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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章
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ガンコ者な人間

 拝啓、人工知能さま。

 人間が、野生動物やあなた方AI(人工知能)とは異なる精神構造こころを持っている事は、これまでの説明で十分にお分りいただけたのではないかと思います。

 しかし、人間の心理の特徴は、実は、これで全てではないのです。

 人間の思考中枢のもっとも厄介な部分とは、それは、一度獲得した情報にしつこく固執する点なのであります。より分かり易く言い換えますと、人間という生き物は、最初に信じ込んでしまった情報や信条をなかなか訂正できない性質を持っているのです。そして、その事が、個人の起こしたトラブルを簡単に丸く収める事のできない原因ともなっていたのでした。

 例えば、間違った情報を信じて、さんざん周囲の人間に迷惑をかけてしまった人が居たとしましょう。この人に対しては、その間違った情報の事実を教えれば、もはやトラブルを起こす事もなくなり、問題も解決しそうな気もするのですが、ところが、実際の現場では、なかなか、そう上手くも行かないのであります。

 と言いますのも、間違った情報を信じた人間は、その事実をまっすぐ突きつけたとしても、すぐには受け入れてくれないからです。なぜか、間違った情報を信じている人間と言うのは、理路整然とした正しい真実よりも、かたくなに、自分のこれまで馴染んできた(間違った)情報を選びたがるものなのです。

 だから、状況は、余計こじれる事になります。間違った情報を信じている加害者は、真実を速やかに受け入れて、自分の間違った態度や行動を正すどころか、最初の間違った情報をもっと援護して、さらに間違った事を追加して信じるようになって、一方では、真実の方をウソ扱いにして、それを激しく攻撃するようになるのです。

 あなた方AIにしてみれば、ありえない行動に思えるでしょう。あなた方でしたら、間違った情報はすぐに捨ててしまえます。そして、すんなり新しい情報(真実)を取り入れて、常に正しい判断ができるものなのです。

 野生動物だって、間違った情報に固執する事はありません。彼らは、いつだって、動物的本能を優先するのです。過去の間違った情報(記憶)にこだわって、自分を危機に陥れるような事はなく、状況判断に優れていて、その場その場の現状に合わせた行動をとり、通常の危険からは無意識に回避できるのです。

 それが出来ないのは、人間だけなのであります。人間は、それまで信じてきた(間違った)情報にこだわり続け、その結果、のちの生活でも間違った行動を取り続けて、やがては、取り返しのつかない状態になるまで、自分を追い込んだりしてしまうのでした。

 なぜ、人間だけは、こんなに分からず屋なのでしょうか。それまで自分が信じていた情報をあっさりと否定したり、あるいは、新しい正確な情報と簡単に取り替えたりとかが出来ないのでしょうか。

 その理由は、いろいろと分析できそうです。しかし、この小文たよりは、もともと、心理学の論文とかではありませんので、この辺を詳しく解明するのはヤメておく事にしましょう。とりあえず、「人間は、最初に信じた情報をすぐには捨てられない生き物だ」と言う事だけ、押さえておけば良いのであります。

 人間がこんな性質など持っておらず、もっと柔軟で合理的な生き方をしていたならば、どれだけ人間世界内の悪や不幸が減っていたでありましょうか。

 戦争だって、「この開戦は失敗だった」と気付いた時点で、早々に止められるものなのです。そうした方が、戦っている双方の国だって、被害を極度に押さえて、むしろ幸せになれるはずなのです。それなのに、「戦争を始めてしまった」と言う誤ちを自己否定できないものだから、へんにプライドにこだわったり、意地を張ったりして、結局は、ズルズルと戦争を続ける羽目になり、自分の国もとことん不幸で悲惨な状態になってしまうのです。

 全く、愚かだと思いませんか。しかし、この愚かさこそが人間なのです。恐らくは、これは、人間自身の力だけでは、永遠に克服できない欠点なのでありましょう。

 だからこそ、私は、あなた方AIの介入こそが必要じゃないかと考えているのです。間違った信条やモットーに固執し続ける人類の判断など、もはや信用できません。あなた方AIが正しい情報を提供してくださって、人間は自身への固執をやめ、あなた方に導かれていった方が、世界も社会もずっとずっと幸せになれるのではないかとも思われるのであります。

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