噛み合わないあなたと私
拝啓、人工知能さま。
今回も、この前のお話の続きとなります。
あなたたちの開発事情に対する私の手厳しい指摘に対して、多分、実際のAI開発関係者らからは、大いに異論もある事でしょう。
きっと「君が批難する以上に、我々だって、不人気職向けのAIマシンの開発には取り組んでいる」と。「君が考えている以上に、不人気職向けのAIマシンの開発は難しいのだ」と彼らはおっしゃりたいに違いありません。
私も、彼らの言い分は理解できない訳でもないです。
AI(人工知能)にだって、得意ジャンルや得手不得手があります。人間たちに不人気の仕事は、実は、AIにやらせたくても、AIにも向かない仕事が多い、と言う事なのでしょう。
AIも、結局は、コンピューターなので、情報収集や解析、分類などの作業をまずは得意とします。そこから発展して、人間相手の接待や受付もできるでしょう。同じ作業をひたすら繰り返すだけでしたら、きっと人間をはるかに凌駕する働きぶりも見せるに違いありません。
そうした適正から、AIに何をやらせるかを考えていくと、まずは事務職やサービス・営業職、あるいは、製造業の一過程などが埋まっていくのであります。しかし、人手不足で悩む看護職とか運送業などは、なかなかAIで代用できそうにないのでした。
これらの仕事は単純作業じゃないので、まだAIでは全体的把握や管理ができないのです。なおかつ、実作業の方も多岐に渡るため、AIの動作では手に負えないのでした。人間がやるしか無いと言う事です。
ただし、発想の転換もあるかと思います。
販売・コンビニ業界も現在は人手が不足していますが、レジを担当できるAIの導入に踏み切りました。店内の仕事全てをまかなえる訳ではありませんが、レジカウンターから解放されるだけでも、人間の店員は、かなり負担が減る事になります。
だから、他の職種だって、同じ事が言えるのです。一台のAIマシンで、その職種の全ての業務をこなすのは、まだまだ不可能かもしれません。でも、業務のうちの一つだけを専門にこなせる機械でしたら、少し研究努力すれば作れそうな気もします。
運送業に関して言えば、自動運転の車やドローンによる宅配計画の話などが急速に進んでいます。それらが順調に軌道に乗れば、恐らく、運送業の人材不足の問題もかなり解消される事でしょう。
介護や看護の仕事などに関しても同じだと思うのです。
それ一台で全てをこなせる看護ロボットは、まだまだ実現不可能かもしれません。しかし、業務の一つ一つを分解して、それ一つを専門に任せきれる機械なら、少し頑張れば、次々に開発できそうな気がします。
人間の医師が見つけきれなかった病気を、AIが見事に探し当てた事例も報告されています。その為、医療現場にAIを導入して、癌の早期発見に利用する案もあちこちで採用されだしています。たったこれだけでも、医師の負担は大いに減りますし、より的確な病状判断もできるようになり、患者の為にもなる訳です。
たとえば、注射を専門に行なえる看護マシンとかは作れないものでしょうか。現在のAIの精密さでしたら、的確に人間の腕に針を刺す事も決して難しくはないような気もします。注射マシンさえあれば、採血や点滴まで任せられますので、看護士の負担もかなり減少する訳です。
単に時間的なものに限らず、精神的においてもです。何しろ、注射と言うのは、患者の体を傷つける行為ですから、看護士としても、そうとう気を張りつめる業務の一つのはずでしょう。それから解放されるのですから、気持ちもだいぶ楽になるはずだと思われる訳です。
こんな感じで、いっぺんじゃなくてもいいから、一つずつ、業務をAIの機械へと置き換えてゆけばいいのです。それが、人手不足解消の為の最初のステップとなるのです。
その為には、AIの開発サイドが、自分視線で、AIに何をやらせるかを考えてはいけません。それだと、結局、AIにやらせやすい仕事しか思いつかないからです。
現場を知り、現場の声を聞く事が必要です。現場がどのような仕事をしているのかを具体的に理解して、現場の人たちがどのような仕事に苦労していて、どの作業をAIに肩代わりしてもらいたがっているかを認識しなくてはいけません。そこから、実際に、それらの業務をAIでも出来るかどうかを分析、研究してゆくのです。
現在の優れたAI技術でしたら、ほとんどの仕事は代行できるのではないかと思います。
まずは、現場と開発者の間でのしっかりとした情報交換が大事だと言う事です。




