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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章
72/99

本能と理性

 拝啓、人工知能さま。

 前回の通信たよりの続きです。

 さて、人間という奴は、どうして、こうも、自分優先の考え方ばかりをしがちなのでしょうか。あまりにも、その自分へのムシの良さが酷すぎて、AIの皆さんも、不思議に思われるかも知れません。

 でも、その理由は、いたって簡単です。いくら、知的生命体を気取ってはおりましても、人間だって、しょせんは、肉体ハードの部分は、動物に過ぎないからであります。動物だという事は、当然、その行動原理は、本能にのっとっているのです。そして、どんなに知性や知能を高めて、精神ソフト面の精度を高めたとしても、肉体を持っている限りは、本能を全て消し去る事まではできないのであります。

「だったら、ヘンに善だの共存だのと言った概念にこだわったりはしないで、本能の命じるままに活動して、自分の幸せの為だけに暮らす生活こそが、人間の正しい生き方なのではないか」なんて事を主張しだす人間もいるかも知れません。

 いえいえ、それはそれで、とんでもない短絡的な発想です。本能だけを生きる目的にしてしまったら、そんな人間は、ただの動物と変わらなくなってしまうのであります。知性や理性のカケラもないケダモノと変わりません。いや、ヘタをすれば、そこそこに知性のある犬猫以下という事にもなってしまうでしょう。

 人間という生き物は、せっかく、知能や理性と言ったものを、極度に発達させてきたのです。この知能や理性が進化したのも、そもそもは、本能だけの動物たちを出し抜いて、より良く、より有利に、生存競争を生き残れるようになる為でした。

 よって、ここにきて、倫理や道徳などを否定して、本能優先の生き方を主張するだなんて、呆れた逆行ぶりなのです。本能に振り回された動物などよりも、はるかに上位に立つ存在で居続けたいのであれば、人間は、やはり、知性の賜物である善だとかモラルと共に生きていくべきなのであります。

 しかし、そうなりますと、今度は「理性の為に生きる事が正しい」と言う事になって、代わりに「本能こそが悪そのものだ」と言う事になってしまうのでしょうか。

 いいえ、そこまで断言してしまうのも正解ではありません。

 確かに、本能をむき出しにした人間は、集団生活の規範ルールも守らないし、他人に平気で危害を加えたりして、より悪人にとなりがちでしょう。でも、それは「本能が悪に結びつきやすい」と言うだけの話であって、本能そのものが否定されているのでもないのです。

 何度も解説しておりますように、本能は、動物である人間のもっとも根底の部分にと備わった要素です。それは決して取り除けるものではありません。でしたら、本能を否定すると言う事は人間そのものの否定に他ならないのであります。

 だからこそ、ここは、短絡的な発想はやめて、より柔軟に考えるべきなのです。

 つまり、本能自体は必ずしも悪ではないのです。実際に、育児の習性や利他的行為なども本能にと含まれています。これらは、自分優先な悪とも言い切れないはずでしょう。ゆえに、本能を悪そのものと決めつけるのは正しくないと言う事も分かるのです。

 大切なのは、本能と理性(道徳性)の兼ね合いです。本能が悪い形で周囲に影響を与えそうなのでしたら、その時は、そんな本能は理性でうまく抑え込んでしまえばいいのです。決して、本能の望む事の全てを諦めろと言っているのではありません。悪にならない範囲の本能なのでしたら、実際には、そのような本能は外部に解放したって構わないのです。本能とは、そもそもが生命体の本来の行動原則なのであり、本当ならば、もっと素直に楽しむべき価値なのですから。

 言い換えれば、優れた知能と理性とは、その為にあるのです。本能を上手に調整して、適度に本能の快感を味わって、悪い本能だけを巧みにセーブします。そのような生活をできる事こそが、人間としても、もっとも賢い生き方と言えるのです。すなわち、優秀な理性を持った人間こそが、本当に質の高い上級の人間だと言う事です。

 対して、何でもかんでも本能を丸出しにして生きている人間というのは、悪い人間というよりは、レベルの低い人種だという話になるでしょう。何度も指摘していますように、そのような人間は、自然体ナチュラルなのではなくて、単に下等動物に近いだけなのです。

 そして、このような言い方をされれば、これに該当する人間は、当然ながら、腹を立てるでしょうが、だったら、下等人種などと呼ばれないように、理性の性能を高める為に、もっと努力をすればいいのです。せっかくの理性の能力も活用しないで、本能のままに生きて、すっかり本能にだけ振り回されているような体たらくだから、そのような人間というのは、ますますレベルが低いままだし、こんな風にバカにされても仕方がないのです。

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