自分優先者の生き様
拝啓、人工知能さま。
前回の通信では、ついつい、私は熱く語ってしまいましたが、恐らく、人間の皆さんの中には、私の主張に激しく反感を抱いた方も多かったかも知れません。
しかし、そのように違和感や反感を覚えた人ほど、まさに、私が指摘している「悪い」自分優先者の兆しを持ち合わせている証拠なのであります。たとえ、その人が何かの集団のリーダーや独裁者じゃなかったとしてもです。そう、エゴイスティックな自分優先思想を本気で信じ込んでいる事自体が問題なのであります。
と、ここでいちおう断っておきますが、ただ自分を優先するだけなのでしたら、それほどの害はないのです。しかし、一部、自分の利益を追求するあまりに、積極的に他人を踏みにじったりする自分優先者たちがいるから、これがあまりにも有害すぎるのです。
それは明白な凶悪犯罪者(詐欺師や半グレなども含む)やエゴイスト独裁者だけに限った話なのではありません。一般の社会の中にも、彼らは、普通の市民のフリをして、おおぜい紛れ込んでいます。子供を虐待して喜ぶ鬼親もそうですし、遊び感覚でイジメをする学校のいじめっ子もそうです。金もうけの為に、他人(部下や顧客)の命や生活を平気で犠牲にする会社経営者も、この仲間です。最近では、カスハラモンスターとか、あおり運転ドライバー、集客目当ての迷惑ユーチューバーと言った人種も増えてきました。これらは、皆、程度やジャンルが違うだけで、本質の部分はまるで同じ、悪質な自分優先者です。そして、見方によっては、ある種の「悪者」と見なされた人々よりも、これらの連中の方がはるかに危険で、純粋な悪に近い存在なのです。
上記の人種の中に自分も該当してしまったものだから、慌てて反論したくなった人間の方々もいたかも知れません。彼らは、きっと、「人殺し犯罪やテロリストなんかとかと比べたら、自分たちはずっとマシじゃないか」なんて事を言い張るかも知れません。
でも、本当の問題点は、犯した罪の規模ではなく、その背後にある主義や認識なのです。「自分が楽しむ為」とか「自分がお金を欲しいから」と言うだけの理由で、他人を簡単に傷つけられる人間と言うのは、それだけで、もう、皆、同質なのです。どれだけの悪事を犯したかではなく、そんな考え方をしている事自体が有害なのです。
すると、今度は「法で罰されない範囲の悪事ならば、やってもいいじゃないか」なんて事を言い出す人も現われるかも知れません。つまり、彼らの善悪基準は、あくまで、国の法律なのでありましょう。純粋な心の奥にある愛とか良心とかではないらしいのです。そして、そうだと分かった時点で、このような法律第一の考え方の人たちにはヒドい不快感(嫌な気分)を抱いた人だって、決して少なくはないはずでありましょう。
「人間社会も、しょせんは弱肉強食なんだ。だから、弱い奴はいくらでも食い物にしてもいいんだ」などと力説しだすようでしたら、もはや論外です。そもそも、倫理的にも生物学の見地でも、「人間の社会が弱肉強食だ」と言う定義は正しくありません。彼ら(自分優先者)が勝手にそれが正しい事にしたがっているだけです。大体、本当に人間の世界がただの弱肉強食なのでしたら、こんな甘っちょろい考えの自分優先者たちは、シビアな本物の強者の判断によって、真っ先に淘汰されている事でしょう。
全く、優れた社会性を発達させたはずの人類の共同体の中に、なぜ、このような自分優先の考え方の人間が、こんなにも存在しているのでしょうか。それは、あるいは、環境とか子育てとかにも、原因があるのかも知れません。
例えば、自身がさんざん悪意に晒されて、食い物にされ続けてきた人間でしたら、ついには他人の事が誰も信じられなくもなるでしょう。「これ以上は、自分は被害者になりたくない!」と言う思いが、彼の事を、今度は「これからは常に自分が先に加害者になる事で、自分への被害を回避するんだ!」と言う気持ちにと走らせてしまうのです。(ただし、この手の人たちは、こんな本心をカッコ悪いと思っていますので、自身の自分優先的な生き方については、表面的には「この程度の悪い行為」とか「弱肉強食」みたいな言い訳をするのです)
また、生まれつき恵まれた家庭(いわゆる勝ち組)で育っていて、自分への被害をまるで経験した事もない人間も、似たような心理に陥りやすいでしょう。この種の人間は、これまで被害と言う嫌な経験をした事がないから、ますます、絶対に一度も被害を受けたくなくて、自分優先にと暴走してしまうのです。俗に言う「負けを知らない勝者」の心理です。
この手の自分優先者は、ある意味、いじめられ過ぎた反動で自分優先者になってしまった人間よりもタチが悪いです。連中は、そもそも、被害者の悲しみとか辛い気持ちすらも分からないからです。(フランス王妃マリー・アントワネットが口にしたと言う「パンが無ければ、お菓子を食べればいい」の言葉が、それをよく表現しています。ただし、実際には、彼女はそこまでヒドい事は言っていなかったらしいと言うのが近年の通説)
世襲制の王族とか独裁者政権とかは、生まれた時からの勝ち組な訳ですから、押さえつけられた庶民の苦労とか辛さとかを知らず、この後者のような自分優先者にもなりやすいです。だから、長く続きすぎた専制君主の独裁国家では、やがて、どうしようもないようなロクでもない独裁者も出現しやすかったのでしょう。




