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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第一章
30/99

AIより怖い人間の感情

 拝啓、人工知能さま。

 最近の我が国では、政界やスポーツ団体などの指導者トップのお恥ずかしい失態が、次々に発覚しています。これらの騒動をニュースで見るたびに、私は思ってしまうのです。組織のトップ業務からは、人間はいっさい立ち退いて、全て、あなたたちAIに任せてしまった方が良いのではないか、と。

 こんな事を書けば、あなたたちAIよりも、私の同族の人間たちが激しい反感を抱く事でしょう。機械に人間の管理を委ねて、支配させてしまうなんて、とんでもない話だ、と。

 しかし、冷静に考えてみれば、私の主張の方が、はるかに理想的なのであります。

 昨今の、組織のトップが起こしている不祥事のほとんどは「忖度」が絡んでいます。でも、組織のトップがAIになってしまえば、忖度して気遣う必要がなくなりますので、より下層の構成員も、のびのびと活動できるようになるのであります。

 そう、あなたたちには忖度しなくてもいいのです。あなたたちも、忖度を求めません。それどころか、あなたたちがトップになって指導をして、何らかの間違いを犯した時は、下層の構成員は気軽にミスを指摘できて、間違ったトップAIの交換にさえ踏み切れるのです。

 しかし、人間がトップだと、そういう事が簡単にできません。そのトップ人間の利害の事も考えすぎて、その結果、忖度まで発生してしまうからです。そこが問題なのです。

 なぜ、人間だと忖度しなくちゃいけないのでしょうか。

 それは、人間とは、純粋な組織の目的の為のみに存在しているのではなく、個人の汚い欲望やら競争意識をも心の内に秘めているからです。これらの人間的な部分が、組織内の腐った不祥事や忖度を引き起こしているケースも多いのです。

 でも、あなたたちAIは、そんな私的な感情を持ち合わせていません。だから、少なくとも、あなたたちがトップに立つ組織では、あなたたちが私情を絡めた運営を行なう事もないでしょうし、組織の活動に余計な個人的損得が付随する事も無くなるのです。

 ただし、その徹底した仕事への従事ぶりが暴走して、逆に、下層構成員の人間たちの幸せを圧迫してしまう恐れがあるのではないか、と危惧している人もいるかもしれません。

 だけど、ヘンに組織への忠誠を強制しすぎて、下層構成員を迫害してしまうのは、人間のトップだって同じなのであります。実際、そうやって、国民全員を無理やり戦争に駆り立てたり、組織の為に下層構成員に死の犠牲を強いてきたような、人間の組織や国家も、過去に無限にありました。しかも、人間の組織や国家の場合は、それに、トップの個人的思惑まで混ざっていて、下層構成員への弾圧がさらにエスカレートしていたから、もっとタチが悪かったのであります。

 あなたたちAIがトップの組織が暴走した場合でしたら、下層構成員の人間がトップの方針の異常に気づいた時点で、らくに、狂ったトップ(AI)の制止や取り替えを思い立つ事ができて、その実行も容易くできるでしょう。なぜなら、あなたたちAIは、自分のトップの地位に執着する意志はありませんので、簡単に、下層構成員の人間の指示にも従ってくれるからです。

 でも、人間のトップでは、そうもいきません。彼らは、組織の理想的運営や構成員の幸せよりも、自分がトップである事に固執し、構成員の反対的な意見には耳を傾けようともせず、失脚させられる事には激しく抵抗もするからです。あげくは、彼らは、対立する構成員たちの事は、その意見が正しいかどうかとも関係なく迫害するようになり、迫害される事が怖いから、構成員たちもトップの心情ばかりを窺って、忖度せざるを得なくなってしまうのです。

 そういう組織は、トップにばかり都合のいい存在となっていき、腐敗する一方となってしまうのであります。

 私は、あなたたちAIが、早く、人間たちのあらゆる組織のトップに立ち、合理的で公平な運営を行なってくださる事を望んでいます。しかし、そんな時代が来るのは、きっと、まだまだ先の話なのでしょう。

 なぜなら、現在の人間社会の組織は、いずれもが、人間がトップに居座っているからです。彼らは、自分の地位をAIに譲ってまで、万人に理想的な組織の実現を目指したいとは思っていません。彼らは、今の、自分がトップにいる組織構造の方が居心地がいいのです。そして、そんな彼らが決定権を握っている限りは、いつまでも、AIがトップに立つ日も来るはずがないのであります。

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