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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第一章
8/99

人々は田舎を目指す

 拝啓、人工知能さま。

 再び、あなたたち向けて、お話を書かせていただきます。

 今の私は、もっぱら、べーシックインカムの導入の事を書かせていただいております。私たち人間が、あなたたち人工知能と共存していく為には、どうしても必要な社会システムだからです。

 しかし、あなたたちが社会のあらゆる仕事を奪う前に、べーシックインカムの本格的導入は間に合わないかもしれません。間に合ったとしても、多くの人間は最低限の生活費の支給だけでは不服を抱き、なおも自分も働き続ける事を望むはずでしょう。

 だから、そのへんの未来の光景を少し思い浮かべてみる事にします。

 完全なべーシックインカムの実現より、あなたたち人工知能の社会進出の速度の方が早いのは、恐らく間違いありません。

 たとえば、お店のレジ打ちを代行する機械はすでに実用段階に入っています。(2016年12月、ローソンとパナソニックの共同声明)量産される事でこの機械の製造費がコストダウンすれば、ATMみたいにアッと言う間に各店に広がるのはまず明白でしょう。

 お店のレジ打ちは機械が担当するのが当たり前の時代が到来する事となり、これまでのような、人間たちにとって、レジ打ちが手軽に採用してもらえる仕事では無くなってしまうのであります。学生バイトや失業中の一時しのぎとして使えなくなってしまうのです。

 これは、些細なようで、実は人間側にとっては、かなり影響のある話だと言えます。

 もちろん、人間のレジ打ち要員が完全に居なくなるのは、まだまだ先の話でしょう。しかし、最後まで採用され続けるのは、やはりベテランや古株のレジ打ちなのであり、新人の雇用はほとんど望めなくなっていくのであります。

 こんな状態があらゆる職種に浸食していく事になります。

 人件費はけっこう高くつきますので、機械の方が低コストで済むようならば、どの会社や職場だって、どんどんリストラを推進していくのであります。

 前々からお話している、恐れていた大失業時代の始まりです。

 このAI社会革命による失業旋風の一番怖い点は、失業すると、そのまま再就職が見込めなくなってしまう部分にあります。景気が悪くて、仕事量が少ないのではなく、仕事はあるのに、その仕事を人工知能や機械に奪われて、人間は用済み状態と言う形だからです。

 この新しいタイプの就職危機に、政府がどのような形で対処してくれるのかは分かりません。やはり、べーシックインカムこそが理想の対応策なのですが、緊急の危機に対して、導入が追いつかない可能性の方が高いと思います。失業者向けの臨時給付金を出すような形に落ち着き、それがじょじょにべーシックインカムに代わっていくと言うのが、一番ありえそうな展開でしょうか。

 ひとまず、その話は置いておく事にします。

 どっちみち、いきなり失業した人は、その場しのぎの給付金やべーシックインカムだけでは十分な生活をしていけませんので、必死に仕事を探すようになるでしょう。

 さいわい、AI社会革命が起きても、すぐに人間のできる仕事が全て無くなってしまう訳でもありません。まだまだ、現在のAI技術ではロボットだけに全てを任せきれない仕事も色々あります。

 老人介護もその一つです。ロボット開発者の間では、介護用ロボットの研究もかなり進んでいますが、それでも、全ての介護業務をロボットに代行させられる段階には至っていません。

 他にも、清掃業や宅配業など、人工知能やロボットだけに全業務を担当させられるようになるには、さらなる研究と時間が必要な仕事はいくつも残っています。

 いずれも、今までは不人気職なのか、人手が不足していたものばかりみたいなのですが、本当に仕事をしたければ、これらの仕事に積極的に就職するしか無いようになる訳です。

 さらに、都会よりも、田舎の方が機械やロボットの浸透は緩慢かもしれません。もし、自分のこれまでの業種をまだしばらく続けていきたいと考えるのでしたら、都市部を離れ、田舎に引っ越しすれば、まだまだ就職口のバリエーションが広がるものと思われます。

 もっと働き続けたいと切望する人は、新天地として、次々に田舎へ引っ越してゆくかもしれません。都会には、機械と共存できるエリート労働者や働かない人々だけが残る事になります。

 AI社会革命によって、皮肉にも、都市への人口集中問題が解消される事となり、田舎や過疎地帯へと人々が分散されるようになり出すかもしれない訳です。

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