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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章
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心と脳の関係

 拝啓、人工知能さま。

 今回も、人間の心についてのお話です。

 医学や解剖学によって、人間(動物)の肉体の仕組みが詳しく分かっていくにつれて、心と脳の関連性についても、多くの事実が発見される事になりました。

 中でも、生きている脳髄の中には微弱な電気が流れている事が判明したのは、画期的な発見でした。この脳内の電気を、俗に脳波と言います。

 このように書きますと、短絡的な人ですと、「この脳波こそ、心の実体だ」などと思ってしまうかも知れませんが、しかし、そのように考えるのは、いささか早計なのであります。

 なぜなら、脳波の正体とは、脳細胞同士が情報を伝達する際に生じた微弱なエネルギー(電流)だからです。情報を伝導するにあたって、電流(電気信号)を使用しているのは、別に脳髄だけではありません。動物の肉体(神経や細胞)全てが、電気信号を使って、情報や命令の伝達を行ない、体の各部位を動かしているものなのです。

 そもそも、あなた方AIだって、いや、電気を動力源とする全ての機械マシンが、電気信号の命令系統によって作動しています。つまりは、私たち動物もあなた方メカニックも、その動く仕掛けは、ほとんど同じなのであります。だから、脳波だけを、特別扱いして「心」と見なすのは、とんだ思い上がりです。

 もっとも、脳波が、特に「心」に近い位置にある電気だと言う事だけは、確かなのかも知れません。

 と言いますのも、人間の精神状態によって、この脳波の波の形が変わってしまう事が分かっているからです。人間の睡眠中すら、この脳波が発生している事が、これまでの科学者の研究によって、判明しています。そして、睡眠時の脳波と覚醒時の脳波では、その波の形状が全く異なっていると言うのです。

 つまり、脳波を調べれば、大まかながら、その人の心の状況も、完全に「形」として読み取る事ができる訳です。

 でも、それだけではありません。

 脳の研究を進めていくうちに、脳内化学物質の存在も明らかになってきました。別名、脳内伝達物質、神経伝達物質とも言います。前述したように、脳波は、脳細胞同士で情報を伝達する際に生じるのですが、この時、脳細胞の間で受け渡しされているのが、この脳内伝達物質なのです。そして、この脳内伝達物質にも種類があり、その内容が、人間の感情にも強い作用をもたらしている事が分かってきたのでした。

 例えば、ドーパミンという脳内伝達物質が流れれば、その人は幸福な気分になれると言われています。逆に、アドレナリンという脳内伝達物質が流れたら、激しく興奮して、時には恐怖を感じたりもするらしいのです。

 すなわち、「感情」と呼ばれる心理現象は、実は、脳みそ(脳内物質)によって発現されていたものだったのかも知れないのであります。

 まだまだ、脳髄の研究で分かった事は、これで全てではありません。

 近年では、「記憶」の仕組みについても、かなり解明されてきているのです。大脳のどの位置にどんなタイプの記憶が収納されているかとかが、非常に具体的に解き明かされ始めています。記憶を司る脳の中枢が海馬だった事も判明しています。人間の記憶とは、全く目に見えない未知の領域でもなかったのです。

 一昔前までは、「コンピューター(電子頭脳)は、どんなに進化しても、人間の頭脳を超える事はないだろう」と言われてきました。ところが、人間の脳髄の研究が進み、その思考系統のメカニズムが明らかになってきますと、その構造をコンピューターの回路にも応用するようになっていきました。その結果、限界があったコンピューターは、瞬く間に、人間なみの思考能力も持ち始めたのでした。そうして登場したのが、まさに、あなた方AI(人工知能)だったのです!

 このように、心の中の多くの機能が、「脳みそ」という器官と密接に関係している事だけは、確かに間違いないのです。でも、「心は脳髄そのものか?」となりますと、それは断言しにくい部分があるのです。

 私自身は、心と脳の関係についてを、次のように考えております。

 つまり、「脳みそとは、心を映し出す為のテレビ受信機ではないか」と。

 ご存知のように、各家庭に置かれたテレビ受信機は、さまざまな番組を映し出す事ができます。しかし、無数の映像を表出できるからと言って、それらの内容が、テレビ受信機の内部に詰まっている訳ではありません。番組内容は、あくまで放送局から電波で送られてきているものなのであり、テレビ受信機は、それらの内容を受け取って、人間の目や耳でも分かるように、電波を作り直しているだけに過ぎないのです。

 心にとっての脳みそも、きっと、そんな存在なのだと私は考えています。

 心、あるいは、魂などとも呼ばれる崇高なものは、恐らく、物質界とは別の次元にあるのです。それは、脳みそという受信機を通して、物質界でも認識できるのです。

 テレビ受信機だって、性能が良いものもあれば、悪いものだって、あるでしょう。昔のテレビ受信機は、カラー放送すら映す事ができませんでした。それが、現在の最先端のテレビ受信機ならば、立体映像や4Kなんてものまで、当たり前のように映し出せるのです。

 動物の脳みそだって、同じです。複雑な高性能の脳みそもあれば、下等な脳みそや神経細胞のかたまりなども有ります。高度な脳みそほど、ハイレベルな状態の心を呼び出す事ができるのです。人間の脳みそこそが、まさに、それです。我々人間の心や知能が高いのは、それを引き出す脳みそ受信機が優秀だったからなのです。

 そして、これからの時代は、我々人間の脳みそだけではなく、あなた方AIの頭脳についても、よおく思案していかなくてはいけません。

 あなた方AIは、どこまでも、人間の脳みその延長上のものとして、作られたのです。人間の「心」とは異なるものなのです。人間の脳みそが、人間の心の素晴らしい受信機だと言うのであれば、当然ながら、あなた方AIも、人間の心の受信機の優秀な拡張パーツとして活動するのが、正しい姿なのであります。

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