九
「今日は四つ折りの紙も、話しかけてくることも、何もしてこなかったね。……わざわざ来ちゃったよ」
空に向けた視線を、カミの方へ向けてみる。
カミもまた同じように空を見上げていた。
「……だって、最低って言われて、宮川君に何て言ったら良いかわかんなかった」
「ごめんって言ったじゃん」
「……うん」
カミは口を歪めて気まずそうにしている。
ちょっと重い空気になってしまった。
「それより、これからどうするか……」
実は教室を出て行ってしまった後も、少し追いかけて話しかけてみたのだ。
しかし全部スルーされてしまった。
「スルーされっぱなしだよ」
「そんなに怒ってたの?」
「んー、喧嘩の事にっていうか、その前に、カミが直接誤りに来ないのが許せないとか言ってたよ?」
あの後女子トイレの前まで追いかけて行って、周りから変な目で見られるし、散々な思いをした。
「家も知ってるのに、とも言ってたな。知ってるの?」
「知ってるけど、会いに行ったところで見えないから意味がないんだよ」
階段で折り曲げていた膝を伸ばす。
ついでに涼しい風が、髪や頬を撫でた。
「でも、死んでるのにそうやって言うってことは、咲良って、カミが死んだこと知らないの?」
その時、カミの顔がハッとなった。
「そう………知らない……!」
「え、まじ?」
「うん、私、中学に行って二年生くらいの時に咲良と知り合いになったんだけど、その年にまた引っ越しちゃったの」
「そうなんだ……」
まずは死んでしまったことから説明しないと駄目そうだ。