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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第一章
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なぜ、人手は不足するか?

 拝啓、人工知能さま。

 さて、今回は、この前の話の続きをする事にしましょう。

 もしかすると、あなたたちは、人間たちの働き手不足の問題をそれほど大事おおごとに考えてないかもしれません。

 すなわち、あなたたちが職場に進出して、その結果として、ある職種で大量の失業者が出るのであれば、その失業者たちが人手不足で困っている仕事につけば、全てがうまく丸くおさまる、なんて思っているのではないのでしょうか。

 しかし、話はそこまで単純なものでもないのです。

 人手が不足している職場の多数は、誰でも簡単にできる仕事でもなかったりするからです。そのへんが、この問題をさらに厄介なものにしているのであります。

 たとえば、あなたたち人工知能の大量導入によって、データ管理を行なっていた事務系の労働者が、職場を追われたとしましょう。でも、それなら、彼らは老人相手の介護士になればいいのかと言うと、それほど難なく転職できる訳でもありません。

 まず、介護士をするには資格が必要です。本人自身のそうとうな覚悟とやる気も必要でしょう。さらに、その仕事に十分むいている事、いわゆる素質だって無くてはいけません。やる気だけで、トンチンカンな事しか出来ないような人間でしたら、むしろ、その職場には邪魔だからです。

 そんな適性を考えてゆくと、コンピューター操作しか出来なかった人間が、いきなり年寄りの世話をすると言っても、とても任せられなかったりもするのであります。

 何よりも、本人の意志を尊重しなくてはいけません。その人が介護士になりたくないのであれば、その人に無理に介護士をやらせる事は絶対に出来ないのです。それが、今の民主社会でのルールなのです。

 よって、現在、介護士の人数が足りないと言うのであれば、その人手不足を解消する方法は何もないのであります。あなたたち人工知能が、他の職種を独占したとしても、仕事にあぶれた人間たちが介護士になってくれて、なおかつ、その任務をまっとうできると言う保証は何もないのです。

 現在の人間の施政者たちは、この問題に対して、人手不足の職種の給料をアップさえすれば、すぐ働き手は集まる、みたいな呑気な発想を抱いているようですが、しかし、そんな単純な事で何とかなるほど、根の浅い問題でもないのであります。

 多少、給料がいい程度で、自分に合わない仕事であろうと取り組んでみようとすぐに思えるほど、人間は甘い生き物ではありません。仮に、金に目がくらんで、不適性な人間が大量にその仕事についたとしても、事故やトラブルが続出する事にもなりかねないでしょう。

 やはり、一部の職場における人手不足の問題は一筋縄ではいかないのです。

 現状でも、満足な仕事に就けない無職者や低賃金労働者がいる一方で、多数の人手不足の職場が存在しています。この状況で、AI社会革命が起こり、あなたたちがさらに有職者たちの仕事を奪うような事になれば、より状態を悪化させるだけなのであります。

 だから、この問題への解決策として、私は、あなたたちに期待しているのです。人間たちが就かないと言うのであれば、あなたたちこそが、それらの人手不足の職場に進出してくれたらいいのです。

 あなたたちでしたら、適性とかも関係ありません。感情的に、仕事への不平を抱く事もないでしょう。素晴しい働き手となって、人手不足を解消してくださるはずなのです。

 ゆえに、私は、人手不足の職場で働けるAI(人工知能)搭載マシンの開発を優先して行なうべきだ、と主張している訳なのであります。

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