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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第一章
28/99

冤罪対策は人工知能で

 拝啓、人工知能さま。

 私が、最近、心を痛めている問題の一つに、痴漢の冤罪があります。あなたたちには不思議に感じられるかもしれませんが、この日本と言う国では、痴漢と疑われてしまったら、それだけで即有罪となってしまう状況なのであります。そのため、痴漢の現行犯として捕まった容疑者が、慌てて線路の上を走って逃げ出したり、あげくのはては、逃走に失敗して事故死するような悼ましいケースまで発生しています。

 なぜ、こんな事態になってしまったのでしょうか。

 それは、犯罪確定のシステムそのものに大きな欠陥があり、容疑者は、真実として無罪を主張しても、ウソをついて罪逃れをしていると見なされてしまうのが原因みたいです。だから、捕まった時点で、容疑者はもう有罪確定でおしまいなのであり、それだったら、悪あがきでもいいから、捕まらないように逃げた方がいいと言う考えにたどりついてしまうようなのです。

 これは、痴漢だけに言える話ではありません。あらゆる犯罪捜査において、容疑者の話は事実として聞いてもらえない場合が多く、冤罪になってしまうケースが少なくないのであります。

 この困った状況を打破する案はないものでしょうか。

 そもそも、容疑者の話は全て疑いの目で見られて、事実を語っていても、ウソと疑われてしまう事に原因があるのではないかと思います。人間とはウソをつける動物だからこそ、やっかいなのです。

 そこでひらめいたのですが、容疑者に、ウソをついたらばれる状況で供述させてみたら良いのではないのでしょうか。たとえば、ウソ発見器にかかりながら供述をおこなうのです。

 とんでもない人権侵害の発想だと拒絶する人もいるかもしれません。しかし、逆に、冤罪の容疑者でしたら、自分の無実の供述がウソじゃないとはっきり分かってもらえる訳ですから、ぜひとも、実施してほしい取り調べ方法じゃないかと思うのであります。

 ウソをついて、罪逃れしたい犯人でしたら、こんな取り調べは絶対に受けたくないに違いありません。この取り調べを拒絶する時点で、その容疑者が犯人である事は濃厚で、それはそれで、公平なる正義に基づく裁きであり、自業自得と言えるのです。

 現状でも、薬物使用の疑いがある容疑者は、尿の提供を強制されたりします。ウソ発見器にかかりながらの供述と言うのは、いわば、この尿をさしだして無実を証明する方法の、心の中のチェック版だと考えていただければいい訳です。

 もっとも、何でもかんでも、ウソ発見器を使えばいいかと言うと、今度は、裁く側が暴走した場合、政府が独裁体制を敷く為に悪用する危険性があり、全面的にこの方法を採用させる訳にもいきません。

 だから、ウソ発見器にかかりながらの供述は、警察側の強要ではなく、容疑者側からの志願と言う形で行なえばいいのです。

 まさに、冤罪の容疑者だけが、進んで、ウソ発見器つきの供述を申し出るようになります。この時点で、無罪の容疑者の冤罪を防げる上、ウソ発見器を拒む真犯人まで割り出せる訳です。

 つまり、ウソ発見器にかけてもらうのは、容疑者側の権利なのです。自分の無罪を証明する為の最大の切り札となる訳であります。

 ただし、ウソ発見器にも問題が存在しています。必ずしも万能ではないと言う点です。緊張しやすい人でしたら、ウソ発見器にかかっている事自体に動揺しすぎて、ウソをついている時のような体の反応をしめしてしまうかもしれません。逆に、日頃から平常心を保つ訓練を重ねてきた犯人でしたら、ウソをついても、ウソ発見器に引っかからない可能性もあります。

 切り札であったウソ発見器だけに、ここで判断を間違えてしまえば、無罪の容疑者が完全に犯人になってしまったり、ずるがしこい犯人に無罪の太鼓判を与えてしまう恐れもあるのです。

 そこで、登場するのが、あなたたち人工知能なのであります。

 最近では、あなたたち人工知能を、会社の新人採用判断に利用したり、社員のメンタル管理に活用している会社も現れたと聞きます。あなたたちには心は無いかもしれませんが、だからこそ、冷静な状況分析を行なって、人間の心の奥まで正確に見抜く事ができるのであります。

 つまり、ウソ発見器による容疑者の供述判断も、あなたに任せてみれば、実は、人間が分析するよりも、はるかに正しい解析をしてくれる可能性がある訳です。その容疑者の従来の性格や習慣などをベースにして、ウソ発見器の結果と照らし合わせれば、ウソ発見器の見た目だけの検査結果以上に正確なウソのまじり具合をはじき出してくれるはずです。緊張しやすい冤罪の容疑者も、心のコントロールを訓練してきた真犯人も、見落とさなくなるのであります。

 かつては、ロボット(人工知能)に犯罪の取り締まりなどをやらせたら、善悪の融通がきかなくて、冷酷に人間を取り締まり過ぎる、なんて恐れられていた時代もありました。しかし、あなたたちを上手に活用すれば、時にはエコヒイキにも走りかねない人間の執行官よりも、ずっと、正しい人には優しくて、卑怯な悪にも丸め込まれない、本当に理想的な正義の管理者になってくれるかもしれないのであります。

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