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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
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 「えっと……」


 名前なんて聞かなかったから、どう言えば良いかわからないけど。


 「前に、喧嘩したまま別れちゃった子、いるかな……?」


 そう説明すると、咲良の目が少し見開いた。

 思い当たる人物がいるのだなと思っていると、咲良が突然立ち上がる。


 「……それって、美香のこと?」


 怪訝そうな顔をして、咲良が目を伏せる。

 『美香』?

 その名前に、また脳が……と言うより、記憶が反応した。

 聞いたことがある名前だけど、それにしても一体、この二人には何があったんだ?


 「美香?」


 「宮川君、名前も知らないの?」


 「え? あー……」


 「何、私の代わりに謝ってきてって言われたの? 名前も知らない人なのに」


 代わりに謝ってきてと言われたのは本当だが、今それを言って良いものか。


 「家も知ってるのに自分では謝りに来なくて、それなのに名前も知らないクラスの子に頼むとか、サイッテー」


 こんな咲良は見たことが無かった。

 無かったと言うか、最初からあまり会話をしたことが無かったのだが、印象が全然違うのに驚く。

 そう言うと、俺を押し退けて教室を出ていってしまった。


 「お前、本当にどうしたよ?」


 いつの間にか教室に入ってきていたらしい景一が、肩をポンポンと叩いてくる。

 回りの視線も、自分に集まっている様だった。


 この日は、居眠りをしなかった。

 家に帰って九時まで勉強をしていても眠気が襲ってこなくて、知らないうちに寝ている事もなかったから、自分から、昨日と同じ神社に出向く。

 今日もいるか確かでは無いけれど、神社の前に着くと、ブレーキを握る。

 いつもと同じ、キュッという音が辺りに響いた。


 「こんばんは」


 左右に建てられた社を通りすぎて、真っ正面にある、大きな社の前に行く。

 賽銭箱の前にある階段には、昨日と同じ女の子が座っていた。


 「ごめんね」


 女の子は、こっちを見ることも無く、そう言った。

 顔は、そっぽを向いている。


 「え、何が?」


 会っていきなり謝られても、状況が掴めない。


 「名前も知らない人に頼んで」


 「何だ、聞いてたんだ」


 咲良との事だろうと思い返事を返して、そっぽを向いたままのカミの隣に座った。

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