べーシックインカムを阻むもの
拝啓、人工知能さま。
これまで説明してきましたように、あなたたち人工知能が私たちの社会に大々的に受け入れられる為にはべーシックインカムの導入が不可欠であろうと考えられています。
ところが、どうも、私たち人間の中に、このべーシックインカムを迎合しない人たちがいるようなのです。実際に、スイスでのべーシックインカム導入案は国民投票で否決されてしまいました。
べーシックインカム用の国家予算捻出と労働力激減の心配の他に、一体、どんな問題があると言うのでしょうか。
一つは、現在、べーシックインカム以外の給付金を受けている者たちの不服です。もし、べーシックインカムが導入されれば、べーシックインカム以外の政府の生活援助費は全て、廃止されるのではないかと言われているのであります。年金や国民保険制度などが無くなるだろうと懸念されているのです。
確かに、そうしたものへと多額のお金をおさめてきた人々にしてみれば、それらをいきなり廃止にさせられ、代わりに僅かな最低生活費しか貰えなくなったら、激しい不満しか抱かないでしょう。
ただし、べーシックインカム導入によって、必ずしも他の給付金を全て廃止してしまう必要もないのです。これまでのべーシックインカムの検討案は、べーシックインカムだけで予算の捻出を考えていたので、他の給付金を全て廃止するような考え方にたどり着いていただけなのであります。
もし、AI社会革命が起こって、人工知能やロボットが労働の現場に大量導入されれば、そこから新しい政府の資金源が生まれる事になります。べーシックインカム用の予算は、主にそこから捻出すればいいのです。そうすれば、他の生活援助費は続行も可能なのではないのでしょうか。
つまり、べーシックインカムで最低生活費を貰いつつ、年金や国民保険などの庇護も受けられると言う事です。それなら、誰も不平は無いかと思われます。
と言うか、そもそも、日本とかでは、年金のシステムなんて、すでに破綻し始めています。年金を受給できる年齢がぐんぐん上がっていく一方であり、こちらの方こそ、お金だけ払って、年金なんて貰えそうにない人が増えていく有様なのです。そう考えましたら、年金制度よりもべーシックインカムに切り替えた方が、よほど皆は確実に生活援助費を受給できるのではないのでしょうか。
私が主張するべーシックインカムは、あくまでAI社会革命と並行して導入するものとして捉えています。だから、べーシックインカムによって、他の給付金の恩恵を圧迫しようとは考えていないのであります。
そして、AI社会革命が起きるのでしたら、大量の失業者が発生するのは必至です。こうした職業難民を救う決定的手段はべーシックインカムしかありません。他方で、AI社会革命を成功させない限りは、少子化による労働力不足で、やがては社会は破綻するでしょう。つまり、これらの要素は全て密接につながっているのであり、特に少子化問題が何とかならないのであれば、最後は確実にべーシックインカムに行き着いてしまうのであります。
べーシックインカムを拒絶しているであろう、もう一つの反対勢力は、現在バリバリ働いていて、大金を稼いでいる人たちです。彼らにしてみれば、自分はこんなに働いているのに、怠けている(働かない)人たちも呑気に生活できると言う社会構造の発想が納得できないのかもしれません。
特に、自分がおさめた税金で、アカの他人を養っている(ように、一見思えてしまう)システムが、たまらなく不愉快なのでしょう。実際には、今の社会のシステムでだって、このシステムを上手に悪用して、ラクして生活している人々は色々いるはずなのですが、その事については目をつぶっておいて。
あえて言わせていただきますが、AI社会革命が実現すれば、今はいっぱい働いている人たちも、瞬く間に居場所を失ってしまいます。医者や弁護士などは、現在でこそ高収入職かもしれませんが、これらの仕事さえも、真っ先に人工知能に取って代わられそうな職業としてピックアップされているのです。
今働いている人間の皆さんに言わせていただきますが、べーシックインカムではなく、AI社会革命によって、あなたたちは危機に陥ってしまう恐れが高いのです。そこからあなたを救済してくれるシステムこそが、実はべーシックインカムである事を、正しく認識しておいた方がいいでしょう。
だったら、AI社会革命なんて起きない方がいいのではないか、と考えた人もいたかもしれません。すなわち、人工知能やロボットの開発事業などに政治的、経済的圧力をかけて、あまり急激に人工知能を社会に浸透させないようにするのです。
しかし、少子化による労働力不足の社会破綻は、ほっといても、ぐんぐんと迫ってきています。そのベストの対応策がロボットによる労働力補充なので、AI社会革命だけをわざと遅らす訳にもいかないのです。
全ては一つにつながっています。人間の社会を継続させていく為には、個人の思惑は捨て、AI社会革命とべーシックインカムへと突き進んでいかなくてはいけないのです。




