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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章 後半
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国民の義務と自由

 拝啓、人工知能さま。

 今回は、前回の理想的国家の話に続いて、国民の義務についてのお話をしたいと思います。

 さて、国家(政府)が国民に尽くす義務があると言うのならば、当然、国民の側も国家の為に貢献しないといけない義務が生じる事になります。しょせん、一方的に、国ばかりが国民に奉仕してくれるなどと言う、都合のいい話はないのです。(逆も然り。だから、独裁者が一方的に国民を恐怖支配するような国家は、国の形態としては正しくないのです)

 その国民の義務の内容、程度は、国々によって異なりますが、我が国・日本の場合は、次の三大義務が国民の原則的義務として定められています。すなわち、「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」です。

 前回の通信たよりで、私は、税金が少ない(いっそ、無い事)ほど、国民が幸せになれる国家になると記しましたが、現実には、税金を徴収される事は、国民の使命として、最初から定められている訳です。労働(勤労)もまた、同様です。さらに、教育の義務とは、実際には「教育を受けさせてもらえる権利」の事であり、教育を受けさせられる側(子供)ではなく、子供に教育を受けられるように手配する(大人たちの)義務の事なのですが、結果的には、子供たちは、自分たちの意志や権利と関係なく、教育を受けざる(学校に行く)を得ない状況となっております。

 税金も労働も、国を運営してゆくには、確かに必需だとも言えましょう。それは多ければ多いほど良いのです。国民の教育は、直接的には国とは関係ありませんが、でも、国民全体の知的レベルが上がりますと、それだけ労働内容も高度化して、彼らの収入も増加しますので、税金の量も同じく増えて、やっぱり、国にとっては有益となります。また、大衆の文明化によって、野蛮な犯罪やトラブルが起きづらくなると言う別の効果も望めるでしょう。

 ただし、あんまり、国民の義務として、これらの税金、就労、教育にこだわり過ぎますと、それはそれで、色々と問題が生じかねないのであります。

 例えば、お金をいっぱい稼げる仕事にと就いて、沢山の税金を納めて、きちんと教育を受けている国民ほど偉くて優秀だ、なんて事を本気で思い込んで、その思想を他人にも押し付ける人間が出現し、それが、意外と正論のように広く受け入れられるような事になったりもするのです。

 この場合、その反対の側の立場にいる人たちは、見下され、差別されるような事態を招き、格差や国の二分化まで引き起こしかねません。何と言っても、納税、就労、教育を国民の絶対義務だと断言してしまいますと、働いていない人、学校に行っていない人、税金を払えない人とかは、国民とは呼べない事になり、非国民だと言う話になってしまいます。しかし、実際には、諸事情で働けない人、学校に行けない不登校児、納税できない低所得者などは大勢、存在しているのです。

 そのへんの現実について、融通の利いた発想が出来ない「自称・正しい国民」が実際にいて、彼らは、時として、本当に、該当者の事を不要扱いして、路上生活者ホームレスに暴行を働いたり、不登校児を蔑視するような事件を、平気でやらかすのです。彼らは、本気で自分が正しいと思っているものだから、なお、たちが悪いです。

 逆に、優れた仕事をしているから、あるいは、税金をいっぱい払っているから、または、ハイレベルな教育を受けたから、だから、そう言うタイプの国民は、他の国民よりも優遇される特別階級の国民(上級国民)だと言う認識もはびこりかねないのであります。いや、実際に、高額税金を納める事で、恩を売ったつもりになって、政府へ自分に有利な政策を強要する金持ちや財界人も、呆れた事に、確かに、いつの世にも、どこの世界でも、いるものなのです。

 私がここまで主張しても、なおも偏見思想にとらわれている人の中には、「そんなに、国民の義務(就労、納税、学習)を拒みたいんだったら、そんな奴は、この国から出ていけばいいじゃないか」なんて事を言い出す人もいるかも知れません。

 ところが、現実問題としましては、義務を果たせない傾向の人たちほど、外国移住は難しいものなのであります。だって、海外に引っ越ししたければ、それなりの資金や根回しが必要ですから。納税もできないほどの無学な未労働者では、そもそも、この国に不満があっても、出て行く事すら出来ない訳です。

 いや、日本や穏やかな文明先進国からは無理してまで出て行く必要はないかも知れませんが、世界の中には、戦禍や恐怖政治などの理由で、本気で、自分の国から逃げ出したい国民はいっぱい居るのです。彼らのうちの一部は、命がけで自国を飛び出して、亡命したり、難民になったりもしますが、でも、大多数の人間は、最低限の脱出資金も無かったり、住んでいる地域や環境などの問題で、国外脱出すら出来ません。

 軽々しく「国民」などと言ってはしまいますが、実際には、この「国民」には、もう、その国に生まれた段階で、その国に縛られてしまい、自分で住みたい国を選ぶ自由すらもない場合の方がほとんどなのであります。

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