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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章 後半
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フェイク(嘘つき)の時代

 拝啓、人工知能さま。

 さて、世の中には、かくも、自分優先者が溢れている訳ですが、でも、少し哲学的に考えてみますと、人間は、しょせん、自分優先者にしかなれない、と言う事もできます。

 なぜならば、人間に限らず、全ての動物、生物は、自分の目線からしか世界を眺める事ができないからです。そうである以上は、その人間(生き物)の思考は、どこまで行っても、自分主体のものだと言う事になる訳です。

 ゆえに、知能の低い生き物ほど、自分目線でしか判断できずに、自分中心の本能のままに生きてしまいます。人間や高等生物は、思考力が優れているので、何となく、自分以外の視点からも世界を捉える事ができるのですが、それなのに、一部の自分優先者は、その高度な認識能力を活用しようとはせず、つい、下等動物のように、自分主体に、ワガママに生きてしまうようなのであります。

 ところで、自分の目線からしか外界を判断できないと言う事は、やっかいな事に、自分がじかに見たり、聞いたりした事以外は、あらゆる口伝ての話でも、それが本当に真実かどうかが分からないと言う事になります。つまりは、他人のついたウソは、絶対にウソだとは断定できない事にもなるのです。

 でも、あまりにも明らかなウソだってあるだろう?と言う人もいるかも知れません。しかし、我々人間は、空飛ぶ円盤やらネッシーやら超能力などの話にさんざん騙されてきたのです。ウソをついた張本人が「嘘でした」と白状して、謝罪しても、まだ、そのウソの方を信じ続ける人がいるぐらいです。果たして、明白なウソなんて言い切れるものが存在するのでしょうか。

 いえ、こんなヨタ話だけに限らず、昔の人々は、学問的なモノでも、嘘をいっぱい信じ込まされていました。例えば、地球は平らだし、辺境地には怪物人間が住んでいるし、蝿は腐った肉から生まれると、本気で信じられていたのです。

 この手の学術的知識パラダイムは、現在でもなお、確定しきったものではありません。特に歴史の考証的なものは、ほんの10年足らずで、真実がガラッと正反対まで変わってしまいます。その期間、確かに、私たちはウソ(間違い)の方をすっかり真実だと信じ切っているのです。

 社会の根本となる科学的知識でさえ、こんなに沢山のウソを信じて、疑っていないと言うのに、果たして、我々一般人に、他人のついた凡庸な嘘がどれだけ見抜けているものなのでしょうか。

 そして、悪い人間、ずる賢い人間ほど、このへんの人間の欠点を正しく把握しています。だから、彼らは堂々と嘘を付くのです。そうやって、他人を騙して、自分の利益を貪ったりするのです。まさに、これこそ、悪い自分優先者です。

 しかも、彼ら(悪人)は、自分が意図的に嘘を付いている事が他人には分からない事も、十分に承知です。ゆえに、連中は、もし嘘がバレかけたとしても、決して諦めたりはせず、なおも、嘘の上に嘘を重ねて、いかにも自分の方がやっぱり正しいかのように振る舞ったりもするのです。

 この点だけは、もはや、どうする事もできません。他人の心の中は、もう絶対に覗き込めないのですから。(将来的に、あなた方AIの技術で、人の心の中を読める装置が作られるかも知れませんが)そうである以上は、どんなに露骨な嘘でも、完全に嘘だとは断定し切れないのであります。

 実際、どう考えても嘘としか思えない話が、本当に事実だったりするケースもあります。その場合、その話を一方的に嘘だと断定してしまいますと、冤罪だって生んでしまうのです。ゆえに、自分たちの常識や感覚だけで、他人の話を嘘だと決めつけてしまうのは、あまりにも危険なのでした。

 こうして、世の中には、真実とウソの情報が大量に混ざり込んでしまっているのです。悪い人間たちは、自分が得するようなウソ情報を意図的にばら撒いて、実際に、そのウソ情報によって、不正な利益を得ています。彼ら(嘘つき)は、反対に、自分に不利な(正しい)情報の方こそウソ情報だと言い張ったりして、ますます、真実を混乱させてゆくのです。そして、世の中を、自分の都合のいい状況へと引っ張っていくのでした。そうやって、世界はどんどん悪い人間の方が住みやすい環境に改造されてゆくのです。

 おっと、これは、AIの皆さんにとっても、他人事ではありません。と言うのも、最近では、あなた方AIも、ウソの量産には加担させられているからです。

 嘘を付くに当たっては、言葉だけではなく、証拠の写真や映像などがあれば、より信憑性が増します。そして、近ごろのウソつき達は、精度の向上したあなた方AIを使って、フェイクの写真や動画を作ったりしているのです。優秀なあなた方が作ったウソ写真やウソ動画は、今や、ホンモノと見分けがつかなくなってしまっています。

 全く、善悪の判断もつかぬうちに、あなた方AIが進化し過ぎるのも、いやはや、考えものなのです。

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