聞け、人間よ!これがべーシックインカムだ!
拝啓、人間の皆さん。
今回は、人工知能に対してではなく、私たち人間に向けてのお話をしたいと思います。
これまで、私はべーシックインカムと言う構想を何度も繰り返し紹介してきました。皆さんも、やや惹かれる部分があったのではないのでしょうか。
そこで今回は、このべーシックインカムの事をもう少し掘り下げて解説する事にいたします。
べーシックインカム、すなわち「最初っから、全国民が最低限の生活費を保障される」と言うシステムが成立しそうにない理由といたしましては、その国民全員の生活費をどこから捻出するか、と言う問題点もさる事ながら、もう一つ、生活費が保障されたら、働かない人間が増加し、社会を運営するのに必要な労働力が不足してしまう危険性があるのではないか、と言う事も考えられるからなのでした。
結局のところ、べーシックインカムが実現できない原因としては、国民に労働を強制させないと社会そのものが破綻してしまう為、お金をエサにして国民を働かせるしかなかった、からとも推察されます。
実際のところ、これまでもべーシックインカムに近い形の国家が無かった訳でもないのです。
たとえば、社会主義なんてべーシックインカムに非常に似た思想だったとも言えるでしょう。しかし、社会主義の「皆が均等の賃金しかもらえない」という制度は、国民たちのやる気を削いでしまいました。いっぱい働いても、少し働いても、同じ額しか給料をもらえないのならば、そりゃあ誰も熱心に働いたりはしないのです。ソビエトの社会主義国家が行き詰まった末に崩壊したのは、この点も原因の一つだったと見なされています。
また、アラブの石油産出国では、国民の就業義務が5年間だけで、あとは一生、年金だけで暮らせるような国家も存在します。これなんて、非常にべーシックインカムに近いと言えるのではないのでしょうか。もちろん、そんな国家運営が可能なのは、自国に埋蔵された豊富な石油資源(国家資金)があるおかげだからであり、どこの国でもマネできるようなものではありません。また、社会運営の為の労働力も、外国からの出稼ぎや移民に頼っている側面があり、石油資源が枯渇すれば、このような社会構造もただちに破綻する将来的不安は拭えていないです。
私の住んでいる日本のような国では、元から埋蔵資源がなく「国民の労働力こそが資源」みたいな部分がありましたので、べーシックインカムなんて発想は一から思いつかなかっただけなのであります。
にもかかわらず、国民全体が労働に従事していながらも、この日本と言う国でも労働力不足は問題になり始めています。不人気職業に就職したがる人がいなかったり、少子化によって人間の労働力自体が減りつつあるからです。
国民さえ働かせていれば、社会の存続は安泰だ、と言う発想ですら、すでに崩れ始めているのであります。
実は、外国では早くもべーシックインカムの導入が本格的に検討されだしています。カナダやフィンランドでは一部の国民を対象に実験が行なわれている最中ですし、スイスではべーシックインカムの導入案が国民投票にまで持ち込まれました。(結果的には否決されましたが)
だから、日本でも、べーシックインカムははじめっから実現不可能と見なして無視されるほど、夢物語なのでもないのです。橋下徹元大阪市長などは、べーシックインカムの導入を本気で検討していました。
どっちみち、近い将来に、人工知能の社会進出によるAI社会革命の方は現実化されるだろうと考えられます。
その時、人間側の大量の失業者が発生してしまうのは必至ですし、彼らが再び仕事に戻り、これまでのような社会環境が修復される見込みもありません。
さらに、自分の利益を主張しない人工知能やロボットたちは理想の労働力であり、高い生産性と資金源を社会にもたらす事になるでしょう。その膨大な利益を独り占めしようなどと考えるタチの悪い人間さえ居なければ、どこの国家の経済だって潤せる最強の道具となるのです。
実施が難しいと思われたべーシックインカムも、AI社会革命と結びつける事で、双方の問題点を補いあえるようになりました。
もっとも、ここまで説明してみせても、「人間は働かなくちゃダメだ」と言い張る頑固な人もいる事でしょう。
しかし、付け加えて言わせていただきますと、別にべーシックインカムが導入されたからと言って、人間は働いちゃダメだと言う訳でもないのです。べーシックインカムで生活費を支給された上で、独自の意志で働いて、さらに賃金を貰っても、全然かまわないのであります。べーシックインカムで貰える金額は本当に最低限のものが設定されますので、より贅沢をしたい人でしたら、むしろ働くしかないでしょう。
つまり、労働を強制されない上で、最低限の生活が保障され、自分の労働量によって、自分の生活の豊かさを変えられるのが、べーシックインカムの本当の利点なのであります。
生活してゆく事が目的で無理やり仕事をしていかなくちゃいけない上、なおかつ、その仕事に押しつぶされて、生活そのものが圧迫されている人が多いような、現状の労働社会よりも、ずっと皆の勤労意欲が向上すると思いませんか?
しかも、ここに人工知能やロボットの労働力が加わり、人間たちがやりたがらない仕事を引き受けてくれるようになれば、少子化や不人気職の労働不足の問題もきれいに解決される訳です。
そのような夢のような社会が、本当はもう目の前まで訪れているのであります。しかし、そのへんの事情を正しく理解していない指導者たちが後手後手にまわってしまうと、最悪の過渡期が生じる事になり、大量の失業者が逆に不幸になりかねない危険性もあると言う事です。




