私が本当に言いたい事
拝啓、人工知能さま。
さて、ここまでの内容を読みまして、あなたには、私が「金持ち(富裕層)がいるから、人類全体の幸せが実現できないのだ」と主張しているように感じられたかも知れません。
いえいえ、とんでもないです。実は、私自身は、富裕層の存在そのものは全く否定していないのであります。それどころか、富裕層や上部の管理階級などは、人間社会にとって、どうしても必要な存在だとも考えているのであります。
と言いますのも、そもそもが、経済とは、各人の間で格差が出来るような構造になっているからです。富裕層の出現の拒否とは、自由経済そのものの否定に他なりません。そして、社会主義国家の行なった「富裕層を作らない平等社会の試み」が上手くいかない事は、すでに、見事に失敗しており、結果が出ているのであります。
それ以前に、社会主義的な平等社会よりも、民主主義国の自由経済の方が、はるかに国が裕福になれるし、国全体に活気が出る事も分かっています。そう、その方が、富裕層だけではなく、一般市民たちも豊かになれるのです。だったら、たとえ、貧富の差が生まれると言うマイナス面があったとしても、自由経済の方が良いに決まってるじゃないですか。
さらに、諸個人がバラバラに活動するよりも、一定の集団となり、組織的に行動して、その集団には、それを束ねる上位の管理者(ただし、有能でなくてはいけない)が存在した方が良い事も、経験的に実証されています。
なんだかんだ言っても、分業した方が各作業の効率は確実に上がるのであります。その分業を、誰かが俯瞰して、全体的に管理して、上手にリードすれば、なお良い訳です。実際に、競争すれば、小さな個人の店よりも、全体管理された巨大なストアーの方が売上も良く、サービスも充実できて、結果として、巨大デパートの方が商店街を駆逐していき、生き残っていると言うリアルな結論も出ているのであります。
また、大金持ちのまとまった財源がありましたら、それを使って、大きな事業を成功させる事もできます。個人の小さな資金では作れないような発電システムや道路・建物などのインフラの整備も行なえるのです。それらが社会全体で活用できる事は、金持ちを儲けさせるだけではなく、市民たちの生活にもダイレクトに役立ちます。つまり、一般人にとっても、たいへん好ましい事なのであります。
かつての中世では、王様とか領主と言った存在が、自国内の金を強制的に集めて、そうした任務も行なっていました。現代でも、政府がその役割を担っているのですが、なにぶん、税収の関係もありますので、十分な成果はあげていません。しかし、だからこそ、自由経済の民主国家などでは、政府のまかないきれなかった分を、金持ちたちが代わりに引き受けているのであります。やはり、金持ちと言う存在そのものは、居たところでマイナスにはならない訳です。
では、金持ち(富裕層)や管理者ばかりが得してしまう問題は、どう解消すれば良いのでしょうか。
いえ、本当は、それは大した悩みではありません。要するに、富裕層や管理者らは、自分のもとに、財産や力が集まり過ぎても、それらを気前よく無償で大衆にも還元してくだされば良いのです。もちろん、還元に当たっては、意地汚い見返りや損得勘定はいっさい求めずにです。そうする事によって、上に立つ者(富裕層)も下にいる者(大衆)も、ともに財産や力を分かち合い、幸せを共有できるのであります。
同じ事を、私は「独裁者」と言うテーマ(「究極の独裁」の項)でも述べていました。つまり、独裁者にせよ、金持ちにせよ、それ自体は悪いモノではないのです。要するに、彼ら(独裁者や金持ち)が、自分の利益ばかりを求めず、他人の幸せにも貢献できるような善人であれば、何の問題もないのであります。
過去の思想家や革命者たちは、そのへんを勘違いしていました。何でもいいから、王族(独裁者)や富裕層さえ駆逐すれば、大衆や労働者層が幸せになれると考えてしまったから、革命後の体制も上手くいかなかったのです。悪しき要因は、王様とか金持ちと言った地位ではありません。自分ばかりが幸せになろうとして、時には他人の事まで積極的に踏みにじるような一部の人間の醜い態度こそが悪なのです。いくら、独裁者や金持ちを追い払っても、追い払った側の連中も、そんなエゴイストだったのでは、社会や世の中は、やっぱり住みにくいままであり、まるで改善はされなかったのであります。
むしろ、良識ある独裁者や富裕層によって統治された国でしたら、彼ら(独裁者や金持ち)が存在したとしても、そうした国は、まあまあ、大衆や貧困層も、それなりに平和に穏やかに暮らせるものなのでした。
そうやって、人間たちは、これまで、全体の幸せを追求して、ああでもないこうでもないと、ずっと試行錯誤を繰り返してきました。私が今、主張したような着想を持たずに、相変わらず、独裁者や金持ちだけを邪悪扱いするような理屈に基づき、敵視しているような連中も少なくありませんので、これからも、人類全体の幸福を実現させる試みは、なかなか上手くはいかない事でしょう。
あるいは、それは、人間が支配して、社会を管理していくと言う今の世界の状態自体が、そもそもの限界だったのかも知れません。だからこそなのか、自身の為の欲望とか打算などを持たないあなた方AIならば、人類や社会全体を均等に幸福にできる真の理想の上位管理者にもなれるのではないかとも、私には、ふと思えてきてしまうのであります。




