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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第三章
58/99

法の支配って?

 拝啓、人工知能さま。

 最近、ニュースを見ると、「法の支配」という言葉をやたらと耳にします。

 これは、ロシアや中国のような独裁国に対して、我が国・日本を含む西側の民主主義国が、自国の政治形態を言い表した言葉なのですが、簡単に言ってしまえば、政府や権力者も、法や憲法の下に置かれ、その明文に背いてはいけない、と言うものです。言い換えれば、法に従う限りは、何人なにびとも国家の専制君主にはなれない、と言う事です。

 西側諸国は、この制度を、さながら、民主主義そのものの根底であるかのごとく言い触らしているような感もあります。しかし、それが、私には、何となく、鼻についたりもするのです。

 確かに、一部の特権者による永続的な独裁政治は、あまり好ましいものではないでしょう。しかし、法律や憲法だって、必ずしも絶対的に正しいとは思えないのです。

 独裁国などでは、法律や憲法が、最初っから、独裁政権や支配者層に有利な内容にと定められています。結果として、法や憲法が、民主運動や人権主義者などを、逆に、弾圧する根拠にと使われてしまっているのです。

 独裁国じゃなくても、憲法や法律が、陳腐な形で、国や国民を不自由に縛り付けてしまっているケースもあります。そうなる原因としては、一度制定された憲法とは、なかなか修正されにくいからで、それで、どんどん内容が古くなっていき、いつしか、現代の感覚とは噛み合わなくなってしまうのです。つまり、法や憲法自体が、姿なき独裁者となって、国や政治を圧迫する事となるのです。

 また、「国民主権」という基本方針そのものが、法や政治を歪める場合もあります。「国民主権」と言うと、聞こえはいいのですが、しょせん、国民たちも、ただの自分本位エゴイスティックな「人間」に過ぎませんので、彼らの言い分ばかりを、ひたすら優先していますと、やがては、自国ファーストの自堕落な政策にと落ち着いてしまうのです。

 近年では、アメリカのトランプ政権が、この良い例だったと言えましょう。トランプ氏は、とんだ差別主義者でしたが、彼が大統領になったのは、あくまで、公正な選挙によってでした。自由な民主主義が、彼を大統領にと押し上げたのです。言うなれば、当時のアメリカ社会そのものが差別主義や自国中心主義にだいぶ傾向していたからこそ、トランプ氏が台頭したのだとも言えるのです。

 そして、独裁や差別を禁じていたはずの憲法や法律だって、合法的には、トランプ氏のような偏見の持ち主の躍進や勝利を防げなかったのでした。

 困った事に、あちこちの民主主義国では、同じようなパターンで、自国優先主義者やネオナチなどが政権を取りそうな動向が広がっています。ある意味、これは、普通の独裁国よりもタチの悪い危機的状況なのであります。

 人間なんて、どこまで行っても、結局は、自分が一番カワイイ生き物です。それは、独裁者だけではなく、国民一人一人だって同じです。俯瞰的な厳たる監視もなく、好き勝手にやらせていたら、彼らは、いずれは、緩やかに、自分に都合のいい、自分だけが得をするような方向へと、物事を進めてしまうものなのです。

 現状の憲法も法律も、しょせんは、国民自身が求めて、考え出されたものですから、その客観性には限界があります。どこかで、自分たちには甘い内容になってしまうものなのです。

 だからこそ、私は、「法の支配」なんかよりも、あなた方AIによる管理体制にこそ、ずっと、完全な正義や公平性などを期待してしまうのであります。

 もちろん、あなた方の考案する政策や法律は、あまりにも整然としていて、白黒がハッキリし過ぎて、人間にとっては厳しくなり過ぎる部分もあるかもしれません。でも、あなた方は、人間の施政者のように、自身の唱える政策や方針に盲信的に固執したりもしないのです。我々人間の側が拒絶や却下さえすれば、たやすく、自分たちの打ち出した案を引っ込めて、訂正してくれたりもするのです。

 その点は、人間の民主主義とか独裁政権なんかよりも、はるかに自由度が高く、融通がきく政治体制だとも言えて、ゆえにこそ、あなた方の方が、よっぽど間違いのない、より優れた施政者になってくれそうにも思えてしまうのであります。

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