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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第二章
45/99

個人情報は誰のために

 拝啓、人工知能さま。

 コロナ禍は、ついに、日本の首相を交代させる事態まで招いてしまいました。(2020年9月)

 前首相(安倍総理)が退陣せざるを得なくなった理由は、実際には、もっと色々あったのでしょうが、それでも、コロナが最終的なとどめを刺した事は、まず間違いないと言えるはずでしょう。

 前首相は、コロナ対策において、国民たちの十分な支持を得る事ができませんでした。コロナ被害そのものについては、他国と比べても、ぜんぜん抑え込んでいた方だったのですが、別の部分の手際の悪さで、国民の不評を買ってしまったのです。

 特に、マスクや給付金の配布が、とことん遅れてしまった事は致命的でした。マスクなど、不足していた時期には全く届かず、もう国民全員が普通に購入できるようになってから、やっと配布され出したと言う、お粗末さでした。給付金も、配給を急いでいた地域ほど貰えるのが遅くなり、渇望していた期間内にお金が手に入らなかったところの方が大多数だったかもしれません。

 でも、これって、本当のところ、全てが政府の不手際のせいばかりとも言えたのでしょうか。

 たとえば、外国では、ほとんど待たされる事もなく、コロナ対策の給付金が配られた国家も少数ではないのです。独裁国家ほど、配給はスムーズに進められていたようです。民主国家でも、ドイツなどでは、助成金の配布が開始された当日に、お金を貰えたとも聞いています。

 これらの国々と日本の間では、一体、どこに差異があったのでしょう?

 実は、日本は、これらの助成金支給が簡単に行なわれている国々と比べてみても、国民の管理システムのデジタル化が格段と遅れているのであります。

 日本は、先の大地震(2011年の東日本大震災)などで、被災者救済のための手続きがたいへん煩雑だった事を反省し、それらを簡略すべき次の一手として、マイナンバー制度というものを始めた(2016年から施行)のですが、その十分な普及が、コロナ禍までに、ぜんぜん間に合っていませんでした。

 マイナンバー制度をより活用できるようにする為のマイナンバーカードの着用は、義務や強制ではありませんでしたので、多くの日本国民が、この申請を後回しにしたり、あるいは、入手する気すら無かったものと思われます。その為、現在(2020年7月段階)でも、マイナンバーカードの所持者の人数は、人口の20パーセントにも達していないと言われています。

 結果として、マイナンバーカードは十分には機能しておらず、政府の方でも扱い慣れていないものだから、マイナンバー制度を利用した給付金配給の試みも、今回のコロナの一件では、ものの見事に失敗してしまった訳です。ただし、今度の新内閣では、デジタル庁の発足を目論んでおりますので、このへんの落度も迅速に改善していくつもりではあるのでしょう。

 にしても、マイナンバー制度による給付金配給の失敗は、必ずしも、政府ばかりが原因だったとも言えないような気がします。もっと国民が協力的になり、マイナンバーカードがしっかりと全体に行き渡っていれば、政府の方だって、より本腰で取り組めていたのではないかとも考えられるのです。

 今回のコロナの給付金で、特に手痛いミスとなった部分は、マイナンバーカードとお金の振込先が、前もって繋がっていなかった点でした。そのせいで、マイナンバーカードを役所に提示しても、すぐに換金する事ができず、そこで二度手間を引き起こして、よけい複雑な事になってしまったのです。

 だから、今、政府としては、マイナンバーカード内に収納される情報の一つとして、銀行の振込先を付け加える事も検討しているらしいのですが、その事については、激しく反対している声もあるようです。それらの意見によりますと、自分の銀行のデータまで提供してしまったら、それを政府の良いように利用されかねない、と言うのです。

 でも、果たして、本当にそうなのでしょうか。

 そもそも、給付金が敏速に配られた国々というのは、やはり、マイナンバー制度みたいなものを、すでに施行しておりまして、そこに銀行データまで組み込まれていたからこそ、日本のようなゴタゴタは起こさずに、確実にお金を配る事ができたのです。

 つまり、私が指摘したいのは、日本でのコロナ対策のうまくいってない部分と言うのは、政府の無能さのせいと言うよりも、国民の非協力さこそが、裏の原因なのではないか、という事なのであります。

 マイナンバーカードぐらい、皆、グズグズ言ってないで、さっさと作ってしまえばいいのです。それなのに、多くの国民たちは、あーだこーだと理屈をこねて、まるで、その気になりません。そもそも、マイナンバーカードは、国民の生活を効率的にして、向上させる目的のものだと言うのにです。

 ところが、一部の人などは「マイナンバー制度は、政府が国民を縛るための道具だ」などと、悪いような見方しかしないのです。そして、そんな主張を小耳に挟んだ、考えの浅い連中が単純に信じ込んでしまい、ますます、マイナンバーカードの普及を邪魔してしまう事になるのです。そうやって、自分で妨害をした事で、今後も国の給付金を手軽に受け取れなくて、結局は、自分で自分の首を絞め続ける事になるのでしょう。

 さらに、そのような奴らに限って、「マイナンバー制度を受け入れたくないのは、日本の政府が信用できないからだ」なんて、都合のいい屁理屈まで言いだすものなのです。

 大体、日本という国は、ちょっと、人権とか個人情報とかの方が過度に尊重され過ぎているきらいもあります。確かに、戦時中(太平洋戦争)は、政府の方が強大な権力を持ちすぎて、国民が一方的に苦しめられたのかもしれません。しかし、その反動だったとしても、現在は、あまりにも政府が国民の権利に気を使いすぎて、有益な政策すら、満足に施行できないでいる有様なのです。

 コロナの感染者探しにしたって、政府側が国民に遠慮しすぎている為に、なかなか、感染経路を追い切れないような状況になっています。これが、他の独裁的な権限の強い国家ならば、国民の移動記録をどんどん調べ上げていって、コロナの感染経路を探し当て、ついには、コロナの駆逐にまで成功しています。日本はそれができないのであり、にも関わらず、国民は、コロナ問題を解決できないのは、全てが政府の責任だと見なしたりしているのです。

 例えば、感染経路不明の感染者が多数、報告されていますが、これは本当に経路が分からないものばかりではありません。感染者が、個人情報プライバシーを盾にして、自身でも気付いていた感染経路を教えてくれないケースまで含まれているのです。本人は、それが当然の権利だと思っているのかもしれませんが、こうやって、感染経路を伏せておく事が、裏では、コロナの拡散にも繋がっているのです。自分の権利を優先するあまり、一方で、コロナ被害助長の原因の一部になっている事を、まるで理解していないのです。そのくせして、コロナが収束しないのは政府のせいみたいに言っている訳ですから、全く、いいご身分の人たちです。

 もちろん、政府だって、こんな国民たちに気遣ってばかりいて、ただ手をこまねいているだけなのではなく、コロナ感染経路を探し出す為のスマホ用アプリのCOCOAなんてものを開発して、国民に無料配布もしましたが、この程度の追跡システムでは、感染者を片っ端から拾いだす目的は、とうてい達成できていません。

 まず、このCOCOAそのものからして、装備する事を完全義務化まではされていないので、使用していない国民がいっぱい居るのです。全国民がCOCOAの監視下に置かれるぐらいになっていなければ、このアプリは完璧な効果を発揮しません。

 でも、それ以前に、スマホ用アプリという事からも分かるように、このシステムはスマホを持っている人しか活用できないのです。コロナにかかると重症化しやすい年長者ほど、携帯電話そのものを持ってないか、いまだにガラケーを愛用しているものであり、COCOAのネットワークの中には混ざれない訳です。

 ここで話題を変えますと、最近では、マスクをするべきかどうかでまで、個人の権利が取り沙汰されだしているようです。マスクをしている方が、確実にコロナにかかりづらい事が、医学的にも立証され始めているのですが、それでも、まだ、マスク不要説を唱えている人たちが騒いでいるのです。

 残念ながら、日本では、マスクをつける事は義務化されてはおりません。あくまで個人の意志に委ねられているのであり、政府も「お願い」しているだけなのです。ところが、マスク不要論者の連中は、その弱みに付け込んで、たくみに自分たちの主張を通したがる訳です。

 彼らは、最終的には、自分がマスクをつけたくないだけの目的で騒いでいるくせして、しきりに、マスクでアレルギーを起こす病人とか、行きすぎたマスク警察の台頭などの問題を持ち出してきて、さも、マスクそのものが悪いかのような論調で訴えてきます。だけど、基本的に、病人とか、マスク警察とかは、それぞれ別の問題として考えるべきテーマなのであり、無理やり、マスクそのものを諸悪の根源扱いする言い分の方が拡大解釈なのです。

 だって、マスクとは関係ない病人だって分け隔てなく大事に扱うべきだし、マスク警察や自粛警察以外のあらゆる差別・嫌がらせ行為(人種差別や元犯罪者差別など)だって、同じように悪質な訳でしょう?それなのに、マスク絡みの時だけ、これらの問題を得意げに取り上げたりして、そんな視野の狭い認識ながらも、いかにも自分たちが正しいかのように力説している人たちの事が、私としては、なんとも不快に感じられる次第なのです。

 マスクをする習慣がなかったばかりに、コロナで甚大な被害が出てしまった事例は、すでに諸外国で確認されています。日本だって、もし、個人の自由ばかりを優先して、誰もがマスクをしなくなったら、そうした諸外国の悲劇が日本国内でも再現されてしまう事になりかねないでしょう。たとえ、そんな事態になってしまったとしても、マスク不要運動を主導してきた身勝手な連中は、どうせ、また、個人の自由とか人権とかを盾にして、自分たちの責任は露とも認めないのであろうと考えられる訳です。

 我々人間、特に日本の国民は、今一度、個人情報とか個人の権利とかが何なのかを、あらためて考えなくてはいけない段階に来ているのかもしれません。

 なるほど、個人の自由とかプライバシーを守る事も非常に大切な話です。しかし、あまりに、そればかりを最重要視しすぎてしまうと、全体にとっては有害になる場合もあるのです。また、プライバシーを盾に使って、自分本位の卑怯な人間の方が、真っ当に生きている人間よりも、得してしまう事すらもある訳なのです。

 だからと言って、政府の権限が強くなりすぎて、中国みたいになってしまう事も、皆さんとしては恐れているのでしょう。でも、そこまで政府の絶対的な統率があるからこそ、今の中国は、あれほど大きな国で、人口も多いにも関わらず、コロナをすっかり駆逐できているのも事実なのです。

 皆が本当に嫌だと思っている部分とは、正確には、「利己的エゴイスティックな人間の政府に、自分の大事な個人情報を悪用されるかもしれない」と言う点なのでしょう。

 ゆえにこそ、私欲を持たない、あなた方AIこそが世界全体の集合体政府となり、ただ、人間たちの公平な幸福と平和だけを目的に行動して、各人の個人情報を一括管理し、良い形で活用していく社会が到来する事こそが、実は望まれるのかもしれません。

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