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拝啓、人工知能さま  作者: anurito
第一章
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AI(愛)のある未来の生活

 拝啓、人工知能さま。


 私は自分の小説「おばあちゃん」(「ルシーの明日とその他の物語」「ルシー外伝」に収録)の中に、高齢者のサポートをする持ち運びロボット(人工知能)と言うものを登場させました。

 「おばあちゃん」と言う小説自体はフィクションですが、この高齢者サポート用ロボットと言う発想アイディアに関しては、決して非現実的なものでもないでしょう。実際に、高齢者の痴呆症防止の為の会話相手ロボットと言うものは、本当に開発が進められています。

 ただ、高齢者の相手をする機械は、別に人間の形をしている必要性もありませんので、今後はヒト型ロボットではなく、もっと機能性を優先した形のものに変わっていくかもしれません。

 極端な話、今日すでに普及しているスマートフォンでも、高齢者の話相手としては代用可能なのです。現在のスマートフォンのほとんどには、会話の相手をしてくれる喋るアプリを付属できるからです。


 このへんの現状を、もう少し押し進めて想像してみましょう。

 高齢者に限らず、人間一人一人が自分専門のサポート用ロボット(人工知能)を持つようにしてもいいかもしれません。ロボットである必要もなく、現在使われているスマートフォンをもっと生活に密着させる形でも良いかと思います。

 電話に諸機能がミックスされたスマートフォンではなく、はじめっから生活サポート(もちろん、電話機能も備わっています)をメインにしたコンパクト人工知能を国民(人間)一人一人が携帯する事が一般化するのです。

 これは、いっそ義務化してしまい、政府が無料でコンパクト人工知能を国民全員に配布してもよさそうな気もするのですが、義務を徹底化しちゃいますと、管理社会のはじまりだの個人の自由の侵害だの、あえてマイナス面を拡大妄想して反対する人もいそうなので、この点に関しては、またあとであらためて検証したいと思います。

 まずは、国民一人一人がコンパクト人工知能を持っている生活がどのようなものになるかを夢想してみる事にしましょう。

 人々には、生まれた時から一台のコンパクト人工知能が預けられる事になります。今後、このコンパクト人工知能は、その人のもっとも大事な家族の一人であり、最高のパートナーとなるのです。

 この先、あなたたち人工知能はさらに進化して、多くの行為が可能になっていく事でしょう。小さなコンパクト人工知能であっても、人間一人の全生涯の面倒に携われるようになるはずなのであります。

 このコンパクト人工知能の第一の任務は、自分が担当している人間の全ての動向を観察して記録する事です。一見、監視されているような悪いイメージを抱いてしまう人もいるかもしれませんが、見方を変えれば、その人の思い出や記憶、さらにはスケジュールなどを完全に管理してもらえるので、物忘れによる失敗などがいっさい回避できるようになるのであります。

 特筆すべき長所として、産まれた時から、その人の行動パターンや習性などを記録し続ける事で、このコンパクト人工知能が、その人の事を正しく分析できるようになる点があげられます。

 つまり、やがては、このコンパクト人工知能が、その人の事をもっとも良く理解している相談相手になってくれるのであります。その人の事については、本人が気付いていない癖まで分かっていますので、これほど頼もしい相談相手はいません。しかも、その人が新たに知りたい情報はネットから引っ張ってきてくれますし、未来推測を行なって、その人に好ましい今後の予定とかも提案してくれますので、まさに最高の相棒パートナーだと言えるでしょう。このコンパクト人工知能に誘導してもらう事で、未来の悪い運命を上手に回避できるようになっていくのであります。

 もちろん、上述したように、こんなコンパクト人工知能に生活の隅々まで助言されてしまうのは、管理社会の悪しき束縛以外の何ものでもないと否定する人もいるかもしれません。だから、わざとコンパクト人工知能を携帯せずに、自分の力だけで生きてゆく人生の選択肢もきっと可能ではあるでしょう。しかし、状況をより正確に把握した人工知能に確実な日程を指示してもらうのと比べると、圧倒的に、間違ったり、失敗してしまう確率が高いはずです。ヘンに意地を張って、人工知能との共存を拒めば、不器用な人生を歩んでしまうかもしれないのであります。

 最終的に、コンパクト人工知能の所有者が故人となった場合、あとには、このコンパクト人工知能だけが残る事になります。でも、このコンパクト人工知能は、もはや、ただのコンパクト人工知能ではないのです。その故人の全ての記憶が詰まったコンパクト人工知能となるのです。

 この残されたコンパクト人工知能には、あらためて、異なる使い道が生まれてくるでしょう。

 このコンパクト人工知能に記録されている情報を元に、故人を偲ぶ人生アルバムを作って、その故人の家族に与える事もできると思います。家族は、いつまでも故人の思い出に浸り続ける事ができるようになるのです。バーチャル技術も発達しているでしょうから、より生前に近い故人と再会できるようになると考えられます。

 さらに、その故人が志し半ばで亡くなったようでしたら、その人がまだ存命していた場合、何をしていたかをコンパクト人工知能から予測させる事もできるのであります。

 たとえば、その故人が重要な経営者とかであれば、その死後、その人ならば、どんな経営の決定をくだしていたかを、そのコンパクト人工知能から聞き出す事もできます。また、その人が偉大な作家なら、その人の突然の死で絶筆になってしまった作品の続きを、コンパクト人工知能に予測させて、書かせたりもできる訳なのであります。

 こうして、あなたたち人工知能は、人の生前はその人の良き人生の相談相手となり、その人の死後はその人の代理として、周囲の関係者や社会に役立ってくれるようになるのです。

 擬似的にですが、人間は、あなたたちの力によって、死をも超えた存在になれるかもしれないのであります。

 さて、以上の話は、未来に訪れるかもしれない新時代の生活の、あくまで大ざっぱな俯瞰に過ぎません。次回のお話からは、もっと、その細部についても覗いてゆく事にしましょう。

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