、「アンジェリークは俺の事をどう思っているか」である。

 社畜人@18連勤さんは末梢神経までズブズブの社畜ではあるが仕事は出来る人だ。頭の回転も早く、彼の同時に様々な物事を見る事が出来る力は今までの色々な議題を片付けるのに非常に役に立った。

 また、彼はどMだ。オルガにケツを蹴られたいと思っているのは彼である。社畜だからな、18連勤さえもご褒美である。


 「わ、私もそう思います……。こないだのデートは胸キュンでした。レン君のカッコいい姿を存分にアピール出来たかと……」


 消え入りそうな声で賛成するのは、P.N.来夢☆みんと(♀14)だ。

 少女漫画家を目指す彼女は俺の中の乙女な部分を一身に請け負っている。

 最近出現するキザな藤沢恋は彼女の願望を形にしたものである。

 ただ彼女は人見知りが激しく俺の議員の中では珍しく引っ込み思案で、普段人には言えない恋愛への憧れを漫画にぶつけているのだ。


 「まあね、綺麗な顔だと言っていたし、手もずっと繋いでくれてたし。挙げ句には変態でも構わないと。これで強気に行かない方がおかしいでしょ?」


 優しすぎる親友君が彼女達を後押しする。

 優しすぎる親友君はいつも客観的に物事を見てくれてそっと背中を押してくれるのだ。

 彼は俺が何を言っても笑ってくれるからな。藤沢恋の精神的支柱と言ってもいい。

 あと、彼のお姉様は巨乳である。パン屋の店員さんと並んで身近な巨乳ツインタワーだ。心の清涼剤だ。

 ツインタワーの一角の影響もあって、藤沢恋を癒してくれるのは大体彼である。

 

 優しすぎる親友君の後押しを受けて社畜人@18連勤さんが勢いに乗る。


 「そうです! 強気で行くべきです。早速デートに誘って、次のデートでは手繋ぎの一段階上のミッション、キスも視野に入れて計画を立てるべきかと」


 「キ、キス!?」

 「キスって何? 食べれるの?」

 「社畜人@18連勤さんが言うんだ、行けるのかっ?!」


 キス、という爆弾発言に盛り上がる議会。

 しかし水を差したのは議会屈指のリアリストだ。

 

 「そんなテクニックない癖に」


 脚を組んで枝毛チェックをしながら忠告するのは厳しすぎる妹。

 彼女も俺を客観的に見てくれる存在ではあるが、優しすぎる親友君とは違ってあまりにも厳しい。調子に乗った藤沢恋にブレーキをかけてくれるのはいつも彼女だ。

 その目は冷たく、まるで蝉の死骸を運んでいる蟻の行列でも眺めているかのようだ。

 ちなみにこの厳しすぎる妹と優しすぎる親友君はあくまで俺の心の中の偶像である。実在する人物や団体とは一切関係がありません。ご了承ください。


 「上手く出来るとでも思ってんの?童貞の癖に。カッサカサの唇を鼻息荒くされて血走った眼で近付けられても正直ドン引きなんですけど」


 確かに歯がガチンとぶつかってトラウマになるかもしれないな。

 大体普通に顔を近付けて行ったら鼻と鼻がぶつかってしまうではないか。どうしろというのだ。

 いや、その前にいいムードだと思って顔を寄せていったらスッと避けられるかもしれない。

 近づいた分だけ相手がのけ反って永遠に距離が縮まらないかもしれない。

 イナバウアーならぬ嫌バウアーの名人かもしれない。

 もし避けられたら立ち直れない。

 脳裏によぎる最悪な想像に議員達は静まり返った。


 「っていうかさ、セイ様が王室の関係者だから表向き優しくしてるだけじゃないの?」


 これに追随するのは17年間彼女いない君。

 彼は基本的に女性を信用していない。自分に自信もない。カップルは敵である。

 17年という歳月は彼をこじらせるのに十分な時間だった。

 ミスターネガティブ、それが彼なのだ。

 

 「そうよそうよ、簡単に落とせると思ったら大間違い。笑顔の裏に何があるかわかったもんじゃな……」

 

 更に追い討ちをかけようとする厳しすぎる妹。しかし議員の一人が泣いているのに気付き言葉を止めた。


 「ひっく、何でそんな事言うの?」


 ショタだ。

 汚れを知らないショタ。

 純真無垢なショタ。

 疑う事を知らないショタ。


 「アンジェリークお姉ちゃんが僕を騙したりするもんか!来週もアンジェリークお姉ちゃんと遊ぶんだもん!」


 ショタの涙には皆弱い。厳しすぎる妹もこれにはたじたじである。

 だが皆は知らないのだ。

 ショタが実は腹黒い事を。

 その無邪気な顔の下の悪魔を。

 全てが計算である事を。

 厳しすぎる妹には泣き落とししかないとショタはわかっているのだ。

 これにより議会はショタのなすがまま、と思われたがそうはいかない。

 セラヴィスチルドレンがショタの独裁を許さない。


 「いい加減に嘘泣きはおよしなさい」


 セーラー服に身を包み、赤いリボンで結んだツインテールに真っ白なニーソックス。

 新人議員のセラヴィスチルドレン、聖女様だ。


 「う、嘘泣きじゃないやい!」


 「黙りなさい」


 「う……うぐぅ」


 ピシャリと言い放ち反論の隙も与えない。

 

 「レンは聖女なのですよ。恋愛にうつつを抜かしていい立場ではありません。と、言いたい所ですが初めてのチャンスですからね、大事にすべきでしょう。でも、まだ出会ってから1週間です。まだ自分の気持ちもはっきりしない内からキスだなんだと騒ぎ立てるのは気が早すぎるでしょう」


 ぐぅ正論。

 

 「そ、そうよ。重要なのはアンジェリークがお兄ちゃんの事をどう思っているかじゃなくて、お兄ちゃんがアンジェリークの事を好きかどうか、じゃないかしら?私はそれが言いたかったの」


 なるほど。その通りだ。脈がありそうだから好きになるのか?

 違うだろう。

 特別な存在というのはそうではないはずだ。

 確かにアンジェリークはかわいい。話していて楽しい。

 しかしそれは本当にアンジェリークでないと駄目なのだろうか?

 そう思うと、今の段階では好ましい、であって好き、とまでは言わないのではないか。

 

 「私も…そう思います。私の漫画の主人公は…女の子なら誰でもキスしたい訳じゃないんです。ほ、本当に好きな人としかそういう事をしない男の子なんです!」


 P.N.来夢☆みんと(♀14)が大きな声で自分の意見を主張するなんて珍しい。

 そうだな、今回の議題についての結論は保留だ。

 自分の中の思いがはっきりしてからまた議論しよう。


 「俺は誰でもいいからヤりたい」


 せっかくまとまりかけた議会をぶち壊すような発言が飛び出し、全員がその声の主に視線を向ける。

 その席は絶対懐古主義氏のものだ。

 しかし、絶対懐古主義氏は昨夜から「ワンウェイホイール分解したいよー」しか言わなくなってしまい会議を欠席している。

 たまに絶対懐古主義氏は発作を起こすのだ。こないだも「スーパードッジしようぜ!」と言い続けていた。懐古主義とはある種の病気なのである。

 では絶対懐古主義氏の席に座っているのは一体誰だというのか?


 「ちょっと待ってよ……。何でアンタがいるのよ!?」


 歩く災厄と呼ばれ議会への立ち入りを禁止されている危険人物。

 下ネタbotだ。


 「自分と妹が、ってのはありえないけどさ。親友と妹があれやこれや、って想像するとなんかやたらと興奮する」


 下ネタbotはその名のとおり、下ネタを延々と垂れ流し続ける。しかも人格を疑う様な下ネタばかりを言うのだ。


 「俺マリーダなら全然守備範囲だよ」


 「警備は何をやってるんだ!」

 「早くこいつをつまみ出せ!」

 

 「正直に言うと女物の下着をはくのは満更でもない」


 「もう下ネタbotは喋るな!」

 「閉会! 閉会!」


 招かれざる珍客により混乱をきわめた議会はなし崩し的に閉会へと向かう。

 そして俺はゆっくりと目を覚ました。




 (レン、起きてくれ、レン)


 ジークが肘でこづいて俺を起こす。

 大聖堂での礼拝の最中であった。枢機卿の話が長すぎてうとうとしてしまったようだ。


 「俺の股間がシャングリラ」


 ええい、下ネタbotはもう出てくるんじゃない。


 「おい、寝ぼけるのは勘弁してくれ。直に聖女様の出番だ」


 アーガルムの国教であるアムル教。

 その総本山のアムル大聖堂。

 豪華絢爛な大聖堂だが、アムル教の教義では清貧を重んじている。

 アーガルム国内の教会は派手なものはなく、質素なつくりで装飾を抑えたものが多い。

 そんなアムル教の施設で唯一の例外、それがアムル大聖堂である。

 建設期間は実に百年。

 今は製造法を失われた魔法金属や魔導硝子がふんだんに使われており、魔導硝子を用いたステンドグラスはその色を時間と共に変化させ、まるでプロジェクションマッピングでも見ているようだ。

 大聖堂の一番奥には魔法金属で作られた大聖女像が鎮座しており、正に圧巻の一言である。

 大聖女像は聖衣を纏い優しい笑みを浮かべている。その顔は確かに美しいが、銅像やブロンズ像のそれであり人間味を感じさせない。初代聖女様をモデルにしていると思うがこれっぽっちも日本人ぽくないし、ひょっとしたら全然似てないのかもしれない。


 デスタン枢機卿の話が終わると俺が前に出て牧師達の祈りを受ける事になっている。

 その数100人、一人ずつ順番にと言うのだから祈りを捧げられる方はたまったもんじゃない。

 今日大聖堂に来ているのは王都ソルミナと西部地方の牧師達だそうだ。

 来週は南部、その次は東部、次に北部と一月かけてアーガルム国内の牧師の全てが俺に礼拝する予定らしい。

 聖女を信仰するアムル教、その信仰対象が降臨してるのだからそりゃあアムル教の牧師だったら遠くからでも拝礼に来るわな。むしろ聖女に礼拝が済んでない牧師は牧師として認められないんじゃないか?

 デスタン枢機卿の長い話が終わった。

 枢機卿、という役職だが彼は聖職者ではない。

 アーガルムでは宗教が力を持ちすぎないようにいくつかの制限をかけている。

 その1つとして牧師には階級を設けておらず、等しくただの牧師である。地球のように法王などを頂点としたいわゆるピラミッド型の組織ではない。そうした組織自体を作る事を制限している。

 アムル教への寄付金などは国が管理しており、牧師へは国から給金が給付されている。

 そして牧師の上に管理者を置いている。それがデスタン枢機卿だ。

 枢機卿は貴族の中から任命される国政の役職の一つなのだ。デスタン枢機卿の爵位は伯爵である。

 国教の責任者といえば花形の役職かと思うが実際は閑職として見られているらしい。

 国はアムル教が組織だって力をつける事を禁じているのでその責任者である枢機卿も発言力は弱い。

 デスタン枢機卿も以前は次期農業大臣として副大臣を務めていたらしいがそのポストにアンジェリークの父ジェフが抜擢された為、枢機卿に追いやられてしまったそうだ。枢機卿は大臣級だから一応の出世ではあるがエリートコースからは外れた形になる。

 まあ貴族だって能力主義だからな、仕方の無いことだろう。

 さて、仕事である。

 大聖女像の前に立ち、牧師達の礼拝を受ける。

 立ちっぱなしでおまけに身動きを取る事も出来ない礼拝は二時間近くにも及び、セラヴィスに来てから一番の苦痛だった。


 ―***―


 前言撤回である。

 滞りなく礼拝(される側)が終わり、デスタン枢機卿に労いの言葉を貰って大聖堂を後にした俺とジークは、慰問先の孤児院で子供達と昼食を取った。

 いくら子供が相手だとしても、俺は聖女で見た目は美少女だからな、乱暴な事はされないと思っていた。

 ほら、小さい男の子ってさ、綺麗な年上のお姉さん見ると照れちゃってまともにお話も出来なくなっちゃうじゃない。だから大丈夫だと思ってたんだがそんな事はなかった。

 もうね、子猿だ。隙を見せると胸を触ろうとしてくるのだ。


 「秘技おっぱいタッチ!」


 10歳のジャンがスープを飲む俺の背後にいつの間にか忍び寄り、後ろから俺の胸を鷲掴みにする。

 一応恥じらいつつ叱っておく。


 「キャッ! コラ! ダメでしょそんな事したら!」


 キャッ! じゃねーっての。自分でやっといてなんだが気色悪いにも程がある。

 先程の礼拝を超える苦行である。


 「うわ固っ! 平べったくてゴツゴツなんだけど!聖女様っていつも何食べてん……痛ぁっ!」


 ジャンの頭に孤児院の女性職員アナの拳骨が振り下ろされる。

 アナは巨乳だ。なるほど、毎日こんな巨乳が身近にあったらおっぱいに興味が湧くのも当然である。

 ん? 今の俺ならふざけてアナにおっぱいタッチしてもじゃれあいで済むんじゃないか?「もう、仕返しだぁ! あ、間違えてアナ先生のおっぱい触っちゃった!」とかダメだろうか。いやダメだろ。


 「も、申し訳ございません! 聖女様の胸を触るだけでなく失礼な言葉まで。申し訳ございません!」


 アナは顔面蒼白になり必死に頭を下げている。

 巨乳なアナに謝られても更に傷つくだけなんだが、俺は男だからな。いくらペチャパイと言われても屁でもないのだ。

 しかし胸は盛った方がいいのだろうか?

 オルガなんかはかわいそうなぐらいペチャパイではあるが、アーガルムの女性は日本人より平均的に胸がある人が多いように感じる。下ネタbotではないが、どうしても必要なら考えなければいけない。

 幸い胸の作り方は知っている。うちのパソコンの検索履歴に「胸 盛る 方法」のキーワードが残っており興味本意でついそのサイトを見てしまったからな。

 アーガルムにヌーブラがあるかどうかで出来る事がかなり変わってくるが、ブラジャーだけだとやや不自然な仕上がりになってしまう。まあ、俺の場合セーラー服以外を着る事はないだろうから谷間を作る必要はない。ブラジャーだけでもなんとかなるだろう。

 っていやいや、流石にやらねえよ? 女装にも慣れてきたとはいえ、下着だけは越えてはいけない一線である。

 ちなみに妹の名誉を守る為に言っておくが胸の作り方を検索したのは妹ではない。断じてない。きっとばーちゃんだな。ばーちゃん70歳過ぎても乙女だからな。


 「ククク、プハッ……」


 笑いをこらえるジークを横目に俺は聖女スマイルでアナに返す。


 「いえ、子供はこれぐらい元気があった方がいいですわ。ジャン君、私は毎朝乳清を飲んでいます。乳清を飲めば私の様にたくましくなれますよ」


 両腕を上げて力こぶを作るダブルバイセップスのポーズを取り、ジャンを左腕に掴ませてぶら下げる。


 「おーっ! すげー聖女様! 俺も乳清ってやつを飲むよ!」


 ジャンよ、喜ぶのはまだ早いぞ。


 「アナ先生もどうぞ」


 空いた右腕にアナを誘う。


 「え? その……よろしいんですか?」


 アンジェリークよりもアナの方が重そうだが今は腕の筋肉痛もないし、大丈夫だろう。

 俺が女だと思ってジャン達は舐めているのだ。胸を揉めばキャーキャー言うだけだと軽く見ているのだ。圧倒的な力量差を見せつける必要がある。


 「世界を救う双肩です。人二人ぐらいなんともありません。さ、どうぞ」


 そうだ。俺の肩にはセラヴィスの運命が乗っかっているのだ。小僧も巨乳もまとめてどんと来い。欲を言えば巨乳多目でお願いします。


 「では……、失礼します」


 恐る恐る俺の右腕にぶら下がるアナ。さあここからが本番である。


 「え、皆様、え、本日は聖女メリーゴーランドにご乗車頂き、え、誠に、え、ありがとうございます。快適な空の旅を、え、お楽しみください。え、しっかりとお掴まりくださいますよう、え、お願い致します」


 例の車掌の声真似でのアナウンスの後、二人をぶら下げたままぐるぐると回りだした。メリーゴーランドと言ったがスピードは全速力だ。聖女スピナーに改名しようか。

 耐えろ俺の三半規管! まだまだ行くぜ! 必殺! 聖女スピナァァァァァッッッ!

 気分はスーパーロボットだ。段々と目が回ってくるが気合だ。熱血だ。ひらめきだ。努力と幸運の重ね掛けだ。


 「うおー! すげー! 超たのしー!」


 「わわっ! は、速すぎますっ! 止めて! 止めてください!」


 キャッキャと喜ぶジャンに対し怖がるアナ。

 60秒後、ピタッと聖女スピナーは急ブレーキで停止しジャンとアナは振り落とされた。

 アナはたまらず膝をついて口を抑えている。

 おおう、俺も吐きそう。

 だがこれで奴等もおとなしく……なるはずがなかった。


 「聖女様! 聖女様! もう一回もう一回!」


 「ジャンばっかりズルいぞ!次は僕の番だ!」


 「私も! 私も! ねえ聖女様、いいでしょ?」


 ジャンだけでなくわらわらと群がってくる子供達。

 そりゃそうか、あんな大迫力のアトラクション何度でも乗りたいに決まっている。

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗。

 

 「皆一回ずつですよ、順番です。並んでください」


 「わーい! やったー!」

 「ありがとー聖女様!」


 ジャンだけでは不公平だからな。俺は等しく優しく慈悲深くの聖女だ。まあ一回ずつならやってやろうじゃないか。


 俺が子供達をぶん回している間、ジークはといえば窓際でアナと紅茶を飲みながら談笑をしていた。あの野郎楽しやがって。俺だって巨乳と向かい合いたい。


 ―***―


 ハァ、ハァ、ハァ……。

 結局一回ずつで終わるはずがなく何回もぶん回す羽目になった。さすがに限界だ。椅子に腰を下ろししばし休ませてもらう。


 「すごかったな、聖女メリーゴーランド! テュポーンの絵本みたいだった!」


 「うん! テュポーンの絵本の竜巻みたいだった!」


 うん? 何? テュポーンの竜巻?


 「テュポーン、とは何ですか?絵本?」


 「テュポーンはね、まぼろしのまじゅーなんだよ!」


 「幻獣な。ほら、この絵本だよ聖女様」


 ジャンが絵本を持ってきてくれた。

 表紙には2本首の赤色の蛇が描かれている。

 持ってきてくれたのはいいが俺はアーガルムの文字が読めない。

 会話は出来る。何故かわからないが話してくる事はわかるし、俺の日本語もこっちの人達にはちゃんと伝わっているのだ。

 しかし文字は読めない。勉強はしているのだが、会話は通じてしまうので文字の勉強は困難を極める。

 想像してほしい。例えば sky と書いてある英語の読みを訪ねると日本語で そら と教えられるのだ。どの文字がどの音に対応しているのかがまるでわからないのである。

 なので文字列で覚えるしかない。幸いアーガルムの文は英語の様に単語と単語の間にスペースがある。もう iceは氷! niceは素敵! という感じで覚えていくしかないのだ。

 

 「ごめんなさい、私はまだアーガルムの文字が読めません」


 「ああ、そっか。聖女様は異世界から来たんだっけ。俺が読んでやるよ。えーと、赤き……」


 「あ、待ってください。メモを取るので」


 幻獣、と言えば超級魔法と関係があるとクロームが言っていた。何かのヒントになるかもしれない、一応メモしておこう。

 紙の束をまとめたものと鉛筆もどきをジークに預けた鞄から取り出し、準備はオーケーである。


 「じゃあ読むよ、えーっと……」


 赤き双頭の蛇

 双頭の蛇はとぐろを巻いて

 高く高く舞い上がる

 全てのものを舞い上げて

 深く深く切り刻む

 肉裂き骨割り血を散らし

 赤き血潮の渦とならんや

 その名はテュポーン


 ふむふむ。絵本、というより伝承や言い伝えだな。

 絵本の挿し絵はかなり怖い。赤い体の蛇は今にも人を襲い出しそうだ。元々はいたずらをした子にお仕置きとして読ませるものらしい。


 「聖女様聖女様! もう休憩したでしょ? もっともっと!」


 ようやく息が整ってきたところで再び聖女スピナーをせがむ子供達。

 俺はいたずらをしてないのだが……、これは何のお仕置きなんだろうな。

  



 フジサワレン心の会議 議員リスト


 絶対懐古主義氏

 17年間彼女いない君

 社畜人@18連勤さん

 P.N.来夢☆みんと(♀14)

 優しすぎる親友

 厳しすぎる妹

 ショタ

 下ネタbot

 聖女様 ←new!


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