Cパート
人工の光が届かない入り組んだ路地裏の中、呻く声と切り裂く音は人々の営みの音に消えていく。音の発生元の場所に佇む人影と周囲に蠢く影数個。薄い月明かりで見える鎧からは溢れた銀糸の髪が鈍く反射している。
「………………」
口から溢れた言葉は本人以外に聞こえず、周りの影──叫ばないよう斬られた喉から流れる血から判断するに事切れる寸前のようで、先ほどの呟きも例え聞き取れたとしても無意味だろう。手に握られた縄のような物の先にきつく結ばれた剣の先。それは倒れた人間に食い込み、血に濡れながらも淡く輝く光は穢れを知らないとばかりに白い。
「……の淵に立ってもお前はまだ誠実であれと言うのか」
苛立ちながら縄を力任せに引っ張る。刃に乱雑に結ばれた縄は外れることもなく刃を引き、ちぎれる事なく肉から刀身を引き抜いた。引き戻された刃は縄に巻かれそのまま手で掴み、その影は壁を蹴り上へと姿を闇夜に同化させる。
その数瞬後、多くの足音と共に路地裏が騒がしくなる。これを察知したがために影は姿を眩ませたようだ。
「こちら第五班。目標ロスト。及び第六班十名……全滅を確認」
『わかった。全班員に次ぐ支部に退却し、作戦を練り直す!』
「了解!」
通信機から聞こえた声に従いその場にいた全員が足早に去っていく。何人かは事切れた人々に視線を残す者もいるが直ぐに切りあとにしていく。その瞳には彼らを殺した犯人を倒す意思を込めて。