七
「ふぁ……ん……」
ふかふかとしたベッドの上で、朝を迎える。
着替えようと立ち上がって机の上を見ると、紙が置いてあった。
広げて見る。
『仲直り、宜しくお願いします』
そう書かれていた。
あぁそうだ、俺は女子の仲直りの手伝いをしなきゃいけなかったんだっけな。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
朝は返事がある。
お母さんの作る朝御飯は、いつも美味しい。
優しい声に送られながら玄関を出た。
神社の方に繋がる坂道を登って、神社へ行ったときとは反対方向の角を曲がる。
自転車で少し走れば、すぐに学校へ着いた。
「おはー」
「よぉ景一、おは」
下駄箱ですれ違った景一と挨拶をして、自分の教室へ向かう。
教室のドアを開けると真っ先に、あの長い黒髪で頭が良さそうと聞いた女の子を探した。
「ん……」
その特徴と似ている人物は、窓際の席にいた。
一番後ろの席。物語の主人公とかが、よく座るところに使われる場所だ。
説明しやすいんだろうか。ロマンチックだし。
その席に座る少女は、そのロマンチックとか、窓際の一番後ろに座る主人公とかの表現が似合うくらいに綺麗だった。
こんなに綺麗なのに、どうして俺は気づかなかったのだろうか。
「あぁの、君って、咲良……だよね?」
咲良という子なのかどうかは不確かだったが、知らないのに話しかけたのかと思われるといけないと思い、確認するように、「……だよね?」を付けた。
名前を呼ぶと、肘をついた手のひらに乗せられて窓の外を向いていた顔が、ゆっくりとこちらに向けられる。
「はい、そうです」
これもまた、綺麗な声だった。
肌も真っ白で、俺が馬鹿だったら一瞬で惚れていて、猛アプローチをしていたところだ。
いらない情報だとは思うが、俺はそんなに馬鹿じゃない。
テストも良い方だ。馬鹿をして叱られた事もない。
「あの、咲良と、仲直り……したくて」
「仲直り? 私と宮川君って、喧嘩してたっけ?」
宮川君。
こっちの名前は覚えていてくれたみたいだ。
眉間にシワを寄せて、咲良が首を横に傾ける。
「いやあの……僕じゃなくて」
「え?」
「カミが……」
「カミ?」
眉間のシワが、更に深くなった。
あぁそうか、そう言えば名前を聞いていなかった。
あの女の子は、何て言う名前なのだろうか。