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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
5/33

 『ねーねー……! 和樹くん……!』


 後ろの席から背中を突かれ、ひそひそ声が聞こえてくる。

 振り向くと、まだ幼い顔つきをした女子が座っていた。

 ここは小学校らしい。

 木製の机はどれも低く、黒板の方を向くと、優しそうな女の先生が何やら喋っていた。

 教室を一通り見回すと、後ろの女の子の方へ向き直る。 


 『なぁに?』


 『はい、これ、回して!』


 ふっくらとした小さな手で渡されたのは、小さな四つ折りの紙。

 

 『え、なぁに、これ?』


 『えへへ、今、流行ってるんだって!』

  

 紙を回すのが流行っているのか?

 と思ったが、それだけではないらしい。

 男子も女子も、皆やっている。

 

 『メッセージを書いて、みんなで読むの……!』


 『へえ、そうなんだ……。僕も、やってみようかな……』


 面白そうだと思った俺は、その紙回しに、少しだけ参加した。


 『ね、ねぇねぇ、美香ちゃん』


 そのころの俺には、好きな子が一人。

 まだ幼かったけど、告白したいとは思っていた。

 だから、その頃流行った紙回しで告白しようと、紙に書いて、その子の下駄箱に入れたんだ。


 『皆には伝えていなかったんだけど、昨日、美香ちゃんが転校しました』


 だけど、その紙を見る前に、きっと美香ちゃんは引っ越して行った。

 紙を入れた下駄箱を見ると、まだ紙が残っていたからだ。



 …………これは、いつの思い出なのだろう……?

 これは確か、小学校の……二年生くらい……?


 「ん……」


 また、寝ていた。

 気がつけば、カミの膝に頭をのせて、階段に横になっている。 

 

 「また寝たね。よく寝るよ」


 起き上がると、隣でカミが呆れた顔をしていた。

 指で目をこすると、あくびをしながら伸びをする。


 「今回は話しかけて来なかったんだね」


 「隣にいるんだし、わざわざ良いかなって」


 「そっか。……あのさ、さっき俺、夢……見たんだ」


 言うと、カミは首をコテンと横に傾ける。

 そんな姿も、どこかで見たことがあるような気がしたけれど、気のせいだろうと深くは考えなかった。


 「どんな?」


 「小学校の頃の、夢……」

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